38 横槍
2対2の銃撃戦。
互いの遠距離武器の軌跡が、「ねじれの位置」ですれ違う。
それぞれ、相手の攻撃を避けつつ、さらに銃撃で応戦する。
――
中肉中背の青年、ヌレギヌが駆る、藍地に稲妻模様の
かつてのヒューマン哲学者「デューイ」をベースにしたこの
デュイエモンの創造的知性をもって、敵への効率的な対処方法についての仮説を立て、それを試行錯誤することにより、検証し、徐々にスペックアップを図る。
敵であるリバタニアの言葉で表現すれば、「PDCAサイクル」と言われる機関を、ぐるぐると回す。
「敵味方のスペックがトータルでほぼ近似、数も同数ならば、コツは、さっさと敵を減らして、数的優位に立つことだ、コムロ君」
補給基地でのクレーンゲームと同様、自らが見出してきたコツを披露する、ヌレギヌ。
「どちらを狙いますか!」
「そうだなあ。あの、『ワレモノ注意』ってシールが、貼ってあるやつからだ」
「了解しました!」
シューが乗る
「どうやら、そいつの方が上位っぽいからな」
ヌレギヌは、
威力はともかく、デカルトンの射撃と回避運動の方が、ロックウェルの機動よりも、「経験による練り」を感じさせたのだ。
また、デカルトンは、ロックウェルを庇うようにやや前方に位置取りをし、援護射撃を多くしていた。
このような場合、デカルトンという護衛がついたままの
護衛を倒すことができれば、その先は2対1だ。雌雄は決するだろう。
その理は、証拠立てたものではなかった。
ボサボサ髪のヌレギヌ青年の、これまでの試行錯誤の積み重ねが、その判断をさせた。
その理で、要は、勝てれば良い。
――Aを信じることが人間にとって有用性があるならば、Aの真偽によらず、Aは真理である。
それが、かつてのヒューマン哲学者「デューイ」が掲げた「道具主義」。
哲学思想を、問題解決の為の道具として使う考え方である。
ヌレギヌが駆る
リバタニア軍の2機の
一方のフロンデイア軍は、カントムと、試行タイプの
急ごしらえのユニゾンではあった。しかし、積み重ねた経験と試行錯誤を活かしたヌレギヌ+デュイエモンの機動に、コムロ+カントムが「合わせる」形で、攻防のバランスを取っていた。
「コムロ君、スイッチ!」
「了解です!」
クレーンゲームでUFOキャッチャーが横にシフトするように、カントムとデュイエモンは互いの位置をシフト。
思考のニョイニウムへの蓄積と、その出力――射撃武器としてあるいは防御や回避として――を交互に行っていた。
「敵も……やるな!」
言わば、好敵手との熱戦。
――乱戦では、他の
「せんぱい! 3時の方向、来ます!」
「俺が止める。プティは前方の敵のケア!」
「朝飯前です! せんぱい!」
「3時はおやつだろ!」
『15時とおやつの因果関係は疑わしいので
『経験から生ずる、15時という
互いに連携によって戦線を維持する、2対2のモビル・ティーチャー達。
――
――
しかしながら、徐々に、デュイエモンのパワーダウンが見え始めていた。残り3機の
「チャンスだぞ、プティ」
「はい!」
「なんとな!」
狙い撃ちにあったデュイエモンと、その
しかし、デュイエモンが態勢を立て直す前に、また、コムロとカントムが援護する前に、デカルトンとロックウェルによる追撃が――
――
――
ドドオオオオオオオオオオオオ!
突如、黒い帯が、知恵を持つムチのように延び、宇宙空間の、瞬く星の一部を遮った。
――デカルトンやロックウェルの、さらに背後から。
「なっ!」
驚くコムロ。
「なんだよ! 今の!」
ヌレギヌの、コーシ君のような笑みが凍りついた。
「味方の一撃か!?」
コンソールで確認する、シュー。
ドバアアアアアアアアアア!
「うわうわうっ」
2つ目の黒い帯に当てられ、左腕の一部を損傷したのは、プティが駆る
「プティ! 大丈夫か!」
「どうにか! せんぱい!」
機体の爆発には至らない。
「戦闘中の味方を、巻き込むとは!」
憤る、シュー・トミトクル。
凄まじい出力が、その黒い帯には込められていた。
超長距離からソレを放った存在。
その光点が、4機の
―続く―
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