アレニコ「可哀想」
人を殺すことから目を背けるなと言う博士は多分優しい人です
神の業のないことを説く青年の爪の形を不思議に思う
ロシア人に雪を説こうとするなんて僧侶に死ぬなと仰るようで
アリョーシャと親しみを込めて呼ぶことで親しみの外みんな隠した
幾たびも雪の深さを尋ねられ地獄へ続くと言いそびれていた
罪の味を愛してやまぬ子供でも愛してくれる大人のいる淵
犬に芸を仕込んだことをあの人には褒められたかったことと同じ
一度だけ軽蔑されてみたかった何のためにか分からないまま
何がきみを歪めたのかとあの人は腕組みをして俯いていた
「天国は血の上に立つ教会であるかもしれません」と手紙で
あの人が兄と呼び続ける屍者の曇った瞳を少し睨んだ
貴方には何か秘密の悲しみがあるのだと知って起こさなかった
神はいるし不死はあるのだと言うんでしょうあるからなのだとさえ思わずに
暴論と言ってわるければ暴論のように聴こえる貴方の懺悔
もし彼に番号で呼ばれる日が来たらその番号を間違えられたい
事実上全ての学者は泣かないと知っていたはずだけれど僕は
英雄のように残酷でいてほしい口にしないで砂糖漬けにした
階段を降りる靴音を響かせて「悲しいか」と訊く影を踏みつけ
「可哀想だから放してやりなさい」と死んだ鼠に貴方は言った
許してくれますかと言った彼の耳にかかる金髪の静かな縺れ
眠らないし労わらないしこの人は人であることを捨てないくせに
永遠に一緒だなんて信じないまたあの離別なのだと分かる
初めは鼠にそれから人に最後には弟弟子に同じことをした
僕たちの幸福の側を人類が通り過ぎることを願い続ける
屍者の帝国連作短歌 ワトフラ「白夜」アレニコ「可哀想」 merongree @merongree
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