37 協奏
『
「
『その通りだ、わが
「生得観念は、本当に無いのでしょうか? 先生」
『例えば、子供は生まれたときから言葉を理解できるか? それを考えれば明らかであろう』
「道徳とかは、子供の時からあるのでは?」
『子供は時に残酷な仕打ちをする。動物を無為に殺しもする。また、道徳は、人によって変わるものであり、事前に定義できるものでもない』
――
――
「プティはロックウェルが好む議論を、上手く引き出して戦っている。見事な思考エネルギー入力だ!」
シューは、後輩
「デカルトン先生、ワレモノ・ライフル!」
『ライフルを、どうするのだ?』
「ええい! ライフルを構えて、近づく敵に発射!」
『承知した』
相変わらず、コミュニケーション・エラーを起こす、デカルトン先生とシュー・トミトクル。
それは、「出力」と「操作性」のトレードオフ関係にある。
しかし、予め決めた通りに操作しようとすると、今度は
その二律背反を、黒髪の後輩
すなわち、
その質問に対し、
一方、
一見、両立した方法論。
まだ、知識や経験の少ない「優秀な新米
言わば「輝いている」状態のプティ+ロックウェルに加えて、経験を積んだシュー+デカルトンがやや前方に出て、防御と援護に回っている。
「近寄れない……!」
いかなコムロとカントムとて、追い込まれるのは必定だった。
――
「よし、いい調子だぞプティ!」
「もっと、色んな事を知りたいです。私は!」
プティの眼が輝く。
「くそっ、手ごわいっ!」
2対1の劣勢に、焦るコムロ。
「プティ! 今だ!」
思考を用いた戦闘技術において、プティに対して一日の長があるシューが、タイミングを測る。
「はいっ! せんぱい!」
2体の敵に対し照準を定めきれないカントムを、デカルトンとロックウェルによる十字砲火が襲った。
「ぐわうわうわう!」
十字砲火に襲われたカントムは、一方の砲撃をア・プリオリ・ブレードで撃墜成功。しかし、もう一方を被弾。
『ヤバイという概念』
人間とは身体図式の異なる「金属の塊」であるカントムは、その概念を理解していたようである。
カントムとスペック的に近似である敵が2体だ。
しかも、その2体の
(なにか、状況を打開する方法はないか?)
先の戦闘で敵軍右翼を各個撃破した際、赤髪の男が操る
そこに、
ドッチュウウウウウ!
――
ドッチュウウウウウ!
遠々距離から連続で放たれた、二条のライフル。
「おおっと!」
「わっ!」
追い打ちの機先を制されたシューと、後輩のプティ。
カントムの後ろから近づく光点。
フロンデイア軍の、
宇宙に溶け込むような藍色の機体には、その肩部分に黄色い稲妻の模様があしらわれている。
藍色に稲妻模様の機体は、制動スラスターをかけてカントムの横に並び、リバタニア軍の2機の
「大丈夫かな?」
藍色の
(この声――)
コムロはそう思いつつ、口に出しては、
「逃げてください。この敵は強いです」
と返した。
「俺も強いよー? って、聞いたことある声だなぁ」
緊張感の無い声が、帰ってくる。
「……もしかして、補給基地での?」
「――ああ! クレーンゲームの時の!
藍色の機体に搭乗した青年、ヌレギヌは笑った。
テレビ番組「デモクリトスイッチ」の人気キャラクター、「コーシ君」のような笑い声。
「ええ。コムロって言います」
「そっか。俺はヌレギヌ。って、さて――」
少し遅れた、互いの自己紹介。
ボサボサの髪を
そして青年は、コーシ君のように笑った。
「2対2、と行こうか?」
―続く―
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