あとがき

 著者の「ままかり」です。


 『トナリノコ・イトコノコ』を最後までお読みいただきありがとうございます。物語は前話で終わりですが、もうすこしお付き合い願えればと思います。


 この作品は二年ほど前に書いて、ライトノベルの新人賞に投稿したのですが、一次すら通過しませんでした。その前に『不幸喰い』を書いて同様の結果に終わっていたので、


・売れ筋を狙う(ハーレムラブコメ)。

  >出版ビジネスを考える。

  >読者にわかりやすい展開。

・主たる読者たるオタクにウケる要素を入れる。

  >あからさまなオタク・キャラクターを入れる(珠姫)。

  >アニメやコスプレ等の、オタク文化的な要素を入れる。

  >妹萌え、など萌えトレンドを取り入れる。

・ヒロインの見た目、を強化する。

  >記述を子細にする(特に莉紗)

  >性的な特徴を強調する

  >キワモノ的なビジュアルのキャラクターを入れる(珠姫)


以上のような改善(おもねり)要素を入れて書いたのですが、結果としては一次通過ということすら至りませんでした。


 以前、プロフィールに書いていたように、ハーレムものたるは好みではなく、自分では良いのか悪いのか正直よく分かりません。著者の甘い目で見る限りには、まったくダメという印象ではなく、そこそこ書けていると思うのですが。


 そもそも、自分の小説なり、類似的な漫画なりの評価軸の問題があります。昔読んでいた漫画なり本なりの影響か、本を読むことはすべからく知識を得ることだと考えております。その中でも小説のようなフィクションというのは、基本的には人を描く、事象を描く、社会構造を描くことで問題を可視化するというノンフィクションやルポタージュ的なものの延長線上で、人物なり舞台なりを匿名化(もしくはSFやファンタジーにおいてはその世界観を書き換えることによりより明確に可視化)することにより(ゆえに、ご当地ものや観光資源として持ち上げるのは否定的である)、普遍性を持たせることで、人々のより近くに寄りそうことができる優位性から大きな支持を得ているものだと考えていました。


 少なくとも以前のライトノベルにおいて、権力や宗教勢力を戯画化することにより自然人の解放を描いたり、抑圧される側に主人公を置くことで全体主義の恐怖を描いたり、なかにはひたすら人間の浅ましさを活写するタイトルがあったりと、すくなくとも性やバトルといった中高生に受容されやすい要素だけではないメッセージがあったと考えます。


 しかしながら、2000年代中頃からでしょうか、「萌え」ブームにおいては、読者の動物化というか物語の消費財化というか、専ら読者に対し性的(もしくは異能バトル、オタク的同類性)な刺激を喚起するのみのタイトルが目に付くようになり、昨今では


女子校で、

それまで学園最強だった赤い髪のお姫様を、

ラッキースケベして、

決闘を申し込まれて勝ち、

学園中の美少女から注目を浴びる。


という様式醜とでもいうべきワンパターンがレーベルを問わず顕著化……すくなくともその手のタイトルがメディアミックスという形で露出しており、物語の主体がメッセージ性から快感の消費に変わってきています。もっと有り体に言えば、視野を広げ内省を迫るものから支配欲を満たす(特にロリータ、妹、メイド等の人気萌え要素はその最たるものと考えます)、すくなくともハマっていない外側から見ればドン引きといえる傾向が見て取れます。


 さらに衝撃的なことに、ライトノベルの外側にもその傾向が広がっているのは失望を禁じ得ませんでした。土下座ポルノ、というべき小説原作のドラマがヒットし、その感想として「スカッとした」という格闘ゲームのごとく単純化された構図の中で発せられる言葉が新聞に登場するなど、もう劣化という段階を超え、もっぱら快感のみを求める作り手、読み手双方の近視感に嫌悪を覚えました。


 とはいいつつも、そういった市場環境であることを意識をして、ハーレムラブコメを書きました。しかしながら矜恃として、出会いが戦争の遺構(へ行くバスの中)だったり、ラストがドキュメンタリー映画だったりするわけです。それをエンタテインメントとして昇華できなかったのは自分の力及ばぬところで申し訳ないです。


 書いた後に通読して考えるのは、ハーレムラブコメという形式を整えつつも、これは莉紗の物語であって、男の萌え系読者を満足させるものではなかった、と反省しております。極めて真面目、硬直的な少女が戸惑いながら恋愛を通じて軟化していく話で、浩一は祐佳里はともかく二人の先輩は恋愛相手として認識しておらず、また祐佳里に対しても常に莉紗を優先しており、ハーレム・コンテンツとして好きな萌えキャラを選ぶという形式をなしていないませんでした。その上で、中途で莉紗が性的なアピールを行うことは恋愛下手の手探りとしても(ただ、そのことをもっと顕示的な表現にすべきでした)、莉紗が異常なまでデレデレになるのはミスでした。


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 物語構成上のミスもさることながら、文章のほうも改善すべき問題と認識していますが、なかなか、そのスタイルを変えるのは容易ではありません。


 ネット小説を含むライトノベルたるは、一つに文学の系譜として、児童文庫からヤングアダルト、そして大衆小説やミステリから純文学に至る文学の系譜の中で、子供向けから大人向けへの背伸びをする学生層を想起していました。また、もう一つに、オタク的な軸――ゲームから漫画、漫画からライトノベルというステップアップとして考え、総じて平易である必要はないと考えました。


 しかしながら調べてみると、漫画のコマ割りが理解できない層がライトノベルを手に取るといった話や、読む時間あたりのコストパフォーマンスが漫画よりよいなど、極めて漫画に近い消費がなされており、また一時期にライトノベル作家が一般文芸を手がけるようになるといったことは現在はまず存在しないことを含め、ライトノベルというものが文学とは切り離されて存立しているということを痛感しました。


 多少難しい表現を使ったほうがよいと考えていたのですが、できるだけ平易に、分かり易くというのはなかなか。低俗な表現は避けようと思っても、読み手としてはズバッと分かり易く刺激的なものを求めてきます。知り合いに見せて「語彙が少ない」と言われたのもそのあたりが原因かと考えています。(ネット上の簡易テストでは語彙が多い、と出ていたのですが……)いろいろなものを読んでいるので語彙が少ないことはないはずですが、敢えて避けているものが「足りない」になるのか、それともオタク層が好む中二病的ワードが少ないことか、それとも受け手の語彙が不足して紋切り型の批判に堕しているのか。オタクの知り合いが少なく、かつ創作や批評(好き嫌い程度にとどまる)はしない人ばかりなので、ここで助言を頂ければありがたいです。


 辛気臭いことばかり書いていますが、何よりも少なくない方が最後まで読んでいただいたことに謝意を申さずにはおれません。本当に、拙い小説を読んでいただいてありがとうございます。是非、思ったことをレビューでお書きいただければと思います(ただし、通報されないためにレビューの最初数行と「ひとこと紹介」の欄にネガティブな記述を書かないことをおすすめします)。


 今後は未完成の作品を執筆していく予定ですが、新作にも手を出したいですし、今後もラブコメを書くべきか、それとも異世界転生だのVRMMOなどよりネット的なものを書くべきか、それとも向いているものがあるのか、正直迷っています。バトルとエロとグロがあまり書けないけれども、売れ筋を極端に外しても理解されにくいでしょうし。書きたいものと売れ筋を折衷させるのもなかなか難しいですが、その道を探っていきたいと考えております。


 最後の最後になりますが、お手数ですが、

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 ありがとうございました。

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トナリノコ・イトコノコ ままかり @_mamakari

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