27 速度
『
「
「
『
『
「
「
『
『そもそも、
思考と、身体を駆使した死闘。
そこに割って入り得る者は、
◆
刃をぶつけ合いながら
議論をぶつけ合いながら
紅潮した赤髪の青年から、徐々に笑みが消えていく。
「……くっ!」
「なにっ!」
驚きの声が、ヘーゲイルのコックピット内に響く。
格闘による攻防が進む毎に、鋭さを増す、カントムの反応。
「……どういうことだ!」
困惑の表情を浮かべながら、アカボスはヘーゲイルとの問答。3連突きを放つ。
しゃぁっ! しゃぁっ! しゃぁ
これを悠々とかわすカントム。ヘーゲイルの、
ジグザグ機動に入ろうとするヘーゲイルへの、カントムによるカウンターの一撃。
「くうっ!」
その表情から余裕が消えたアカボスは、ついに、ヘーゲイルを後ろに向かって跳躍させた。
刹那、彼我の距離が開く。
――アカボスの視界に入ったもの。
それは、純粋理性を示す「青」から、「青紫」へと変化した、棒状物体。
「なっ!」
数刻前をなぞるように
ソレが通過する体積が最小になるように
一直線に突き出されたのは
カントムが握る、青紫のブレード
「赤紫」の
『
やはり、「やられた」という概念を理解していた、ヘーゲイル。
「な、なぜ……」
アカボスの表情は凍りついていた。
そして――
――無音――静寂――ドッ
「赤髪の」アカボスの視界が。
宇宙が。
白く、塗りつぶされた。
――
――
「……っ、ふうぅぅ」
緊張で固められた息をまとめて吐き出す、コムロ=テツ少年。
『学びの多い対象であった』
低い癒し系ヴォイスで、カントム。
「厳しい相手でした……カントム先生」
コムロの緊張を示す前傾姿勢が、リクライニングへと変化する。コムロがシートに体をあずけると、それに感応してシートの硬度が変化。「やわらかふかふか」がコムロを受け止めた。
「――すごい……人だったな……」
能動的な意志と、力への希求。敵の
――カントムも、ヘーゲイルも、人間の思考を糧とする金属「ニョイニウム」で形成されている。
共に、優秀な
何が異なったのか?
それは、相手の思考を吸収する力。
すなわち、
――
戦いの、極めて短い時間。
「赤神の」アカボスは、自らが練り上げた高機動戦法を、敵に全力でぶつけた。
そしてコムロは、自己の不利を悟った。
自己に足りない点を悟った。
相手の攻撃の本質を、コムロが
(思考力だけではだめなのか!?)
他者からの刺激は疑問を生じさせる。
疑問が与えられれば、解決法の模索へと思考の舵が向く。
その一連のスピードにおいて、コムロはアカボスを、完全に凌駕していた。
そして、2体の
劣勢から膠着へ
膠着から優勢へ
そして――
優勢から圧倒へと
導いたのだった。
白い爆発光が収まった地点には、
――フロンデイアの突進を阻む、強力な敵の消失。
戦況が動きだす。
フロンデイア軍の進撃速度が上がる。
そして、リバタニア右翼集団を打ち破りつつある。
その後背には広大な宇宙空間。
事態は、フロンデイア軍の目論見に従い、動き始めたかにみえた――。
―続く―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます