時
多川慶直
第1話
時
時は恐ろしい
時は鬼だ
時は悪魔だ
時はサディストだ
そして時は神だ
時が動いているのか
人が動いているのか
どうやって時は過ぎるのか
なにが永遠なのか
時が答えてくれるのか
辛いことも
悲しいことも
悔しいことも
惨めなことも
全て時が流してくれる
時を追いかける
しかし追いつけない
時から逃げる
しかし逃げられない
一緒に歩くしかない
息をして
涙を流して
笑顔になって
そして息を閉じる
時は全能なのだ
君は知っているか
この世で
何が神なのか
聞いたことがあるか
誰が神なのか
何を聞いている
何に腹を立てている
何を見ている
何に泣いている
時は黙っている
時は黙っている
そして過ぎた
そして過ぎる
我々は何処にいた
我々は何処にいる
時を触ったことがあるか
時を見たことがあるか
時を嗅いだことがあるか
時を聞いたことがあるか
時を味わったことがあるか
時はどこにいる
時は何色
時はどんな形
時はどのくらいの重さ
何も解らない
雲が行く如く
光が走る如く
風が行く如く
水が流れる如く
暗闇がやって来る
暗闇の中に光が走った
雷鳴が轟き
水が流れ風が吹いた
雲が行き小さな花が咲いた
その花が散りそして暗闇が来る
暗闇の向こうはどんなだろう
暗闇の向こうに何がある
暗闇の向こうで何が起こる
暗闇の向こうに誰がいる
多分時の大王の暗闇がある
写真を見る
古い写真だ
そうだ
時が閉じ込められている
時を捕まえた
時を捕まえたい
夢中で写真を撮る
ビデオを回す
あれっ変だな今しか写らない
過去と未来はどうやって捕まえるのか
時は影さえ残さない
時は透明だ
時は波立たない
時はいつもそばにいる
そして確実にすぎて行く
こんな公平な事があるのだろうか
動物にとっても
草木にとっても
人間にとっても
時は完璧に公平である
ただ通りすがりの
ただ出会っただけの
君は友達のことを覚えているか
友達は君のことを覚えているか
時はすべたを見 すべてを忘れる
今があった
今しか無い
今が来る
今どう生きるのか
今時と共に生きている
誰か僕の事を覚えていて欲しい
誰か僕の事を忘れないでいて欲しい
何かに記したい
何か永遠に書き残すものが無いのか
多分すべてが時の闇のなかで焼却されるだろう
誰か時を呼び付けろ
時を押さえつけろ
時を止めろ
時を殺せ
だが時の嘲笑いが聞こえてくる
時は非情だ
音も立てずに忍びより
僕らを押さえつけ
声も立てずに僕らを殺す
溶かすように
時 多川慶直 @keicyoku
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