第6話 冷たい涙

風は重く、大地を削り取ってゆくような砂塵を巻き上げながら、轟々と吹き荒れる。

廃墟と化した街。燃え尽きた緑。

凍てついた大地・・・。

生命いのちを感じるものは、何もない。

「戦」と「核」。

人々を恐怖に追い込んだ。

人は同じ過ちを幾度も幾度も繰り返し、ついには滅びぬ。

此処は誰もいない、何もない、あるのは唯、「無」のみ。


モノクロームの風は吹きすさび、心を凍りつかせ、真実は全て虚実となる。

全てが塵となって消えた、あの瞬間。

唯、人類の愚かさを映すだけ。


何も聞きたくはない、何も見たくはない、何も云いたくはない。

口を閉ざす。

眼を閉じる。


このまま、石のように蹲って、誰かが来るのを待とうか?

このまま、泉路を下り、あの世へ行こうか? 

だが、この冥い泉路みちの先で待っているのは?

取り返しのつかぬ過ちを犯した

今のわたしたちを待っているのは、

奈落のみ・・・。


この世へ転生しようにも、もう、

こころが戻るべき、場所ところはない。

魂が触れ合い、安らげる場所は、もう、無い。何も無い。

死の惑星・・・。


生命いのちあるものは、地球だいちへ踏み入ることはできない。

できなくなってしまった。

否、何百年、何千年、経ったとき、また大地に緑の息吹いのちが宿るかもしれぬ。


そして、わたしたちはまた、祈りを抱いて、地球だいちへ戻って行くのだ。

いつか、生命いのちの炎が

再び熱く燃え立つとき、

今一度、わたしたちはこの天空おおぞらを抱き締める。

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日常のちょっとした瞬間の憧憬 和紀河 @akikawashinobu

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