第19話 栞と千晴の物語
「あっ……あかんて、何ぼなんでも……あっ……おい……」
大木こだまひびきの出番が終わったせいか、栞はすっかりテレビに興味を無くしたらしく……今度は石戸の股間に興味を向け始めたようだ。
「そーんなん言うて、このかっちんかっちん具合は何かな~?」
栞がくにゃりと身体を折り曲げ、石戸の股間に顔を埋める。
「……あっちょっと……ホンマ、あかんて……そんな、子どもの前で……」
「……何言うてんのん。毎晩あたしみたいないたいけな少女に、あんなことやこんなことしとるクセに。この犯罪者」
「……ああっ……って、ちょっと、ちょっと待ってって……」
ズボンのファスナーをいきなり降ろされ、慌てて千晴を横目で見る。
千晴はあいかわらず……石戸の股間で栞が繰り広げる狂態に注視していた。
目がさっきよりも大きく見開かれている。
「何を待つんよ、こんなギンギンにテンパっとんのに、……ほら、千晴ちゃん、よう見ときや。この人な、ええ人のフリしてるけど、どうしようもない淫獣なんやで」
「……あっ!! お、おい!」
素早い手つきで栞が石戸の陰茎をズボンから引っぱり出す。
慌てて手で隠そうとしたが、もう遅かった。
「………」
千晴は声も上げず、それを凝視している……まるで珍しい生き物でも見るように。
栞の指摘どおり、石戸の陰茎はズキンズキンと痛むくらいに張りつめ、火星への打ち上げの秒読み待ちでもしているかのように天井に向けて直立している。
性器を剥き出しにされてしまったことで、石戸は大変に混乱し、動揺していた。
しかし、千晴には混乱も動揺もない。
ただひたすらに、千晴の視線は脈づく石戸の陰茎に注がれている。
「あ、あかんて……」石戸は崩れ去りゆくモラルの砦の中で、たよりない理性の旗を振った。「これは……いくらなんでも……」
「なんやかんや言うて、いちだんと赤黒くなっとるで。ひょっとしてあんた、千晴ちゃんに見られてるから、いつもより興奮しとるんやないやろね。イヤやわあ……そんな人やと思わへんかった」言いながら、栞はニヤニヤと笑っている。「なー、千晴ちゃん、男なんかみんなケダモノやで。ほら、ほら」
「あっ……ちょっと……ひっ……おうっ………」
栞がゆっくりと石戸の陰茎を上下に扱き始めた。
「はら、千晴ちゃん、見ときや。こうやって擦ると、男の人は気持ちええねんで……ほら、ここんとこ。この辺りを指でクリクリすんねん……ほら、今、ピクンって震えたやろ……感じとんねんで、このおっさん」千晴が石戸の性器をオモチャにしながら解説する。「……ほらな、四の五の言うても、先っぽ滲んできたやろ。これがカウパー氏腺液? ……やったっけ? ちゅーやっちゃ。ほら、見てみ」
栞が人差し指で石戸の先走り液をすくい取り、千晴の目の前に翳す。
石戸はしばらく呆けたようにその様子を見ていたが……凝視する千晴の睫の先数センチのところで、自分の分泌した液が栞の人差し指と親指の間で糸を引くのを見て、我に返った。
「あ、あかんやろ!」
慌てて栞の手首を掴み、引っ込めようとする。
「なんで? 気持ちようないの?」
「そ、そういう問題やないやろ!!」
「……あっ、ますます濡れてきた……どや、千晴ちゃんも触ってみる?」
「あっ……あかんて!!」
「……触ってみてもいいですか?」
不意に千晴が、石戸の顔をじっと見ながら呟く。
「……あかん!! 絶対にあかん!!」
「……うるさいなあ……うるさい口は塞いでまおか」
「むっ」
栞はいきなり唇を石戸の唇に重ねると、そのまま石戸の上半身を床に押し倒した。
栞の舌が問答無用で口内に侵入してくる……当然だが、キスはカレーの味がした。
起きあがろうとする石戸の頭を、栞はさらに強く石戸の唇に噛みついて引き倒す。
その力が少し強すぎて、石戸は後頭部を床で強打した。
視線の端で……天井を向く自分の性器の先端に手を伸ばす千晴の姿が見える。
まるで生まれて初めてカブトムシに触れる子どものような手つきだった。
無論、2045年現在、この地球上にはカブトムシは存在しないが。
「はっ……」
千晴の冷たい指先が触れ、石戸は思わず腰を跳ね挙げた。
「…………」
千晴は無言だった。
暫く恐る恐るという感じで……石戸の亀頭部分をまるで小動物の頭でも触るように撫でていた千晴だったが、やがて意を決したように、陰茎部分をぎゅっと握る。
「むうっ………」
「優しゅうしたってな。優しゅう……」
栞が唇を離して千晴を省みる。
「ごめんなさい……痛かったですか?」
千晴が無表情を崩さずに言う。
「……っていうか……むぐっ……」
また栞が吸い付いてきた……とにかく石戸に発言権はないらしい。
千晴がゆっくりと、実に機械的に……陰茎を扱き始める。
先ほど栞がやってみせた手つきを真似ているようだ。
その動きに栞のような蠱惑的で動物的な官能はなかったが……その一本調子なひたむきさが、石戸をますます高ぶらせた。
夢中で石戸の唇をねぶり倒す栞の様子も……何かいつもとは違うような気がした。
栞が明らかにいつもより亢奮していることは石戸にも判った。
唇への甘噛みは少し痛いくらいで、下手をすると血が出そうな勢いだ。
舌の動きもまるで石戸の歯にこびり付いた歯垢を全て舐めとろうとしているかのように念入り過ぎた。栞の唇からはいつもよりも沢山唾液があふれ出て、その一筋が石戸の耳の中にまで垂れてきた。
さらに栞は石戸のシャツの胸元に手を突っ込み、指先で乳首の刺激を始めた。
そんなことをされたのは生まれて初めてだったので、石戸は面食らいながらも、激しい感覚に背筋を震わせた。
ああもう一体……何がどうなってんだ?
「千晴ちゃん、その先っちょ、舐めてみ」
栞が上擦った声で言った。
「あっ……あかんって!! それはどう考えても……むぐっ」
「…………」
しばらく千晴は無言で石戸の陰茎を握っていたが……やがて、ゴクリと唾を飲み込んで、先端を見つめながら顔をゆっくりと先端に近づけていった。
「う、うぐ………」
やがて……栞の身体に隠れて、千晴の顔は見えなくなったが……直後に綿菓子のように柔らかいものがそっと石戸の亀頭に触れ、そのまま包み込んだ。
まるでぬるま湯にでも浸したかのような温かさだ。
その中に泳ぐ両性生物の幼体が尾鰭をそよがせるように、千晴の舌がゆっくりと動き出した。
「むっ…………ぐ、ぐ、ぐ………」
石戸はあっという間に崖っぷちに追いやられ、腰をブリッジのように浮かせる。
「あ、あかんで。まだ」
そう言いながら栞が石戸の陰茎の根元をぎゅっと掴む。
「ぐぐ………」
「……そんないきなり、あたしの可愛い可愛い妹の口の中に出してもうたら困るわ」栞はうっすらと笑みを浮かべながら、さらに手に力を込めた「………なあ、千晴ちゃんはな、これからいろいろと、男の人について学ばんとあかんねん……そやから協力したって。お願い」
「……べ、勉強って」
「……あたしと千晴ちゃんの過去、その1」千晴は言った「……あたしと千晴ちゃんは、まだ小さいうちから、近江のいやらしーーーい実業家のじじいの家に売り飛ばされました。家がとってもとっても貧乏だったからです。ほんとーーーーーに、いやらしーーーい、いやらしーーーーい、いやらしーーーーいじじいでした。あたしと千晴ちゃんの他に、もう少し大人の巨乳のお姉さんと、背の高いお兄さんが居ました。お姉さんは表向きじじいの秘書でしたが、その前は地元の風俗で働いていたそうです。お兄さんは雲を突くような大男で、爺いの運転手兼ボディガードでした。しかしあたしや千晴ちゃんはもちろん、そのお兄さんもお姉さんも、表向きの目的以外でじじいに囲われていました……そうです、じじいはリョートー遣いだったのです。じじいはあたしと、巨乳のお姉さんと、大男のお兄さんを毎晩とっかえひっかえ、寝室に呼びました。あたしは3日にいっぺん、じじいの寝室に呼ばれると、夕方から明くる朝の明け方まで、たーーっぷりこーーってり、いやらしいことをされまくりました……どや。亢奮するやろ?」栞はそう言うと石戸の陰茎を必死で銜えている千晴の様子を一瞬見て……また視線を戻した。「……どういう訳かじじいは、千晴ちゃんにはいやらしいことをしませんでした。その代わり、千晴ちゃんに歌を歌わせました。じじいが経営しているクラブで、千晴ちゃんは毎晩のように歌を歌わされました。千晴ちゃんは歌手だったのです……驚いた? ……千晴ちゃんはどういう訳か、昔の歌謡曲ばかり歌わされました。あの可愛い可愛い千晴ちゃんが、奥村チヨや藤圭子なんかの歌をエッチに歌うショーは田舎の好き者たちの間で大評判になり、千晴ちゃんは秘かな人気者になりました。」
語り続ける栞の目が、不思議な色に変わっていることに石戸は気づいた。
栞の黒目の色が、ますます透き通り……深い、底なしの深淵が覗いている。
石戸は下半身に加えられるつたない刺激に喘ぎながら、その深さに戦慄した。
「……しかしある日、千晴ちゃんは病気になりました。原因はわかりませんが、突然、歌が歌えなくなってしまったのです。じじいはがっかりしましたが……それならそうと、別の方法で儲けることを考えました。そうです、千晴ちゃんに、客を取らせようとしたのです。千晴ちゃんのエッチな歌を聞いて、デレデレしていた気持ちの悪い変態どもにです……それまでじじいに散々オモチャにされても、我慢を重ねてきたあたしたち3人でしたが、ついに堪忍袋の緒が切れました。ある日、あたしたちは団結して、じじいをキャーン、と言わせると、千晴ちゃんを連れて4人でじじいの元から逃げ出しました」
「…………」
なんなんだ、この話は。
とは言っても、石戸に口を挟む余裕など無かったが。
「……それからしばらく、4人離ればなれになって過ごしました……あたしは石戸さんと過ごしてきましたが、お姉さんとお兄さん、千晴ちゃんがどうやって過ごしていたのかは判りませんでした。あたしは小さな千晴ちゃんのことが心配で心配で仕方ありませんでしたが……でも今日、あたしは偶然千晴ちゃんを街で見かけたのです。あたしの心配はばっちり当たり、千晴ちゃんはすけべえなオッサンに声を掛けているところでした。生きていくためにはやはりそれが必要だと、千晴ちゃんもようやく決心したところだったのです……それまで千晴ちゃんは、ゴミ箱を漁って暮らしていたそうです……ほんとうに、ギリギリセーフ、っちゅうかんじでした」
「………………」
本当なのだろうか? ウソなのだろうか? 石戸には見当も付かなかった。
「……あたしは千晴ちゃんをこの部屋まで引っ張ってきました。なんとか今日、千晴ちゃんは助平なおっさんとエッチな事をすることを免れましたが……二人でこれからのことを話していくうちに……結局いずれは千晴ちゃんも、そういう事をしなければ生きていくことができなくなる、という結論に達しました。何故なら千晴ちゃんは歌を歌うことしか知らないし……もう歌うことができないのですから」
突然、千晴が猛烈な勢いで舌を使い始めた。
まるで何かを振り切るように、頭と首を使って石戸の性器を責め立てる。
竜巻に飲み込まれていくような強烈な射精感が石戸に襲いかかる。
「……そうそう、千晴ちゃん。その調子。ほれ」
不意に、栞が石戸の性器の根元を抑えていた手の力を緩めた。
「はううううっっ????」
石戸は尿道口から下半身の内臓をぶちまけるような勢いで、栞の口の中に射精した。止めようと思ったが……この世界のいかなる力をもってしてもそれを食い止めることは不可能であるように思えた。
千晴がむせて、石戸の腹に精液をこぼす。
「あーあ。あんた……こんないたいけな少女の口の中に、なんちゅう事してくれたん」栞の顔に、薄い笑みが戻っていた。「あたしと千晴ちゃんの過去、その2・その3もあったけど……今日はここまで」
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