その右手が掴むものは

星成和貴

 意識が異世界から現世に戻ってくる。それと同時に右手に熱を感じた。それが全身に回ったのか、身体が熱い。

 くっ、これは、俺の右手の封印が解けそうになっているということか?もし、封印が解けてしまったら……世界が終わってしまう。そう、この力は強すぎる。この俺でさえ、制御ができないほどに。

 むしろ、封印を解き、一か八かの賭けに出るか?成功すれば……いや、ダメだ。絶対にこの封印だけは解いてはならない。失敗したときのリスクが大きすぎる。

 俺は意識をしっかりとさせるために右手を強く握った。そこには自分のものではない温もりと感触があった。何故か、その感触に心の平穏を感じ、しかし、俺の意識は漆黒の闇へと落ちていった。

 その間際、何か声が聞こえた気がした。心地いい、安心できる声が……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る