ただ、助けたかっただけなのに(お題:免れたいたずら 必須要素:タイトル「ただ、助けたかっただけなのに」で書く)
ここいらはいたずら小僧の通学路。時折へんなイタズラが仕掛けられている時がある。
例えばアスファルトの轢かれていない道には、よく落とし穴がある。今日も横道に隠された落とし穴を見つけた。
人が全く通らない横道だから大丈夫だろう、とも思ったが、ふと見ると女性が落とし穴に近づいていた。僕は慌てて止める。
「そこに落とし穴がありますよ、気をつけてください」
「え、はぁ」
でも彼女は怪訝な顔をして、落とし穴を避けていった。お礼の一つも残さず。
あぁ、僕はただ、助けたかっただけなのに。
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ここいらはいたずら小僧の通学路。時折へんなイタズラが仕掛けられている時がある。
次の日に通学路に出ると、道の途中が不自然に盛り上がっている。恐らくあそこに犬の糞でも埋めているのだろう。
ふと見ると、昨日の女性が犬の糞に近づいていた。僕は慌てて止める。
「そこに犬の糞がありますよ、気をつけてください」
「えぇっ。なんなのあなた」
でも彼女は嫌そうな顔をして、犬の糞を避けて走った。お礼の一つも残さず。
あぁ、僕はただ、助けたかっただけなのに。
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ここいらはいたずら小僧の通学路。時折へんなイタズラが仕掛けられている時がある。
道に出ると、街路樹の木の上に悪ガキたちがいた。恐らく木を揺さぶって、通行者の邪魔をする気だろう。
ふと見ると、この間の女性がその道を横切ろうとしていた。僕は慌てて止める。
「そこの木に悪ガキが待ち構えていますよ、気をつけてください」
「いやあっ」
でも彼女は怯えた顔をして、反対方向へと逃げるように走った。お礼の一つも残さず。
あぁ、僕はただ、助けたかっただけなのに。
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ここいらはいたずら小僧の通学路。少しずつイタズラは減ってきている。
道に出ると、電灯が壊れていた。きっとさっき通っていた悪ガキたちが壊したのだろう。後でちゃんとお仕置きしないといけないな。
ふと見ると、いつも女性がこちらの道と向かってきた。僕は慌てて止める。
「この道は暗いですよ。気をつけてください」
「きゃああっ。お巡りさあんっ」
でも彼女は悲鳴を上げ、逃げ去ろうとした。だが僕も女性に言いたいことがあったので、腕をつかんで止める。
「大声なんて、近所の迷惑ですよ。やめてください」
「なんなのよあんた。ずっと私についてきて。警察呼ぶわよ」
「事件も無いのに、警察に迷惑かけちゃ駄目ですよ」
「離して! このストーカー!」
彼女は僕の頬をビンタした。そして一目散に逃げる。お礼の一つも残さず。
あぁ、僕はただ、助けたかっただけなのに。
……これは彼らのようにちゃんとお仕置きをしないといけないな。
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ここいらはいたずら小僧の通学路だった道。最近はあまりイタズラはされてない。
今日は人通りは少ないなと思った矢先、二人組の女子高生がやって来た。
「ねぇねぇ、知ってる。ここ最近の失踪事件」
「うん、近くに住む男子小学生が次々失踪してるらしいわね。みんないたずらっ子だったって以外は共通点が無いんだっけ」
「それがさ、最近OLも失踪したらしいわよ」
「えっ、女性も被害に遭ったの? 本格的に怖くなってきたなぁ……」
「大丈夫大丈夫。私、ここいらの地理は得意だから逃げるのも得意だよ。ほら、この横道とかは絶好の逃げ道でさぁ」
彼女たちは人が全く通らない横道に入ろうとしていた。そこにはあの落とし穴が残っている。
あの穴に捨てた人骨で服を汚してはいけないと思い、僕は慌てて止める。
「そこに落とし穴がありますよ、気をつけてください」
「え、はぁ」
でも彼女達は怪訝な顔をして、落とし穴を避けていった。お礼の一つも残さず。
あぁ、僕はただ、助けたかっただけなのに。
音速の短編集 momoyama @momoyama
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