サザン・ファフナー著「言葉遊び」

電波の入らないラジオのノイズのように

最後が埋まらぬパズルピースのように

空気の抜けて浮かばぬ風船のように

何時までも治らない傷跡のように

雲が不規則に浮かぶ空のように

波紋の止まぬ水面下のように

湿った部屋の空気のように

汚れた窓ガラスのように

振動する人波のように

まるで灰色のように

中途半端に佇んだ

僕の心のように

もどかしくて

はがゆくて

それでも

僕等は

人間

辛く

苦しく

痛々しい

弱くもあり

情けなくても

惨めに生きる人

まるでその恰好は

赤子の記憶のように

象に憧れる蟻のように

空を眺める蚯蚓のように

陸の上でもがく魚のように

冬に憧れるヒグラシのように

大人の姿を求める子供のように

子供の時を思い出す大人のように

男を思い止まない女の表情のように

女を思い立ち止まる男の背中のように

短く儚い時を生きる、まるで人間のようだ。



Southern fefnir "Wordplay."

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■引用詳細

サザン・ファフナー著「言葉遊び」より抜粋。

二〇〇五年九月一日 - 発表。


■Southern fefnir (サザン・ファフナー)

 ユダヤ系ポーランド人の言語学者。ドイツ占領下のポーランドでホロコーストを逃れたうちの一人。本名はサイラス・ジグムント。

 言語学界の権威でもあり30カ国後以上の言語で『Wordplay(言葉遊び)』の本を執筆している。古代文字から民族言語まで約500の言語を取得しており(その中には絶滅危惧の言語もある為、取得語彙が少数の言語もある)約132冊の少数民族言語の辞書執筆に参加している。また自然言語だけではなく人工言語の開発者でもあり、アセンブリの派生言語の初期開発にも参加した。現在は次世代言語「evergreen」とロボット向け開発言語「MosAicroLe(モザイクロール)」の開発を行っている。

 生まれ付き左目の視力をほぼ持っておらず、既婚者だが既に妻を亡くしている。妻の名はオリヴィア。


 今回、日本語での本書を出版するに当たって以下のように語る。

『日本語は美しく、視覚的な物を作りたかった。』

※本書の構成や文字組みなどは、全て本人の手によるものである。本作品はそのままの構成で作品を抜粋した。

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