46 思考

((


         古代ギリシアの哲学者、プロタゴラスは、        人間は万物の尺度だと言った


         イマヌエル・カントにも通じる思想のように  、思う


       「人という形式」に着目したのが、    イマヌエル・カント


         カントは、真理は人間によって規定されるもの    であると言った


     ヒュームが言うとおり、      人間は経験から知識を得ている


     ジョン・ロックも、        白紙の心、タブラ・ラサと表現している


         でも、その経験の受け取り方には、        人間としての特有の形式があり、        それは、経験によらない先天的なものだと、      イマヌエル・カントは考えた


     どうして数学は、        多くの人間同士で通じ合えるのか


     カントはそこに、        人間に共通の、特有の形式を見た


         人間とモビル・ティーチャーが、        同じ形式を持っているとは限らない


     人間にとっての真実と、        モビル・ティーチャーにとっての真実は、   同じとは限らない


         メルロ・ポンティ的に言えば、身体図式が違う


         でも人間には、共通の形式があるはずだ


     共通の形式があるから、    人は分かり合える


           分かり合えるはずなんだ


         だから、共通の形式を持った人間に        対象を絞って、カントは思考を進めた


     守るべきは、人の尊厳


       では、目の前のこいつは何だ


         ニョイニウムと、人間の思考との関係性と、  その可能性


       それが研究テーマだと言った


         テーマが人の枠を超えるのは構わない


     カントの枠と違っても


         道具主義、プラグマティズムで考えれば、    有用なテーマだ


     しかし、その為の手段は何だ?


       ――他人の死による実現――


       ――人の尊厳を、貶めることによる実現――


       それは、許される事なのだろうか?


     それは僕にも跳ね返る


     なぜなら僕は、敵を殺した


       敵だって人間、その尊厳


     人の尊厳に重きを置いた、    かつてのヒューマン哲学者、    イマヌエル・カント


         彼をベースにする、カントム先生


     その生徒である僕は、      敵の尊厳を、尊重しただろうか?


         尊厳を理由に、教授であるこいつを、      否定して良いのか?


     教授――学者――


     父さんは優しかった


     数学にも哲学にも詳しくて、        団欒の時間を、沢山取ってくれた


       僕は父さんが大好きだった


       僕が認識する、学者のイデア


         哲学者プラトンが語った、この世界ではない、        イデア界にある「究極の理想の存在」


       人間は、現実世界の物を見る時、      その物のイデアを同時に見て、        比較しているのだと、プラトンは言った


       モラウ・ボウがいつも握っている  ニョイ・ボウ


         僕がそれを見る時、「棒」のイデアを同時に見て、        現実のニョイ・ボウと比較している


     でも、プラトンの弟子のアリストテレスは言った


     イデアなど本当にあるのか、    どうやって確かめるのか、   何の役に立つのか、        無用な説明を増やしているだけではないかと


     でも、僕にとっての、    「学者」のイデアは、    僕の、すぐ近くにあった


   それは、父さん


     だから僕は、哲学を学び始めた


     父さんみたいな、    暖かい心を持った学者に、    なりたかったから


         では、目の前のこいつは、一体何だ


       僕の持つ、教授のイデアとは、    全く別の存在


))


 ―続く―

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