第3話 灰田と高森 その2
「あれ、みんな引いたよね」
「あれは引いてたなー…、急だったからだろうなー…」
「うん、よく分かんないけど、滑りまくった芸人みたいだったよ」
愛乃は遠い目をして、辛かった時代を思い出す。
「あたしもポリシーでさ、ずっと黒髪で通したかったんだけど」
「でも何もあそこまでやんなくても良かったのに」
「いや、もう学校行かないか染めるかって位に追い詰められていたからさ」
予想を超えた恥ずかしがり屋だな、と可南子は思う。でも逆に銀髪は一部女の子達からの受けが良くて、幾つかファンクラブを作るほど静かに人気が出ていたのだが、流石に「これで普通の生活が送れる!」と安心して笑う彼女を見ると話す事が出来なかった。ほとんどの男子はいきなりの愛乃の銀髪に引き潮のように去っていったけど、気にしなかった男子もいた。蒼井と安田とか。
「今は黒髪に戻ったけど。でも、また凄いよね……。そのピアス」
「いやあ、やっぱりオシャレには気を使いたいと言うかさぁ」
愛乃の耳にごってりとしたピアスが刺さっているのを見て可南子は、何でこの子は一々極端から極端へ走るのだろう……と呆れる。ショートカットなので、一層ピアスの存在が強く感じる。でもそれはオシャレの為と言うよりも、「魔除けの銀髪」の機能を果たす為だと、当然幼馴染は気付いている。
「でも黒髪に戻したのってさ、何か原因あるんでしょ?」
「いや、ないよ。ないってば。ないんじゃないか」
「ねえ、ラブちゃんさ……。あたしそこまでウソが下手な人、本当に初めて見た」
「ウソじゃないって!」
愛乃は慌てて否定しながら、視線を蒼井達の方へ向ける。
蒼井の机の上には猫だか、キツネだか分からないぬいぐるみが置かれていた。また下らない話をしているようだ。
愛乃は、蒼井に恋に落ちた中学3年生の時を思い出す。
蒼井くんと安田くん 青山テールナー @inutokasukidesu
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