第33話 おまえらを殺す

 千晴はそのままぺたんと床に座り込み、大きく脚を開いた。

 両方の太股にべったりと塗り込まれた粘液のぬめりが、その左右に刻みつけられている二つの文字を、さらにいかがわしく彩っている。

 

「石戸さん……こんな風にするのが好きですか?」

 

 千晴がその縦型の切れ目に指を添えて……小さな入口を開く。

 中からとろりと、新たな蜜が溢れだして床を濡らした。

 

「やーん……すっごーい栞ちゃん……あたし見ててクラクラしてきたわ」

「いや……すごいね。見てられへんわ」

 と、先ほど千晴に諫められた馬蹄は言葉少なだ。

 

 石戸は床に突っ立ったまま、千晴が床の上でいかがわしく蠢くのを見ていた。

 石戸の目に千晴は、大きな一匹の軟体動物のように見えた。


 ……こいつは人間ではない。そしてあのベッドの上の二人も……人間ではない。


 こいつらはおれの生活の破壊者である。

 おれの知らないところからやってきた侵略者だ。

  

「ええっと……こういうのはどうですか? こっちが好きですか?」

 

 つぎに千晴は床に四つん這いになった。

 さっき、床の上に飛び散った精液を舐めていた時と同じポーズだ……しかしちいさな入口を開く二本の指はそのまま。

 太股にまた新たなひとすじが垂れる。

  

「好きなように、してくださっていいんですよ。千晴、悪い子だがら。石戸さんの言うことだったら何だって聞きます。めちゃくちゃに、ぼろぼろにしてください。殺しちゃってもいいんですよ。……だって……どうせ殺されるならあたし、石戸さんに殺されたいです。でも、できるだけエッチなことしてから殺して下さいね。あたしの人生は、辛いことと恐怖と緊張の連続でした。……それが奴隷の一生です。だから……最後はすっごくエッチな思いをしてから死にたいんです。ねえ、石戸さん、あたしがこれまで知らなかったくらい、思いっきり恥ずかしいことしてください。あたしが死にたくなるくらいまで、あたしを思いっきり辱めてください。………あ、ひょっとして石戸さん、あたしが上になったほうがいいですか?それとも何かで、あたしを縛ったりしますか?」

 

「おれは……」石戸は唸った。「君らを本気で……殺してしまいたい」

  

「へえ?」と栞。

「ほう?」と馬蹄。

  

「ぶっ殺しちゃる……おまえらまとめて3人。ええか、おれは銃のありかを知ってんのや。これから銃を出してくる……言うとくけどな、逃げるな。3人まとめて地獄行きや。」

  

「……へええ………そうなんや」と栞「やっぱり石戸さんも人間なんやねえ……ちゃんと自尊心があるとは」

「たいへんやなあ……人間は。自尊心なんて糞の役にも立たんもん背負うて……いやはやお気の毒」と馬蹄。「ところで地獄ってどんなとこ? ……あたしらでも行けるんやろか?地獄?」

「さあなあ……こっちの世界よりはもうちょっと面白いとこなんとちゃうか」馬蹄があの無意味な笑みを浮かべる。「神様……お慈悲を。僕らも差別せんと地獄に行かせてください」


 舐めきられている。そんなことは絶対自分には不可能だと思われている。

  

「畜生!!」

  

 叫びながら、石戸は千晴に襲いかかった。

  

「あんっ………」千晴が熱っぽい目で石戸を見上げる。「や、やっとやる気になってくださいました? ……い、いたくしてください……できるだけ痛く」

「はむっ………」

 石戸が突き出された千晴の尻に噛みつく。

「ううっ………そ、そう……」

  千晴の背中が強ばり、肩甲骨が浮き上がった。

  

 さらに二本指を立て、情け容赦なく千晴が自ら開く前の入口に指を根元までねじ込む。きつい。凄まじい締め付けがそれを邪魔したが、充分に潤んだ粘膜がその侵入を許した。

  


「あっく……んんんっ……そ、そんなに、そんなに入っちゃうんだ……」

 千晴が腰を突き出して髪を振りたくる。

「おしおきしてほしいんやろうが? おしおきされたいんやろ? ここか? ここか? ここがええんか?」

  

 何が何だかさっぱり分からないが、指が到達した奧の奧の一点をグリグリと捏ねた。

 捏ねた、などと生やさしいものではない。擦った。扱き上げた。

 突き破らんばかりにその部分を押しまくった。

  

「………い、いや………あっ………い、石戸さん、す、すごいです………そ、そこ、そこほんとにやばいです………」と千晴が喘ぎながら肩先で石戸を省みる「………そ、そんなこと、ど、……どこで覚えたんですか?………ええっ………あっ………な、なんで石戸さん……あ、あたしが気持ちいいとこ知ってるんですか………ああっ………い、いや………お、おしっこ漏れちゃう………」

「このふしだら犬が!!……あっ………あああああっっ??」


 千晴の脚の間から凄まじい量の液体が噴き出し、石戸の手と言わずズボンと言わず、辺り一面を濡らした。


「涙のように……雨のように……」


 また馬蹄がどうでもいいことを呟く。


 気が付けば千晴はぐっしょりと濡れた床の上に腹這いになり、息も絶え絶えにぐったりとうずくまっていた。


「お……おしっこ……出ちゃった……」と千晴がその液体の匂いを嗅ぐ。「ん?……おしっこじゃないかも」

「こんなにボトボトに床を濡らしよって!! どうやって掃除すんるんや!! ええ? その後どうやって掃除するっちゅーねん!!!」

  

「……すっげー……石戸さん、あたしには一度もあんなことしてくんなかったよ。」千晴が少し拗ねた声で言う「やっぱ。いい人だと思ってたけど、変態だったわけ?でロリコン?……で、ちょっとS?」

「なに?何?……嫉妬してんの?」と面白そうに馬蹄が聞く。

「けっ……あほちゃーう??」ぷい、と横を向く栞。

  

 石戸はそのまま千晴の顔を床に押しつけた。そしてグリグリと床に擦り付ける。

 

「舐めんかい!!舐めて綺麗にせんかいワレ!!!」

「あ……は………む…………」

 千晴は素直にまた床を舐めた。

 

 そうした素直な態度が石戸の怒りとも劣情ともつかぬ爆発的な感情を燃え上がらせる。


 消防車を呼んでこい!! こんな状況、部屋ごと焼き尽くしてやる!

 石戸は思った。

 あの大阪大暴動のときみたいに……そう、あの大阪大暴動。

 あの暴動のせいで大阪からは通天閣がなくなった。

 この街全体が焼け野原になった。そしてそこから焼け出されたおれは……

 

 ん? ……ちょっと待て。

 大阪大暴動って一体なんだ?


 通天閣?

 まだ窓の外にちゃんと立ってるじゃないか。

 

 いや、暴動はしょっちゅう起こる。

 しかしその被害は極めて些細なもので……通天閣がなくなる?

 そんなことは起こったためしがない。

 

 一体どうなってんだ?

 おれの頭までおかしくなってきたのか?

 

「……い、石戸さん、これでいいですか? ……もうほとんど ……きれいに舐めちゃいましたけど」

 千晴が床から顔を上げる。

 

「よっしゃ、今度はこっちや……ほら、その小さいいやらしいけつを突き出さんかい」

「あっ」


 両手で一周できそうなくらい細い千晴の腰を引き寄せる。

 千晴の尻は伸ばしたパン生地のように平べったく、身のつまったアボガドのように固かった。

 そしてシロップの仲の桃の一切れのようにぬめっていて、白い。

 その白さをじっと見ていると、まるで月の表面のような青みさえ見える。

 

「……ほうれ、けつの穴までしっかり見せてみいい」

 と千晴の尻の肉を鷲津噛んで、左右に開く。

「やんっ……と、というか……いいです、それ、恥ずかしくて」と千晴がまた肩越しに言う「……あの……舐めたり指でいじったりします?………」

「両方じゃボケ!!!」

 

 石戸は……粋な老人ならば一句詠みたくなるくらいの可愛らしい、その蕾のような部分むしゃぶりつくと、無我夢中で舌を動かした。

 

「……あっ……ふっ……ああっ……だ、だめです、石戸さん、さっきあたし、うんこに行ったから……んんんんんっ……いや、うそです、気持ちいいです」

「へっへっへ……うんこの味がするでえ……ほうれ、奧のほうまで舐めていったら……」

「い、いやっ……しませんっ……うんこの味なんかしませんっっ……」

「やかましい、次はこれやあ!!」

「ぐっ……い、石戸さん……い、痛い……てか痛くなくて気持ちいい……」

 

 根元まで指をめり込ませた。

 まさにそれは千晴のもうひとつの口のようで、石戸の指は中へ中へと吸い込まれていくようだった。

 指を曲げたり、伸ばしたり、妙な突起物がないか探したりする。

 

 千晴の背が蠢き、時折その肩甲骨が浮かび上がり、何かを堪えるような横顔が悩ましげに歪む。


 ああ、おれはいたいけな少女を犯しているんだ。

 と石戸は当たり前のことを思った。

 

 この少女も、あのベッドの上の恩知らずどもも、死んで当然だ。


 しかしそれにかこつけて、少女の肛門をこんなふうに玩具にし、そうして彼女がもがき苦しむ様を見て喜んでいるこのおれも……やはり死んで当然だ。


 やはりキッチンの戸棚から銃を取り出すべきだ。

 しかし……銃? なんでおれがそんなものを持ってるんだ?

 なんでおれは、キッチンの戸棚に銃が隠してあることを知ってるんだ?

 

「ほれほれ……もうそろそろ気持ちええんは充分味合うたやろ。今からお前をメタメタにしたるからな」

「は、はやく……はやくください……千晴……ほんとにおかしくなっちゃいそう……」

 

 改めて千晴の腰を高く持ち上げる。

 どう考えてもこの小さな部分に自分の陰茎が収まるとは思えないが………知ったことか。


 石戸は千晴の前からなおも溢れる蜜を肉棒に丹念に塗り込むと………その先端をぴたり、と押し当てた。


「い、痛くしてくださいね。や………やさしくしないでくださいね………」

 

 千晴が言った。 最初は、そのつもりだった。

 しかし、気が変わった。

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