マルベリーの独白(Mulberry's Monologue)
勝った。
俺は独りごちた。
内心震えていた。しかし、ついに
彼には本当に悪いが身代わりになってもらったことに感謝せねばならない。信仰心などかけらもない俺だが、一回くらい供養はしてあげようと思う。
しかし意外な結末を迎えたものだ。
あの女が自害を謀るとは。
俺にとっては誰が真犯人だろうが構わない。生きて帰った者が勝ちだと思っている。
ただ、犯人の動機には心当たりがないわけではない。それはまっさんが何者かに殺されたときに薄々勘付いていた。だから俺は
しかし、この女は一体、あいつとどんな関係なのか。
チャット上ではこの女は、俺らと同じで排他的な意見を述べていたではないか。
しかも、自害するのなら何故、死神に
そしてそもそも『メグ』や医者の先生を同列に襲う理由が見当たらない。もしこの殺人がフェイクで、油断させる目的でまだ犠牲者が増える可能性だってある。
もしそうなら新たにカモフラージュする策を講じなければならない。俺は、ここに真犯人が誰かということよりも、他に犠牲者が出ることよりも、俺自身が生き延びることの方が大事なのだ。
人は醜い。極限のシチュエーションでは、人は赤の他人の命の行方など
でも、この事件は一人で解決できるほど単純ではない。きっと俺の知らないところで複雑な思惑が交錯し合っていると思う。俺は『タチカワ』が犯人ではないことを知っている。万が一『タチカワ』が真相に辿り着いても、それで俺の身が危なくなる可能性があればそれを阻んでやる。
そう、この事件には絶対に秘匿されなければならない事実があるのだ。俺は肉体的にも社会的にも無傷で生還しなければならないのだ。それが俺の信念である。そのためにいかなる犠牲が払われることも、真相が百八十度
俺だけが助かれば良いのだ……。俺だけが……。
そう、俺は心の中で呪文を唱えるように自分に言い聞かせていたんだ。
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マルベリー(Mulberry)
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