絢道さんは幽霊が見える。

スイム

第1話 絢道さんは幽霊が見える。


絢道さんは普段、授業中は突っ伏して寝ている。


だが今日の彼女は不思議と起きていた、ぽけーっと何かを見ている。


彼女の目線の先には・・・田中君。



田中君は謂わば、女子に人気のイケメン。


スポーツ万能で頭も良い・・・そんなどこにでも居る様で居ない人。


その田中君をここ数日、絢道さんはじーっと眺めている。



『最近、視線を感じると思って振り返ると絢道が見てるんだよ。』



『なんだそれ?』



『お前に気があるんじゃねぇの?絢道可愛いし付き合えば?』



『でも絢道ってさ・・・』



クラスの男子が田中君を中心に好き勝手に話し合う最中。


特に気にした様子も無く、時たま田中君を眺める絢道さん。



それからさらに数日が過ぎたある日。


絢道さんが田中君に、



「放課後、話があるから体育館裏に来てね。」



それだけ言うと何事も無かったように絢道さんは席に戻った。


尚、この発言をしたのは昼休みが始まった直後の事。


急に立った思ったら真っ直ぐ田中君の前まで歩き、突然言い放った。



当然、クラスはざわめき・・・当の田中君はポカンと呆けていた。



――――



放課後。



呼び出された田中君、そして呼び出した絢道さん。


不思議と何故かギャラリーは無く、二人の間に静寂が走る。



田中君が何か言おうと口を開くと



「田中君、事故や病気に気をつけて、それじゃ。」



絢道さんは自分の言いたいことを言うと背を向けて帰ろうとする。



『え?それだけか?告白とか付き合ってとかじゃなくて?』



「はぁ?なんで私が田中君と付き合うの?」



田中君のプライドかはたまた余裕からの言葉を


絢道さんはバッサリ切り捨て、気にせず帰っていった。



―――――



その数日後、田中君は入院した。


彼は事故に巻き込まれ、足の骨を骨折。

お見舞いに来た彼女が他の女の子といる場面に出会い、二股が発覚。

テストの答案を盗みカンニングをしていたことがばれた。

等、不祥事が表沙汰になった。


完璧に見えた彼は、ツギハギだらけの人形だったのだ。

次学校に来るときは、白い目で見られるだろう。


一方、彼に助言をした絢道さん曰く。


「死人に口無し、喋らない相手の意図を悟るなんて無理がある。」


「ただしかめっ面してたから怨みでもあんのかなって思っただけ。」


「でも、ここまでとは思わなかったかな。」




絢道さんは幽霊が見える。


だけど、幽霊の声は届かない。



そして、授業中・・・いつものように机に突っ伏していた。



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