5
翌朝……。
身体が、昨日以上にだるい。時刻は、まだ日の出前。ふらーっと立ち上がり、まだ片付いていない荷物の山の裾野をぐるーっと廻りながら、ふらふら、ふらふら、と千鳥足で進む私。目の前なんて、まともに見えていなかった。
ふと、何かに蹴躓いて、自身が倒れ込む。
「うわー、倒れた」
自分でも、変なこと言っているな、みたいなことを思いつつも、もはや正常とは言いがたい状態で、それを正確に認識することは困難なのである。
「なんか、やわらかいものがある。ふにふに~」
その、ふにふにしたものから突然声が、
「ゐすゞ、何してんだ? な、襲われた」
あ、健の声だー。なんで。
「どけよ、ゐすゞ。ちょっと、重たい」
「あー、太ってないわよ、いいでしょ」
何、言ってんだか。
柔らかいかたまりの中から出てきたのは、健の頭。すごい近くまで迫ってきた、と思ったら、そのままぶつかった。
あ、私のほうがその頭に近づきすぎたのだ。
「あちっ、ゐすゞ、大丈夫か。」
熱いって……
「熱がすごいぞ、とにかく、横になっておけ……」
と言われている間に、ふと意識が途切れ、私の足は崩れ落ちた。
「俺の布団……なのに」
ふらふらする私の意識の中で、健は布団を私に明け渡し、朝食の準備を始めた。
ちょうど、それと入れ違いになるように、昨日の憑き物が私の近くへやってくる。ぷにっ、と私の頭の上に乗っかって、
ぴー
わりと冷たい、この憑き物。あー、気持ちいいわ。しかし、その憑き物は青い躯を真っ赤にして、私の身体から発せられる熱を必死に受け止めている。
ぽんっ。
一分も経たないうちに、ケンケンは私の額から離れていく。猛タッシュ、って感じで。部屋の隅までいくと、私のほうを向き直り、心配そうに見つめる。
あ、私、そんなにヤバいんだ。
朦朧とする中、頭を巡った感覚は、それが限界。正確な病状といった事態の判断は、いかようにも不可能なものであった。
別に勉強しなくたって、新しい世界に出てこなくたっていいじゃないか。人の姿を棄てて、あの地域だけをずっと見守っていく、ということもできたはずだ。都会の神と喧嘩もしたくないし、……。混濁していく意識の中で、都会に出てきたことを後悔した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます