42 提案
オーイ教授が乗る、たてがみを持つ灰色の
その突撃スピードは凄まじいものだった。
あっという間に、プティの操る
そして
ニュススッ!
ギョンが持つ
「くっ! 応急処置!」
『承知した』
ロックウェルは、攻撃を受けた左肩から先を、強制分離。
距離を取り、左腕部の爆発から、からくも逃れるロックウェル。
一方のギョンは、左腕の丸盾で、爆発のダメージを難なく防いでいた。
「はぁ、はぁ」
命の危機による汗。そして、動悸がプティを襲う。
そこに、追い討ちがかかる。
機体の左後方へと隠されるギョンの丸盾。左肩を後ろにさげる反動で、前に出る右肩からニュッと水平に延び行く
側方から割って入ったデカルトンが、ワレモノ・ブレードでそれを叩き落とす。軌道が逸れたエネルギー弾は虚空の彼方へ。
シューは、思わず、黒髪の後輩を助けていた。
「大丈夫か! プティ!」
「せ、せんぱい!」
プティの目にはうっすらと涙が。
シューの目には、怒りの炎が。
しかし、その先の展開も読めるだけに、シューのその表情には、困惑の色も混じっていた。
<大人しく
そこに……
<ん?>
ギョンは丸盾の角度を変え、
飛来したア・プリオリ・ライフルを難なく受けきる。
<――3対1か。それ位でなければ、良いデータは取れないかもな……>
考え事をするように、教授。
「命は、そんな事に使って良いものじゃない!」
常識的な事を言う、コムロ少年。
『人の尊厳を重視する。それがイマヌエル・カントの思索の根源』
カントム先生が、これに追随する。
◆
シューは迷った。
力は不条理。
自分の力は教授に対して足りない。
どうすれば良い?
屈服すれば良いのか? ごまかせばいいのか?
プティの
しかし、それでいいのか?
力の足りない状態で抗ってもなんの意味も無い。
しかし、教授が操るギョンはもう、こちらに向けて攻撃の構えをしている――。
(ええい!)
葛藤の末、シュー・トミトクルは覚悟を決めた。
「フロンデイアの
シューが通信機で呼びかける。
「一時休戦だ! この、ふざけた教授を退けたい! 君の力を貸してくれ!」
◆
――敵からの提案を受けた少年、コムロ・テツは困惑した。
今、自分がするべき事は、このまま敵中を脱出し、幼馴染の少女モラウが待つ、戦艦ハコビ・タクナイに帰還すること。
しかしこちらは、すでに単機。情勢が「2対2」から「1対3」へと悪化した上に、最後に現れた
まともにやって、勝てる状況でも逃げられる状況でもなかった。
しかし、理由はともあれ敵が「内輪もめ」している。この機に乗じて、逃げ切れるのではないか?
その可能性は五分五分。いや、四分六分ぐらいか?
こちらが逃げる素振りを見せた瞬間、あの、たてがみの
であれば。
「――取らなくちゃな。ヌレギヌさんの、かたきは」
コムロは怒っていた。
「邪魔だ」という、そんな理由で、ヌレギヌ青年をコムロの目の前で殺した、たてがみの
コムロは、『ワレモノ、注意』と貼られた
「――提案を受諾します。今ここで消えるべきは、あの、ギョンという奴です」
<話はまとまったか? ――では、学ばせてもらおうかな>
ギョンに乗る「エリート中のエリートを統べる教授」は、落ち着き払って、行動を開始した。
―続く―
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