五人で近くの机を合わせて、さっそくテスト勉強を始めた。席順は、私の左側から「田」の字に芦田さん、小田さん、健、沼田さん、そして女性陣の側面にくっつくように私の席が設けられた。

「白神さん、これ教えて!」

「もーうー、すぐにー人に聞こうとするから、覚えられなーいんですよ」

「あ、これはここを代入して、これこれこれこれを順に計算したのをこちらに書いてから、さらにそれを……」

「あーあ、俺は白神さんに個人レッスンを受けたかったな」

「俺じゃ不満か?」

 そんなこんなで、日が暮れる頃まで、五人で勉強していた。それにしても、私と健以外のみんな、授業のない日でも参考書やノートを持って来ているなんて、熱心な人たちだな、と思った。テスト勉強とか、したことないから。

 下校の音楽が鳴り、

「今日は終了だな」

の健の一言で、私たちは参考書を畳み、席を立つ。机を元に戻して、家路につく。

「白神さん、今日一日、すごく勉強になりました。感謝です」

「白神さん、今日一日、目の保養になりました。感謝です」

 芦田さんの言葉を捩って、小田さんが私に感謝の言葉を伝える。

「セクハラ発言すると訴えられる可能性がある、ってことを吉井くんが言っていたの、もう忘れたの?」

 頭をぐりぐりする懲罰を加える芦田さん。そんなこんなで、通学路の通り沿いの本屋にみんなで入り、指定された教科書、副読本などを購入する。

「ね、白神さんたちはどんな本とか読むの」

 芦田さんが、ちょっと不思議そうに尋ねてくる。

「涼子みたいに乙女チックな漫画なんか見ねーよね」

「芦田さんはー、男の子のキャラクターがちょっと不良っぽいけど優しくって、身体を張って護ってくれる、ーって感じの漫画ばっかり読んでるんですよー」

 二人して、趣味をばらされている芦田さんは顔を赤らめて、

「私はいいから、インテリさんたちの学習法を聞いているのよ、ねっ、分かるでしょ」

 あたふたしている芦田さん。

「本屋なんか、小さい頃つぶれてしまってなかったから、活字と言ったら家で新聞読んでたくらいかな」

「私は、倉庫にあった古い本をよく読んでいたのよ。活字じゃなくて写本だけど」

「なんか、俺らの考えるインテリの更に上を行っている」

 私たちの答えに感心したように、腕を組んで、小田さんがうんうんと頷く。そして、視線を芦田さんに移す。

「なによ、どうせ私はバカで夢見がちな乙女ですよ」

「乙女って感じか」

 嘲笑の混じった物言いに、むっとした芦田さんは、近くに平積みしていた漫画本を手にとって、私に表紙が見えるようにして、こう言った。

「これ、私が今、一番嵌まっている漫画。プレゼントするから、是非、読んでみてよ、ね」

 私は困惑した、だって……。

「漫画なんて読んだことないから読み方が分からない」

 芦田さんの顔が凍り付いた。

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