第五部 『キョウダイ』と『カゾク』

Always brother complex! Act1

 寝室に入り、倒れ込むようにしてベッドに横になった。

 たった一人、それも若い吸血鬼ハンターを相手にしただけでこの疲労感。

 これじゃあ屋敷に留まるなんて、自殺を望むのと同義なのだと、今更ながら実感する。


 けど……それでも……と、心のどこかで意地を張る俺がいた。


 だが、このままではいけないと考えている俺も、確かにいる。

 これから自分がどうするべきか……そんなことを考えながら、俺は体に毛布を巻き付けた。

 すると、思考は長く続かず……やがて、俺は目を閉じる。


 そうして視界が暗くなると、意識はすぐに途切れた……。


 この考え事を、夢の中にも持ち込めれば便利だったのだが……そういう訳にもいかない。

 肉体的疲労と精神的疲労を抱え込んだ俺の身体はそれこそ泥のように眠り、次に目が覚めた時、ちょっとした記憶障害を引き起こした。


「あ! 起きられましたか『兄様』! おはようございます!」


 毛布の上から俺に覆いかぶさり、細く若い体を押し付ける奴がいる。

 それが、昨日『眷属』にしたばかりの吸血鬼ハンターだと気付くのに、だいぶ時間が必要だった。


「お、おはよう?」


 うまく働いていない頭で、ほとんど反射的に返事をすると、彼――日下昴は嬉しそうに笑う。

 無邪気に表情を崩し、頬を緩めるその姿からは、昨日見せられた殺意など微塵も感じない。


 その様子を見て俺は、人はこんなに変わってしまうものなのか、と……自分の力が、人をこんなにも変えてしまうものなのだと改めて自覚した。

 そう、改めて、自分の能力が、いかに歪んでいるかを自覚した。

 しかし、それではまだ認識が足りなかった……。


「わざわざ、起こしに来てくれたのか?」


 そう昴に問いかけた俺は、次に花が咲いたような笑顔で幸せそうに放たれた言葉で絶句する。


「はい! 私は『兄様』の『妹』ですから!」


 自分の能力で、彼をあらゆる意味で『義妹いもうと』にしてしまった。

 この事実を、俺はセイリになんと告げればいいのだろう……。

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義妹No.X 奈名瀬 @nanase-tomoya

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