屍者の帝国連作短歌 ワトフラ「白夜」アレニコ「可哀想」

merongree

ワトフラ「白夜」

二十一グラムの小鳥を載せている天秤の皿を揺らす微風


死鼠の曲がって垂れた尾の先が指し示したる螺旋階段


魂がないと分かって友人の手紙に切手を貼らずに送る


死ぬならば火曜日がいい遅くとも金曜の列車に間に合うように


永遠に書き続けてくれ閉じられぬ環ならばいつか終焉で逢う


忘れろとも覚えていろとも言えなくて証明しろと書き残してた


書き写す道具を手にして振ることを忘れるまいと小鳥に話す


沈黙しても互いと分かる方法を決めた遊びがさよならだった


ある日神が手を抜き取った手袋のようなる友を繕っている


墓泥棒に盗まれているきみの名のアルファベットのFと魂


友達を大切にして何が悪い毎日綺麗に磨いているのに


存在しない証明は難しい百年待ったら来るかもしれない


魂に踏まれたような靴跡を求めて雨後の屍を見る


きみの名の代わりについた番号の並んだ零を塗り潰しても


「死んだら埋めてくれるか」と君が言う愚かな夢を見たことを言う


きみがめくる全ての白紙の右下にまるで死のように続く番号


電極のぴかぴか光る点滅の永遠を約しすぐ消えること


驚いたように開いたままでいる動かぬ時計の針を宿す目


終わらない白夜のような平穏をふいにつんざく悲鳴を慕う


言ったことただそのままに繰り返すことはどうして裏切りに似る


彼は美男なりと記した指先に微かについた誰かの血膿


爆発に驚きもせぬ目の奥で砂をこぼして倒れた時計


円周率を千桁書いて飽き足りぬきみは輪廻を何だと思う


なぜ僕を置いていったという言葉をきみはそっくり手帳に写す

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