筧 圭記 著「Eye's Wide Shut.」設定書
「Eye's Wide Shut.」設定書 第二稿
Author. 筧 圭記
●世界感
世の中の技術が進化した少し先の近未来、
先に起こった「第三次世界大戦」とそれと重なり起こった「極東大地震」の影響により、機械が機械としての進化、人が「人として、人のまま進化する」の双方が急激に発達した後の世界。世界はマシン性能とAIの学習能力が向上していく「ロボット」への派生と、人自身の肉体的な能力を代替品で向上していく「アンドロイド」の2つの派生で進歩していき、オートメーション化されたものは、より機械に任されて行き、非オートメーション化されている作業はより人が行う価値の高いモノ“として人が人らしく或るための作業”として尊重され「人の脳が考えて起す犯罪」と「その犯罪を阻止・律する者」は社会の中でも重要な立場を締めていた
人のあらゆる身体のパーツが代替品と変わっていく世の中、次世代の端末用モニタとして義眼型デバイスの「Eye’s」が広く国民に普及・活躍をし、人々のネットワークと現実との境目は次々曖昧になってきていった。
そんな中、義眼デバイス「Eye’s」に、一部不可解な副作用が出る事が発見される。データ上には表れない、録画にも映らない、しかし本人には確かに見る事の出来る“機構外の視覚情報”、通称「不可視の可視化」が特定の人物デバイスに映るようになった。
それは匂い可視化、感情の可視化、記憶の可視化、そして未来の可視化。など、人・機械が感知出来ないものまでも可視化してしまう特殊能力だった。一種の超能力のような力である「Eye’s」能力は、表世界には正式公開はされていないが秘密裏に世界の裏側で派遣を握る新たな人的資材となりつつある。
政府公安では対特殊能力者用の組織として「トクノ」を設立、事件の裏側で未解決事件の捜査に当たっていた。
警察組織は先の第三次世界大戦の影響や極東大地震(インドネシアの国々が陸繋がりになる程大きい地震)により自衛隊と警察等緊急車両系が一緒くたとなった「軍部」として再構築され、20世紀の世界に比べ公僕が力を持つようになった。
また極東大地震で壊滅的な被害を受け、それを皮切りに起こった第三次世界大戦により、他国からの支援と攻防を強いられた世界では、国同士の垣根はより曖昧になっており、立地的にも距離が近くなったアジア諸国(主にインドネシア島東南アジア)と、支援に入った北米との合併が急速に進行、旧中国・及びアジア諸国との垣根は急速に縮まった。
●登場人物
<トクソ – 特殊視覚捜査部隊隊員一覧>
・弌ノ宮・A・アリス :過去を見る事の出来る「ラプラスの目(左目)」
・稻羽・R・ウェイン :死の彫刻を見る事の出来る「ミケランジェロの目」
・神宮寺・Q・オリヴィア :匂いの軌道が視覚化される「クー・シー目」
・アレックス・K・ロランド :人の記憶の断片が顔に見える「レミニセンスの目」
<その他>
・アリス(白) :未来を見る事の出来る「ラプラスの目(右目)」
・東雲・M・クレア :他人の思考が視覚化されて見える「サトリの目」
・三科・E・ベルナルド :”特別視覚能力者特別捜査本部”の特別長官補佐代理。
・間宮・H・ジャン :トクソ付き衛生班 検査技師
・椚・T・征四郎 :アリスの従者を務めるマフィア”オメルタ”の構成員。
●弌ノ宮(イチノミヤ)・A・アリス:ラプラスの目(左)
・身長167cm、体重56kg、27歳、AB型
頭もキレ、身体能力も高く、美貌も持ち合わせ、その上Eye’s能力者、と有望人材だが、ガサツで横暴、物事に興味がなく空気を読まず、悪意のない傍若無人で、気分屋で周りの男よりも肝が据わっており、遠慮をしない竹を割った性格で、色気はあるのに女のおの字を忘れた行動を取る事もしばしば。養父の教育が効いておりやれば女らしく出来る教養があるため、女性性が有効手段に働くと知っている時は使う。
アレックス曰く「人の心に土足どころかキャタピラで乗り込んでくるような女。」との事。
戦う事も交渉事も、とりあえず全てを力技で解決してしまうような女性。
ガサツで大柄な行動からは想像しづらく趣味は読書。マルクス経済学を読む傍ら中村うさぎを読むなど拝読範囲は様々、家も職場も本で埋もれており最もお気に入りなのはエリック・カールの絵本「はらぺこあおむし」
雑学知識にも富み頭も良いが、自己があまりない。よく紛争の火種となってはいるが自分の持論で喧嘩すると言うよりは、効率の悪い事無駄な事、矛盾している事などが嫌いで、他人に対してははっきりしない点を鋭くツッコむ事で揉める傾向が多い。一人でいる時には黙って本を読んでいる事が多い。趣味も食べ物の好き嫌いもない、酒は良く飲む方で、酔うと普段ですら遠慮しない物言いが更に無礼講となる。
洋服の趣味は自身には指針なく、基本的には上下のブラックパンツスーツを着用。ただしワイシャツのボタンを3個明けて常にIカップの谷間と防弾チョッキが丸見え状態なので、チョッキの存在意味がしばし本部の会議で問題なっている。プライベートの服装は面倒を見てくれている養父の趣味で構成されており、退役軍人後ニューハーフとして開花した養父(弌ノ宮・W・ジェイク)のセンスにより、ギャル・森ガール、セクシィからスポーティまで、着せ替え人形のように着せ替えて遊ばれている。「これは養父の趣味。秋葉原に行くなら、コレだそう。」と秋葉原電気街口に赤チェックのプリーツスカートに水色のボーダーニーハイ、鈴の付いた猫耳で集合場所に登場し、メンバーを唖然とさせた。
片目のみ義眼Eye’sに移植されており、左目Eye’s能力は「過去を見るラプラスの目」の能力。
左目は生身のため、左目の過去と、右目の現在を見比べて、その差を見つける事で事件の手がかりを探っていく。見える過去の時間や場面は本人の意志では操作出来ず、左目だけで見れば今起こっているのか分からない程、鮮明な映像が映る。
17歳の時に警視庁に保護され、それ以前の記憶を失っている。17歳で保護された際には、最低限の言葉しかしゃべる事が出来ないような状態だったがそこからわずか2年足らずでスポンジのように知識を吸収し19歳で渡米し大学入学、わずか1年で卒業した後、そのまま米軍訓練生として所属、22歳で帰国し軍職に就いた。
格闘技は近接格闘から重火器まで一通りの訓練を受けてきているが、特に射撃を多用する。乗り物の操縦も経験があるが日本の道路はすぐ止められるので走りたくないと言う。料理も家庭・サバイバル両方をこなし悪くないが「食糧補給に時間を取る趣味がない」と、500ポンドのステーキ一のドカ食いや、ゼリーエネルギー飲料、カップ麺大盛りで過ごそうとする所を、いつもオリヴィアに怒られている。
身元の真相はEye’s義眼の初期開発時に幼少期、非合法に人体実験を施されていた孤児。不可視の可視化の存在の可能性を知った非合法の研究機関がとある戦争孤児施設の孤児に最新の義眼eye’sを移植を決行、その被験者の一人だった。
彼女が発動した能力は「過去と未来を見通す事の出来る、ラプラスの目」自身の親がレジスタンスの主犯格で、彼女の目の前で親が殺され、それをショックで忘却してしまい心の傷を抱えていた彼女にとって「過去何があったのか、そして私はどうなるのか?」を切望した事による発動と考えられる。
能力が発動した後は、過去も未来も見通せる能力で鏡越しに自分を見て“予言を告げる預言者としての自身”の未来を見て施設を脱出、放浪の果てマフィア組織「オメルタ」に自身を売り、世界経済や行政を司る予言を続け、権力者となっていった。
16歳で自分自身の未来、そして過去を見るため、東雲研究所に潜り込み己の能力を向上させようとデータを奪う、しかし東雲博士自身のEye’s能力「サトリの目=他人の思考の視覚化」によってアリスの考えは筒抜けており、一枚上手であった東雲博士に逆にやり込められ、能力を高めるどころか消去そうになり、抵抗の末東雲博士を殺害、死の偽装工作をする。
東雲博士に能力を消されそうになり能力減退したアリスは、自分自身の能力を高める為自身のクローンと義眼の分配し、「過去」と「未来」を各それぞれ倍化する事を目論む。
実験結果、それぞれが「Eye’s」能力を保持したまま分離させる事に成功したものの、「未来」の能力を持ったアリスは未来を見る能力が向上し過ぎた結果全世界の行く末を見通し、精神が崩壊、髪の色素が抜けて真っ白に変化し、正気を失った。
「過去」の能力を持ったアリスは記憶を引き継いでおらず、Eye’s能力の衰退が著しかった事から実験の失敗とされ投棄。その際、東雲事件を追っていたトクソの部長補佐、三科に保護される。
トクノ隊内では、頭が切れ推理感覚が鋭く、ウェインとオリビアが集めてきた情報を元に確信へと迫り攻め込み色々破壊してくる。特にウェインとはアリスのいらない一言によって衝突する事も多く、掛け合いは所内で「阿吽の全面戦争」と言われ、これが始まると防災ヘルメットを被り退避する人間が出てくる程、お決まりの喧嘩ながらに破壊力が高く、周りの物が壊れる事で有名。
しかし東雲博士を殺した犯人がアリス自身と判明しウェインが激昂した際には、今までの掛け合いがじゃれ合いだったと感じられる程殺し合いの戦いが起こったが、腹部と脚部の相撃ちという幕引きでいったん中断。
その関係性のまま事件の真相を追い未来を見通せる人格の白アリスと対峙、3人が3人に銃口を突きつけあう三すくみの最中、アリスはウェインのすぐ傍の鏡を撃ち「鏡の中の自分自身を撃つ」事で白アリスが告げた「アリスがアリスを撃つ」という予言を回避させ、ウェインはアリスの引き金が引かれると同時に、アリスに向けていた銃口を、白アリスへ向け発砲した。
自分を撃たなかったウェインの不可解な行動に「何で、私の事、撃たなかったの。」「向き合った時にな、.32ACPだなんて可愛らしい弾痕を残すのが、お前なワケがない事を思い出して。姉さんを殺したのはお前じゃない。少なくとも、俺の知ってる、お前じゃない。」
この言葉で、二人は二人なりに和解を示した。
●稻羽(イナバ)・M・ウェイン:ミケランジェロの目
・身長188cm、体重73kg、26歳、O型
姉の死の真相を追うために軍部に入った気だるげな元警官。筋肉と筋っぽい細身ながらにがっちりとした躯体にボサボサの天パ髪、半開きの目にいつも何かを食べている口、毎日ほぼ同じのよれよれの黒のスーツに、柄の目立つダサいネクタイ。
武術に長け、特に超遠距離狙撃とマーシャルアーツに長けており、単身で乗り込み立ち回る事の出来るテクニック・パワー両方のバランスが取れている、兵士として大変有能な人材で、入隊時からSATへ推薦され訓練等でも優秀な成績を残しており当初から注目がされていたが、数年間の従属後、姉の死の原因と犯人を裁くべく警官になったと最前線を退き、入隊2年目で調査部に移動をしようとしていた所、姉の死をきっかけにEye’s能力が開花した事が分かり、三科にスカウトされトクノに配属された。
捜査手腕も悪くなく、普段の気だるげさからは想像できない程情報収集能力に優れ、詐欺師まがいの立ち回りで情報を聞き出す事も得意としている。脅しと甘やかしのバランスも良く腕も立つので、勝手に舎弟を名乗る少年たちが町に点在しており、重要な情報網として使っている。仕事がら関わる事も多い水商売の女性等からも人気が高いが、若い子の誘惑にはゲイと噂が立つほど一切興味を示さない、その代わり30代後半の品のある優しさを持つ大人の女性には周りが引く程弱く青少年のような反応になる、根からの熟女好き。ストライクゾーンは38から56歳、というのが公安の分析結果。
とにかく、大飯食らい。いつも何か食べている。好き嫌いは特になく口に入るモノであれば何でも良いらしく、ジャンクフードから犬のビスケットも猫缶も既に賞味済み。意外とハムスターのひまわりが美味しい、とか言い始める始末。酒も飲むが酒はそんなに強くなく酔っぱらうと若干甘えんぼうで泣き上戸っぽくなる。食べ物をくれる人は基本良い人で食べ物を奪う人は敵、ただし子供には分け与えなさい、という姉の教えが効いており、嫌がる子供にも「せっかくやるんだから食え!」と追いかけ回す程、みょうちきりんなポリシーが効いている。あまりにも食費の経費精算書が多過ぎてトクソ付きになったと言う噂が立っている程、燃費の悪い大食漢。
腹が減ると抜群に動きが悪くなるため、捜査部はウェインの腹の減り具合を時計代わりに使う。他にも骨折した際、医療が発達したこのご時世にヤブ医者にボルトを埋め込まれるという手術をされ、ボルトの痛みで天気予報が出来る等特技がある。
プライベートの服装はジーパンにシャツやネックシャツに上着、と基本構成が変わらない。ゲームが好きで家でも外でも格ゲーやFPSをやる。好きなゲームはバイオハザードと、Cod。
Eye’s能力は「死の彫刻を見る能力」。幽霊を見る等の能力ではなく「死んだ人が、死んだ瞬間を彫刻のように固まった形でその場に青透明色に見える」能力。
そのため事件現場の特定や死因等を断定するのに役立つ他、行方不明者の生死の確認を取るのに使える。死後の時間によって、その彫刻は置かれる場所、形が変わり、最初は死が起こった場所と死んだ瞬間(心臓が止まった瞬間の様子を止めるため、固まる様子はその瞬間の肢体損傷度に左右される。)、そして少しづつ「生前思いの強い場所」で生前最も思いの強かった形で固まり、風化し無くなる。(その思いは慈しみなどポジティブでも、恨みなどネガティブな動機でも良いため、恨みの場合は犯人特定にも繋がる。)
また、その際質感も、柔らかい液状から徐々に固形化して固まっていき、雨風にさらされた土くれのようになり崩れる。そのため現場・死因特定は一週間、生死確認は1~3ヶ月が限度。)
Eye’s能力中は逆に生きている人は視界に映らなくなり、物事が止まった「死者の世界」が見える。(そのため死者の像に生者がめり込んで見える事はない)能力の特性上、本人曰く、墓場よりも病院や特に地下鉄がキツいとの事。
「東雲・M・クレア」とウェインには18歳離れた兄弟仲。両親が離婚したため男親に引き取られ親子仲の良くなかったウェインは、18歳も離れている姉と親子関係のように仲が良く、自分は姉に面倒を見られたようなものだとウェインは語っている。姉が25(ウェイン7歳)で研究員になり、32歳(15歳)の頃亡くなっている。その為姉を殺した奴を殺すという私怨だけで、イルカの調教師になる夢を捨て軍に入った。姉が亡くなる前までのウェインはアリスが蕁麻疹を立てる程純朴な少年だった。
アリスが姉を殺した真犯人と分かってからは抑えようのない怒りをアリスにぶつけ、持てる技術の全てを使ってアリスを殺害しようとする。一触即発状態でアリスを殺しかけ、自暴自棄から軍の武器を奪取しアリスを殺しに向かい、行く手を阻んだ軍部を単独で壊滅状態に追い込むなど暴走をしたが、白アリスの存在と悩み苦しむアリスの様子に理解を示し、姉の死の像が家ではなく結局研究室に残った事、殺された時の表情が苦悶ではなく安らかだったことを受け、本来は分かっていた姉を殺害した犯人への恨みを募らせることを止め、素直に何もできなかった自分の無力さへのいら立ちである事を認め、アリスへの恨みの念を解き最終的に許す事にする。
●神宮寺(ジングウジ)・Q・オリヴィア : クー・シーの目
・身長158cm、体重51kg、21歳、O型
足の先から髪の毛の1本1本まで、天然で構成されている、天然娘。あんまりにも天然過ぎて笑いごとでない程の天然ぶりを発揮する。ハニーオレンジの細いウェーブ髪を高めの位置から二つ垂らし、シンプルな魅力の肢体、飾りのあるシャツにリボンタイ、黒いレース裾と白いリボンで前を止めるジャケットに、黒のプリーツスカートの裾もレース、とゆるふわファッションに身を包む、社会人としてはあまり成立していない、未成熟な女性。
天性の才能で、仕事スキルも戦闘も壊滅的に役立たず。
ただしそれを超越するほどヒラメキとグッドラックが超強力で「宇宙からの交信をツインテで受信してる。」や「守護霊がヨグ=ソートス」と揶揄されるほど、起こり得る数々のラッキーハプニングで事件を解決したり敵を倒したりする。当てずっぽうのように言うあり得ない事がよく当たる事も多いため、以前とある宗教団体の事件解決時の際に教祖様よりも鋭い予言をした事から、新教祖様に祭られそうになった。
戦闘能力もそれに近しい物があり、どの格闘技も基本的にパッとしないどころか、事故する。教官から「下手な鉄砲数を撃ってもお前は当たらない。だったら万が一の可能性にかけて全部破壊しろ」と、火炎放射器付きのグレネードランチャー、という凶悪な超重火器を装備する事となった。相手が遠い時は青いボタン、近い時は赤いボタン、だ。
反面、映像記憶のような絶対記憶力を持っており、すべての記憶を覚えている。8ケタの数字や、型番、柄、日付など、画像で認識出来る事は強いが、聞いた事は弱い。また理解したり整合性を付けるまでがワンテンポ遅いため、何故それに気づかないと激怒される事も多い。
軍部に入れたのはどう贔屓目に考えてもコネ採用で、それでもあまりのトラブルメーカーさに彼女の所属した部署は、半年で部署が解体していっていた。
トクソ付きになった現在も、現場の鑑識からは彼女のヒラメキで事件が解決している功績は認められているものの、天秤にかけられるぐらい現場を台無しにしているため、「お願いなので、そこに座って動かず、目を開いて、息だけ吸っていて欲しい」と現場にはオリヴィア専用の監督椅子とその周りにサークルが用意される始末。
基本的には愛想も良く明るく元気で、努力家(報われない)で、真面目で素直でいい子である。酒がものすごく強く、どんなに飲んでもまったく変わらない。鈍感に輪をかけて美意識が少しズレており、特にホラーやスプラッタ、妖怪物の怪が大好きのゾンビフリーク。夢は「愛する人の肉を食べて、本当の意味で一つになる事」と朗らかな笑顔で答えた彼女に対して、今まで7回は縁談が破断になっている。にも拘わらず、結婚願望はあるらしく日々お見合いを頑張ったり、ホットヨガに通ったりと、女の子らしさに磨きをかけようとする。(この行動に、全員一致で「そこじゃない」と反論の声が上がった。)
ただし男関係については真面目を通り越した生真面目で、からかいついでに手を出そうとしていたアレックスをも天然さ加減でドン引きさせ、アレックスとオリヴィア二人が敵に捕まり監禁されている際に、これに乗じて口説こうとするアレックスに、天使のような理論でまさかの論破。「この時代に婚前交渉はダメだという倫理をこんな小娘に屈するとは思わなかった。」その一件でアレックスから難攻不落要塞認定され、逆に闘志に火を付けてしまった。
プライベートの服装は、白とアイボリーブラウンを貴重とした森ガール風コーディネートのワンピース。ただし家柄が良いため、洋服は基本フルオーダーメードと洋服代が常軌を逸している。
Eye’s能力は「嗅覚の視覚化」煙のように立ち込める匂いが様々な彩で視覚化される。あまりに強い匂いや多くの匂いは乗り物酔いになったような感覚になる。死臭や多くのモノの中から目的の物を探したり、犯人の追跡をしたり、遺留品から犯人を特定したりと警察犬のような動きをする。匂いごとに色や柄が違って見え、あまりに特徴的な香りだと、柄で覚えてしまう事もある程。匂いは煙のような存在なので長い間見えるわけではなく、長くそこに匂いが漂い染みついてしまったものなどは靄のように見える。
身元は身体代替用品メーカーの最大手、Eye’sデバイスの研究開発所の「ホルス社」の社長令嬢で、箱入り娘。
東雲事件の時、父「神宮寺・W・トレヴァー」の会社へ見学に遊びに来ていた幼子の彼女が東雲博士の死体の第一発見者である。その時の庭園の蘭と、東雲博士の遺体をゆらゆらと揺らめく布のようなものが覆っている、という発言をした事からEye’s能力者である事が発覚。この時の嗅いだ事のない匂いのショックからこの能力が開花したのではないかと言われている。
トクソにはEye’s能力が開花していた事と社会勉強を兼ね、元々三科と交友関係があった父の繋がりで軍部に入隊し、結果トクソに引き取られる事となった。ホルス社社長である父からは「ゆくゆくは娘に会社を継がせたいと思っている、女性も社会進出する近代だ。」と溺愛盲目ぶりを披露、全員が狼狽する中アリスが「会社を潰したくなければ、やめた方が良いと思います。」ときっぱり言い捨て、それ以降アリスの元に秘書からお中元の品が届くようになった。
仕事は出来ないが、ロクに現場に赴かないアリスとアレックスの代わりにウェインと現場に赴き、真面目な調査手順を踏もうとしたり、証拠を探したり、その場で出るヒラメキから事件解決の糸口をウェインとアリスが掴み、事件捜査に役立てたりする。事件解決にあたって荒れるアリスやウェインを持前の天然でブレイクしたり、一旦は犯人扱いされ怪しい行動を取るアレックスを最後まで信じきり、心を開かせたりと、良い意味のコミュニケーションブレイカー、トクソを組織として纏めている陰の立役者。
家族構成は、世界的義体技術の大手であるホルス社社長の社長を務める「神宮寺・W・トレヴァー」とその妻「神宮寺・W・プリシア」の一人娘。飼い犬の白いマルチーズ「モッツァレラ」、そして執事の「ウォルター」の居る大豪邸の家に暮らしており、家族娘環境共に、アメリカ娘のような家庭が描かれている。
●アレックス・K・ロランド :レミニセンスの目
181cm、71kg、32歳、A型
チャラ付いた言動に、それを許してしまう程の整った容姿を持つイタリア人と日本人の血を持つ、交換留学で本国に来た捜査官。
白のパンツにVネックのシャツ、青いジャケットを羽織る所内では珍しい程のラフスタイル。
雑誌のモデルのように整った目鼻にプラチナブロンド髪に、透き通るアイスブルーの瞳で流し目が出来る、スタイリッシュで整っている往年のデカプリオを超える程、顔もスタイルも完璧に整ったイケメン。街を歩けば勝手に写真を撮られる事もしばしある程目立つ。
しかしながらフェミニストというよりも女の子が好きが超越しており、とっかえひっかえ女性を本日のランチを選ぶ感覚で弄ぶ。ただしフェミニストなので本人は最低な事をしてる自覚はなく「その場その場で楽しいのが一番良い」とポジティブな方向にゲスを極めている徹底した遊び人。国の数だけ嫁が居て、曜日の数だけ妻が居て、日数の数だけ彼女が居る。
彼を幼少期育てたお手伝いが日本人だったためまったく不自由なく日本語が使える。他、英語、スペイン語、フランス語が話せる。
トクソ内でも何の仕事をしているかは謎が多くほとんどデスクにもおらず、フラッと現れては消え、事が動くタイミングには必ず出現し、一発で物事を言い当て、一気に犯人を追いつめたりもする。普段何をしているかは誰にも分からない。
性格は「天が2物どころか3物も4物与えてしまって万能になった人類の成れの果て」頭脳も容姿も、能力も誰にも文句のつけようがなく、我儘で強引で鼻持ちならない奴になってしまったもはや仕方のないと一般男性が潔く諦めるような程、出来た男。外面も良く交友範囲も広く、センスも良くルックスも良いため、上からの信頼も厚く、評判どころか所内にファンクラブまである程のスーパー隊員。
しかし物に執着を見せない所や非道と思われる行いもあり、そのたびしばしウェインと衝突する。アリスとは効率的を求める思考回路が似ている事が互いの評価になっているが、二人の間には不可解な溝がありあまり話をしない。オリヴィアの事は、彼女がゾンビの生首を携帯ストラップにしている所を見て以降、理解不能な生き物として認識しており、アウトオブ眼中である。
プライベートの服装は、フォーマルからカジュアルまで何でも着こなす。
「我が国の捜査にもEye’s能力を役立てよう」という名目のテストモデルとして本国で功績を上げているアレックスが交換留学される形で軍に来た。Eye’s能力の特性も相まって捜査能力においては確かに優秀な人材だが、人としてはどうかという点も多く「成るべくなら綺麗な姿で見たいから、溺死と首つりは遠慮したいな。毒物は内容による。」と現場検証をサボったり、その場で口説いた被害者の女性とディナーに行ったりと女がらみになると評価を下げる失態も多く「お前が女性にモテなくなる呪いにかかったら、俺達は残業せずに帰れる。」と各隊からブーイングを受けている。
Eye’s能力は、他人の記憶を覗き視る「レミニセンスの目」
人の頭の中にある強烈な記憶やイメージが顔の前のキャンパスに数コマのアニメーションのように動く。時にそれは自分自身の自覚が無いものを映す事も多く、話しかける事によって、思い描く思考の変化から絵が変わる事もある。
この能力があるため、時にアレックスは人のコンプレックスに踏み込む事を得意としており、非道な言葉攻めでの尋問を得意とする。特に衝動的に起こした事件などはイメージとして引き出しやすく、証拠が曖昧な中からもそのイメージから探りを入れて犯人特定をする事などを得意としている。
その正体は本土の捜査官ではなく、組織「パヴァリア」の特殊エージェントを務める元FBI捜査官。世界の裏で新たな問題となっている「Eye’s能力者の所有派遣争い」について取り締まるための、極秘エージェント。
新義眼デバイスが生む計測不可解な能力がある事、これが世界の裏で悪用されている事に気づいた世界の裏側は、秘密裏に「Eye’s能力対策本部=パヴァリア」を組織、能力の管理や、抑制、コントロールの方法を探っていた。
8年前、Eye’s能力の研究を早くも研究者として名を上げていたホルス社の東雲博士とに「Eye’s能力の任意的増幅・消去」についての研究を委託、およびそれに関わる彼女の警護等を担当していたのがアレックスであり、時同じくして裏世界で「世界政権や金融市場の予言をする、「コードネーム;J/T」(ジョン・タイター)」として噂になっていたアリスの存在は監視ターゲットの一人でああった。
しかし、J/Tがまさか女児だと思っていなかった組織は忍び込んだアリスに東雲博士が殺され、自分の役目も果たせず依頼していたEye’s能力の削除方法の研究成果は消える、という失態を犯した事に自責の念を抱えている。東雲博士の研究は秘密裏に進められていたため、来日後は彼女の研究成果の捜索を行っていたと共に、犯人と思われる少女と似た姿形と能力を持つアリスを調査する為、三科の協力を経てトクソへ潜り込んだ。
その為、身元の不審さから一度はアリス、ウェインに一連の事件について疑いを持たれたが、オリヴィアは頑なにそれを否定しアレックスを擁護。そのオリヴィアの検診的な様子に死を覚悟したアレックスは「俺たちだけの秘密ね、」と自身の身分を明かす。にも拘わらず救出された瞬間一瞬でそれをアリスとウェインにもバラし、誤解を解いたオリヴィア。「え、“俺たち”って言ったじゃないですか。」と悪意のない笑顔に呆れ、彼女の純真さに観念し仲間に身分を明かした。
過去、FBI時代にまだ存在が確定とされていなかったEye’s能力に気づき始めたアレックスは、その際相棒を務めていた最愛の同僚と共に、不可解に急成長をしたマフィア組織「オメルタ」を追った、しかし既に未来予言として組織に居たアリスによって計画は筒抜けとなっており、抗争はFBIの敗北で終わり、同僚をその際に失ってしまっていた。その際自身もEye’s能力に目覚め、最愛の同僚を失ったのはアリスの未来予知だけではなく「FBI内部に裏切り者が居た」という事実をEye’s能力「レミニセンスの目(思い出が見える)」で暴く事となった。
事件解決後、FBIを退職しEye’s能力を追うため、Eye’s能力の研究に取り組んでいた「パヴァリア」の特殊エージェントへと転職、未来予知をする少女アリスを追うと共にEye’s能力の解明に努める事となる。
アリスが帰国しトクソ付きになる事を三科から連絡を受け、パヴァリアは「J/T」の唯一の目撃者であるアレックスを派遣する。しかし記憶を失っていたアリスにアレックスのEye’s能力は役に立たず、三科と共に秘密裏にアリスの調査と引き続き東雲事件についての調査をするため交換留学生という形でトクソに配属される。
東雲事件の真相、アリスの出生、そしてトクソチームへの自分の身分をバラし、オメルタを潰す為単身乗り込んだアリスとそれを追ったウェインをサポートした。
仲間に身分を明かしてからは、髪を短く切りスーツを着た礼儀正しく物柔らかな元の彼らしい姿に戻り「そろそろ良い年なので、子供らしい事も止めようかと思って。」とチームを信頼し支えるようになる。元FBIだけあり捜査手腕にも磨きがかかり、中・外も文句の付けようのないイケメンで有能な男になってしまったため、女性からの評価は更に急上昇。「心を入れ替えた、がここまでハマる奴もすごいが、凄すぎてムカつきが増した。」と男性からは両手を上げては喜んでもらえていない。
●アリス・A・マクスウェル(白いアリス)
・身長167cm、体重53kg、27歳、AB型 ※容姿はアリスと同様
アリスとそっくりそのままの容姿を持ちながら、彼女よりも色素の抜けた白い髪と、青い目を持ち、アリスよりも筋肉が衰え、色白な印象を持つ女性。クローンとして分かれた本体のアリス。
彼女の元の目の色は青、黄色人種よりも白っぽい肌色を持つ。(クローン先の一ノ宮アリスはアラブの血の方が濃く出たため、同じ目鼻立ちのハッキリした姿をベースに、肌は肌色寄りで、目は赤っぽい茶色となった。)
戦争終盤、戦争で親を亡くした敗北軍の施設に居た子供たちは生き残りのレジスタンス達から非合法に義眼デバイスの移植手術を受け、まだ未確定の発見であったEye’sの発動実験が行われていた。その中で能力発動に至った1人の少女「アリス」
彼女の能力は「目に映る視界の未来・過去を見る能力」だった。
レジスタンスのリーダーであった両親が自分自身の目の前で殺される、という惨劇を目の当たりにし記憶を失ってしまった過去、そして不安と恐怖にまみれた未来を渇望した事から彼女は「自分自身の過去・未来を見る事」を渇望、この能力が開花した。しかしながら彼女の能力は「自身の視る視界の、過去・未来」が見える能力であり、自分自身を直接見る事が出来ない彼女は、その能力で自身を知る事が出来なかった。
彼女は日々、鏡に向かい自分の過去、そして幸せな未来を渇望し続けた。その結果、断片的に鏡から自身を覗き込む事が出来るようになり、マフィアの傍で預言者として微笑む自身を断片的に見る。彼女はその通りの運命を辿ろうと12歳で施設から逃亡、マフィア「オメルタ」に自身を売り込む。
彼女の企みは上手く運びコードネーム:J/T(ジョン・タイター)として世界の権力者に予言を与える事で、わずか14歳で「オメルタ」の重要人物として扱われ、施設で枯渇した生活を送っていた彼女は一転して権力者に予言者として大切に扱われ、愛されていった。
しかし、彼女自身の未来・過去が見える事はなく、再び高層ホテルの夜景を見下ろす窓ガラスに映る自身の姿の未来を垣間見た彼女は、能力の向上をとある研究所に行く事だと見つけ、予知能力が義眼Eye’sの副作用である事、それを研究している研究機関「ホルス」に目を付け、アリスは研究機関に潜り込み彼女の研究、及び能力向上をさせようと目論む。
アリスはEye’s能力の被験者として能力向上の実験に参加するフリをしていた所、初対面から東雲博士のEye’s能力「サトリの目 - 他人の思考の視覚化」によって彼女の考えは全て筒抜けになっており、能力向上と称して行われた実験の瀬戸際で、全てが種明かしされ、能力は抹消されそうになってしまう。
咄嗟に彼女を殺し逃れた彼女は事件の偽装工作後、その後自身の手で無茶な能力向上を行おうと試みる。それは自身のクローンを作り、クローンへ自身の能力を付与し「同じ遺伝子・姿形・因果を持った未来を見る自身と過去を見る自身が、互いが互いを見る事で全てを理解する」というものだった。
実験は成功し、能力は無事分割されクローンも生き残った、しかしながら、未来を見通す事が出来るようになったアリスが、もう一人のアリスを見た際に見えた未来は「自分自身が、自分に殺されるビジョン」だった。
何度自分を見ても、自身が自身を殺すビジョンが様々なシュチエーションで起こり、彼女は「自分のクローンを作ってしまう事が誤った選択肢だった」事に気づく。
また、自身の過去を取り戻すためのアリスは能力が低下し、上手く過去を見る事も出来なくなってしまった。取り返しのつかない未来の因果に囚われたアリスは精神を病み、もう一人のアリスを刺し殺し投棄する。
その後、自分が死んでしまう未来因果から外れる為の方法を探っている。
何度も自分が殺すビジョンを見てしまって以降、精神の何かが外れてしまい、髪の色素が抜け白髪へ変わった。未来予知の能力はかわらず健在であるため、引き続きマフィア「オメルタ」の幹部として、未来予知を行っている。
従者である椚と共に「Eye’s能力の遠隔操作」を使い、第三社の介入を入れる事によって「自分が殺されてしまう因果の回避方法」を探している。
性格は、分離前は野心のあるたくましいギラついた女の子で、幼いながらに施設を脱出しマフィアと関係を持つなど頭の良さと度胸と強かさを持ち合わせていた。
分離してからは、白いアリスに関しては一転、寡黙で物静な様子になるが、行動には多くの矛盾が見受けられ、意味深な発言をしたり、人を弄ぶ様子などを持つなど変化が見られた。一ノ宮アリスが刀であるなら、白アリスは毒のような攻撃性を持っている。
従者椚に未来を見たいかと問いた際に興味がないと言われ彼に興味を持ち椚を弄ぶような行動を起こす事もしばし見受けられる。自身を守るように命令しながらも、自ら命を危険に晒すような行動を起こすなどのからかいを椚にする。
未来を見る力が向上した上で見えた未来は何も成す事はなく、結果未来が全て分かってどんなに回避しようとした所で、自分が逃れたかった“恐怖(命の危険という最も根本的な欲求)”からは逃れられないと知り、彼女の心は何かがズレてしまった。
彼女は「第三者が、アリスの因果に介入する事で、運命を変える」事を目的として「Eye’sを遠隔する新型デバイス」を不特定多数にばら撒き、「新型デバイスサービス」として彼等4名の因果に、まったく関係のない第三者を介入させ、その第三社の未来を見る事で「自分にも読めない未来を作り出し、一ノ宮アリスを殺し自分一人の存在になる事、その運命因果を持つ人の捜索」を目的としていた。
このユーザーの未来も自身の因果から抜ける事が出来ない、
実験が失敗したと分かったアリスは、次の被験者の辿る未来を探しに行くのであった。
そうして、未来予知出来る能力を持ち過ぎてしまった彼女は、何度も何度も己の思い描く未来を得るために、多くの「己が辿る未来のif」を鏡の向こう側に見続けてる。
組み立てては壊し、組み立てては壊し、を繰り返すうちに、彼女自身が世界因果から外れてしまい、永遠に「彼女の時間」を覗き込んでいるだけの存在になってしまった事に、まだ気づいていない。
●東雲・M・クレア
・身長157cm、体重46kg、享年32歳、0型
ウェインの年の離れた姉で、義眼デバイスEye’sの研究者の第一人者。元々は、人工細胞の研究者でその中でも取り分け脳細胞分野で功績を上げており、倫理観の問題から研究が25年遅れている分野だが、彼女のまとめた論文「脳細胞の電脳化について」は動物実験までは成功した実績を持っている。
ホルス社就職後、義眼デバイスのEye’sの開発に携わり、その中でもEye’s能力の存在をいち早く着眼し、その可能性について研究を進めている。
(ただしこのEye’s能力はメーカー正式発表では「存在しない」事となっているため、彼女の研究は秘密裏に行われており、表向きは「視覚情報のネットワーク分析」を取り扱っている。)
彼女がEye’s能力をいち早く認めたのは、彼女自身が能力者だったからだという説が有力であるが、未だに明確な機械測定の出来ないEye’s能力は自己申告による問診のみが判断基準となるため明らかになっておらず、同僚のジャン、身内であったウェインですら知らされてはいなかった。
赤毛でウェーブのかかる髪を無造作に1本に束ねている事が多い、性格はのんびりした研究者気質で、研究以外の事となると抜ける事が多いが基本的には常識人。お腹が減ったり息詰まった時や、嬉しかったりリラックスをすると動物のような鳴き声に似た声を出す。仕事となると大人びた頭の良い研究者に成るが、身内やウェインに対しては甘える事も多い可愛らしい女性であった。研究に没頭すると3日は誰の声も聞こえない集中力を持つが、ウェインの声にだけは反応するため研究所長からクレアの健康面を気遣う意味でウェインはクレアの食事の面倒を見る事を頼まれていた。(ウェインが飲食に執着するのはそのせい)
彼女が元々研究者を目指したのはクレア、ウェインの父親にあたる「稻羽・A・クラウス」が研究者であり、擬態デバイスの開発者であった事が影響している。
クラウスは自身の妻が事故で下半身不随になってしまった事を受け動物工学から擬態デバイスの開発に転移、人の筋肉の動きを感知した完璧な義足を作り出した。こうした努力から母親は足が動くようになったが、彼が研究に没頭している間彼女は心が動かなくなってしまっていた。
この経緯を見ていたクレアは、父の直した身体に心が宿れば母は戻ると信じ脳科学者の道へ。年幼く状況の知らなかったウェインは研究に没頭し母と姉を捨てたように見えた父と不仲に陥っている。しかし結局母の心は戻るどころか、醜くなった心で娘を嫉妬し恨み自殺。
脳を切り開こうが脳波を見ようが、人の心が分からないと嘆くクレアに目覚めたのが、人の気持ちが読めるEye’s能力「サトリの目=思考の視覚化」能力であったと考えられている。
ウェインを愛しており母親のような愛情を注ぐ傍ら、父を娘として、そして女性として敬愛しており研究に没頭している。彼女の死の像は結果、安らかな微笑みでウェインを見下ろすも、その像は家ではなく研究室に残った。
●三科・E・ベルナルド
・身長168cm、体重78kg、年齢58歳、B型
”特別視覚能力者特別捜査本部”の特別長官補佐代理。グレーのチョッキ・スーツ姿で、銀縁のメガネをかけ前髪の後退し始めた灰色と白髪が混ざる髪を撫で付けた、のんびりとした昼行燈。
体躯は良いが、少し小柄の補佐代理。
口癖は「定年間際の爺だから、あんまり細かぇ事は覚えてねぇなぁ。」好々爺の雰囲気を思わせる気の良いのんびりした老であるが、実際は数々の実績を持つ軍内でも屈指の指揮官。
大戦中、戦線での本部指令を待つ間、決定も指定も下せぬ本部の余計な社内政治の状況に嫌気が指し、自身の指揮していた陸軍第三分隊を戦場ど真ん中で解散宣言を出し本部に背く。にも関わらず、適格な指示と戦略で誰一人として欠く事なく無事全員帰還させ、彼の功績は“反乱軍の帰還”として今でも語り継がれる程指揮官として有能な人物。
分隊解散後、処分する事でこの事態を公にする事も出来ず、かと言って軍にも戻す事が出来ずに有耶無耶としていた所、三科自身から「未解決事件特捜本部」への移転を志願。未解決事件の後処理を追うような功績の上げられない部隊で既に掃溜めと化していた部だったため、本部は人事を快諾。その後未解決事件の多くが特殊能力Eye’sによる「今までの常識内では解決できない事件」であった事が判明、その事をホルス社のオリヴィアの父社長、「神宮司・F・トレヴァ」等と協力し、東雲事件を切っ掛けに、秘密裏にトクノの前組織である“特別能力特別捜査本部(トクブ)”という特殊捜査チームを作った。
そのトクブにて特殊能力を追いマフィア組織を捜査していた所、投棄されたアリスを保護する。
現アリスの養父であるジェイク (この時ジェイクは海軍所属後、本部の大佐を務め退役直前の時代を暮している)とは、上官・部下の仲。信頼できる人間にアリスを託したいと考えジェイクを訪ね、彼にアリスの養父をお願いする事となる。
トクソの個性的で厄介な面子を笑顔と一言でまとめ上げる実力を持ち、部外には電話一本で、タバコが1本尽きる前に相手にYESと言わせる交渉術とコネクションを持つ。一方で経費精算がいつも半年遅れで届く事について、経理課からのお局からのお叱り電話が鳴り響く日々が続いている。
あだ名は団長。小さく恰幅の良い姿と猛獣や道化のような個性的なトクノのメンバーを纏めている様子から、社外内からは長官ではなく団長と呼ばれている。
普段は好物である台湾緑茶を片手に、白くたてがみの大きなコンゴウインコのミームと戯れており、彼の話をまともに話を聞くのは、オリヴィアぐらい。
彼のEye’s能力はない。しかしEye’s能力の発見に至ったのは、軍部時代に作戦決行中、とあるテロリスト(アリスの両親の所属していたレジスタンス)の制圧に乗り込んだ際、彼等が何らかの実験をしている証拠の欠片を掴んでいた。その内容は今まで起こった作戦実行中いくつかの「不可解なミス」に説明が付く現象の研究であった。
この経験をジェイクに持ちかけた所、ジェイク自身も同じ事象を見つけており、彼は何らかの遭遇した事のない未知の技術の存在に気づく事になる。
数年後、自分の隊を解散させた後に潔く退役しようと考えていた所、ジェイクからの助言で「未解決事件特捜本部」への異動を助言され、志願。
未解決事件特別捜査本部の資料で見た不可解な事象は、自分自身やジェイクが体験した「不可解な事象」に似る現象が起こっており、彼は本格的にこの事象に対して調査を進める事となった。調査は、義手技術の開発会社であるホルス社にまで至り、その時対応していたのが東雲クレア、彼はクレアを通じて、義眼技術へ疑いの当りを付けるようになる。その事件の最中クレアが何物かに殺される事件に遭遇、捜査の結果、東雲クレアが調べていた事が義眼デバイスEye’sの特殊能力である事がトレヴァから秘密裏に明かされ、そこから予知能力を持つマフィアへと至り、アリスを保護。
義眼デバイスの特殊能力の件について、ホルス社社長のトレヴァー、そして東雲研究所で共に研究を行い、死後研究を引き継いだジャン、義眼デバイスの特殊能力について調査を行っていたアレックスの所属組織「パヴァリア」の協力を元に、本事象の事実が軍本部に明らかにされ、それ専用の調査団「特殊視覚能力捜査本部」が成立する事となった。
その後、捜査部への異動願いを出していたウェインを招き入れ、翌春にコネ入社で入ってきたオリヴィアが3か月後にトクソへ転属、時同じくして本国からアレックスが交換留学生という名目で入隊、そして本国から帰還したアリスが入隊した。
愛妻家で3歳年上の61歳の妻と今も仲睦ましい様子を見せている。学生時代の互いがヤンチャをしていた時代に唯一叱ってくれた人、という昭和のような恋を50年間続けている愛らしい夫婦。妻にだけは頭が上がらない、と人の優しそうな可愛らしいおばあちゃんの写真を見せながら「愛想が良かったら、あれの若い時はお前に似てるんだよなぁ。」とアリスを眺める様子に、一同動揺を隠せない。
●間宮・H・ジャン
・身長173cm、体重56kg、年齢41歳、キメラ型
特殊視覚能力部付きの衛生班。どちらかと言うと肉体的処置ではなくEye’s能力等デバイス関連の技師で、彼等の身体を研究・記録のためにケアを行っているような無責任な技師。
ひょろひょろの身体に、前髪をバックリ明け無造作に伸びた艶のある長い髪のため後姿はよく女に間違われるが、正面は顎に無精ひげを生やした白フレーム眼鏡のひょろひょろ。作業中はバンダナを巻くか、ヘアバンド、一本縛りをしている事が多い。
趣味と実益を兼ねた趣味は脳科学と肉体改造、実益を兼ねない趣味は磁気記録媒体の収集及びその時代のミュージック(歌謡曲と呼ばれる時代のクラシック曲)の視聴。(ディスクやデータ容量の増大や、ICカードの普及により消滅した古代の記憶媒体「磁気」のコレクターと、そのタイプに最も多い“カセットテープ”の視聴。) 最先端と古代技術の両方に愛を持っている奇特な人物。
「細胞の無い物にあんまり興味はないのだけれど、無機物と有機物の融合は最高。」という独自の考え方を持ち、未だ未解明領域を持つ神秘的な生身を保ちたい欲求と、肉体の足りていない部分を機械で補う事でより高見を目指す自身のサイボーグ化へのジレンマでいつも思い悩んでいる。
(ウェインは入隊当初、骨折治療時に秘密裏に鎖骨にボルトを埋め込まれ、雨になるとボルトが軋む事から天気予知が出来るようになった。ジャン曰く「彼くらいの健康体を見たら、つい。」)
情緒が少し不安定な所があるが職人気質で、幼児退行の気が見られるギークに多い気質を持ち、純粋で真摯な心でEye’s能力に取り組んでいる。独特の毒気ある言い回しが特徴。
当時32歳にして、故東雲・クレアの研究を引き継ぎ、彼女が研究していた「Eye’s能力の応用技術」について研究開発している。東雲博士と同じく脳の分野を研究していたため、錯覚や処理の分野にも広い。今は義眼にしか発見されていない特殊能力について、他の研究者はもっぱら他の部位においての副作用への期待に躍起になる他の研究者について、独自の理論を持っている
「Eye’s能力も基本的には全て脳の錯覚に起因するから、全部位で起こる事は予想される。脳も身体機能も人は本来の機能のほとんどを生かせず暮らしているからね。入力装置の視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触感、それらを代替品に変える事で、今まで感知できなかったような物を感知出来るようになる事は、理論上可能だ。たぶん、いるんじゃないかなもう既に。でもそれってたぶん義体技術が起こる以前から本来人が持っていたもの、その再現性が無いから科学上居ない事になっていただけで、たぶん能力自体は物珍しいものじゃない。Eye’s能力は今ブームが起こっているけれど、たぶん観測レベルとしてはその現象が第六感だとかオカルトだとか言われていた頃と変わらないよ。だから、本質的にはEye’s能力について僕は正直どうでも良いと思っている。僕個人の見解としては、課題はどちらかと言うと出力系で、入力5チャンネルに対して、出力は今の所1チャンネルしかないのね、つまり喋る事、書く事、身振り手振りをする事、考えを表す電気信号の先の手段は全部筋肉で行ってるの。このまま入力系を強化すればするほど、出力が追い付かなくなるんじゃないかな。とどのつまり、1チャンネルの出力では追い付かなくなった挙句、出力チャンネルを脳と直繋ぎみたいな荒業をする結末に至り、結果肉体そのものの存在に疑問を抱くという本末転倒な未来を僕は想像するのね。
だから、一線は越えない。それはもう人じゃなくて、脳だ。不完全さによる均衡こそが人の本質だ、そうクレアが教えてくれた。だから僕は、人体実験をしたいのではなく、君たちが君たちらしくこの能力と向き合う事が出来るようにしながら、この現象を僕なりに理解したい。僕は天才だからね、数値化出来ない現象も証明してみせる。そのためにこんな火薬臭い屑組織の糞研究室で、ちっさいジジイの言いなりに成っている。少しは感謝してくれ。」
本人も義眼化希望を持っているが、Duffiy型という生まれつき珍しい血液型の持ち主であるため、改造技術を受ける事が出来ず、全身生身。研究所でクレアの部署に配属され、Eye’s能力の存在を疑っていた自分が、確かに彼女の死の直前彼女から、自分の心が見透かされていると思えるようなやり取りをした経験から、Eye’s能力の体験を経ていないにも関わらずその存在を信じている。そのため、僕が間違っていた、とクレアに告げたいとEye’s能力を自分自身が納得いく形で認めるために、研究を引き継いでいる。
●椚・T・征士郎
・身長193cm、体重83kg、年齢37歳、O型
マフィア「オメルタ」でアリス・マクスウェルの従者を務める構成員。アリスはボス直結のコンシリエーレ的立場に居る為、そこに所属している(元々は別のカポに従属している、所謂出向扱い。)
芯の固そうな黒い短髪にガタイの良い体躯、黒いスーツをノーネクタイで着る無口で寡黙な人物、主に白アリスの身の回りの世話と言う名の管理・護衛を務めており、常に彼女と共に行動をしている。あまり発言しない上に感情の起伏がないが、話は良く聞いており頭も悪くない。一度ウェインと対峙した際には近接格闘戦でウェインを上回り彼を退けたが、アリスが援護に到着し部が悪くなるや否や撤退する引き際の良さもあり、護衛役として優秀な人物。
元々はジャパニーズマフィアの幹部の二代目(若頭)となる人物であったが、先々代の時の震災で多くの組が他国のマフィアに乗っ取られる形となり、椚の所属する組も同じ形で半吸収、先代の代で正式に一つのカポに所属する形となった。しかし既に弱体化していた状態での合併となった為立場が弱く、また椚自身のコミュニケーション力の低さから、元々の役職から見れば不当な扱いでアリスの護衛の立場に付かされている、しかし当の本人はあまり気にしておらず、逆に地位にしがみ付く父親に嫌悪感を持っている節が見られる。
格闘術は柔道・空手をベースに、多勢戦でも有利な当身的な動きの取れる武術を使う。(ウェインのは、相手を確実に仕留めるためのシンプルで殺傷能力の高い軍隊格闘術がベースであるが、椚は古武術から成る近接格闘を基礎から学んでいるため、1対1の対決になると基礎の差が出る)
出生上実戦経験が多かったせいか、銃の性質も良く知っており銃撃戦も単身で乗り込み近接戦でねじ伏せられる実力を持つ。自身の使う銃は大雑把な散弾銃。(主に牽制用)以前、オメルタとFBIとの衝突の際にFBIからアリスを守り、アレックスの相棒を撃ち倒したのは椚だった。
家柄的にも通常の人とは異なる価値感を持ち、物腰柔らかで謙虚な様子と同列で鋼の冷徹さを持つ。しかしながら周りの人が金や地位に固執する中、自身の中に同じような執着や欲ない事を密かに憂き目に思っており、同じく周りの貪欲な人々に利用されそれを嘲笑うかのような様子のアリスに仕える事で、彼女を通し何かが見つけられないかと模索している。
彼女から未来予知をしようかと尋ねられた際に「それは、あまり興味がないので良いです。」と断っている。その代り、椚が何か用事は無いかと問いた際に「守って欲しい。」と告げられ、彼女を君主とし使える事を約束した。
白いアリスが一ノ宮アリスにコンタクトを取り、対決していくにあたり彼女を守る事と、アリスからの命令を実行する事への齟齬が出てきて彼女を止めれば良いのか、彼女を行かせてやるのが良いのかを考えていた。結果、白いアリスと一ノ宮アリスが対面する事で彼女自身が死ぬ運命を持っていると知らされていても、それでも向き合わなければ行けないと言ったアリスの意志を尊重し、乗り込んできた一ノ宮アリスを通す。
そのアリスを追ってきたウェインを足止めするため、再戦を果たす。その際に「俺は、何があっても、あの女を殺さないといけない。」と真に迫る迫力で純粋な怒りをぶつけたウェインに一寸遅れた所を、隙を伺っていたアレックスによって捕縛される。「命を賭す事とは、そこから逃れる為でも良いのだな。」とウェインの怒りに対し己が出来なかった事への後悔の念を独白する。
自分自身や白アリスが組織に利用されていると分かっており、彼女は既に自身の未来が良いものではないとあの日、クローンを作り自身の未来を見た時に分かっていても、そこから抜け出す事も出来ずに悪戯にもう一人の自身を羨むばかりであった。彼女が不幸になる事が分かっている中、本当に君主の事を思うのであれば彼女の手を取りこの場から逃げる事も出来たのではないかと思うちょっとした後悔、所詮は誰かの為に命を賭す覚悟なんて出来ていなかった自分に対する虚無感に、ウェインの怒りを見て気づく。恐らくこの事を知っていたから、と椚は自身の主としてのアリスを語る。ウェインの怒りは犯人に対して恨み怒りを持つ事で、現状を受け入れる事から逃れようとしている抵抗だった事を見抜き、事実から逃げることに命を賭し全てを投げ打って復讐を果たそうとする姿に、彼は羨ましさを募らせた。
逮捕後、アリスが亡くなった事を聞いた後、獄中にて自害。
●操作システム「ThresholD(スレショルド)」
・ThresholD (スレショルド)
Eye’s能力者のデータや刑事事件等の情報等が集められた、軍部のマザーコンピューター。
過去から現在に至るまで、データ化出来る全ての情報各隊から集められた事件の報告書や、行動記録、隊のプロフィール事件の情報等がスレショルドに集まっている。
情報を一同に集約する事から膨大なデータベース上から類似事件を引っ張り出して来たり、過去の例から作戦案や解決の糸口を自動吐出しするなど学習能力の高く、情報統制の良く出来たシステムである。
しかしながら、国家レベルの機密情報が含まれている事から、隊員各それぞれには厳重なアクセス権が割り振られており、各フォルダも個別の暗号化が行われており、プロテクトが厳重に掛けられているはずであった。
<続>
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■作者
筧 圭記著「Eye's Wide Shut.(第二稿)」より、抜粋。
二〇拾五年拾一月拾一日 - 送付。
■筧 圭記(かけい よしき)
アニメ脚本家。大学ではマルクス経済学を学び博士論文で賞を受賞した経緯の持ち主、その後劇場作品「-SKY FAKE-」に参画、脚本家デビューを果たす。
「プロダクション;Asterisk」にて脚本を担当しメディアミックス作品「トライアル」においてアニメ・ゲーム両方の脚本を手がける。その後、他制作会社制作の2.5次元特撮アニメ「アンチヒーローR」において、ベース脚本を執筆。
本原稿は第二稿目。一稿目では男性キャラクターのウェインが主人公の原案が作られていたが、途中で女性キャラクターの主人公に方針変化。その後世界観をより若者層向けへと方針転換するため「創世リライト」の原作者"古柴 コウ"が参加、「フラグメント-不可逆のカリキュレーション-」として、来春アニメとして2シーズン展開が発表された。
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