また明日

@lalamama

第1話

「また明日ね!」そう言って瘦せ細ってしまった母の手を握る。

母は精一杯笑顔を作り握り返してくる。その意外な力強さに安心を感じる。

病室を後にする時毎日、これが最後になりませんように、という祈りを込めての「また明日」だった。


母は昨年秋に体調を崩した。内科を受診し、貧血らしいと聞き安心したのもつかの間、内臓からの出血、特に胃や腸からの出血による貧血では?と疑われて不安になった。

近所の腕はいいが愛想はない胃腸科で検査したら、腸に潰瘍のようで何か分からないものがあるという。腫瘍でなく、潰瘍なんだ、と安堵していたら、大病院で精密検査が必要という。一気に不安が増した。

仕事を休めない日で、付き添いは父にまかせて大学病院へ検査にいく。

その日の夕方、母から電話がきた。

「どうもよくないみたい…潰瘍ではなくて腫瘍だって…」頭が真っ白になりながら、「腫瘍も良性もあるからね」と明るく言ってみながら不安が募る。

細胞を調べてほどなく、悪性と判明する。母曰く「大腸の癌は抗がん剤が効くらしいよ、と先生に聞いたらしい。



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