「この病室を出る頃には」
「おっつー」
「おう、妹よ。色々とありがとうな」
「んでんで、首尾はどうだったー」
「上々。まぁ悪くない人生だったよ」
「あちゃー、もう人生語っちゃいますかー」
「ま、そういうものに思いを馳せるくらいには貴重な体験だったよ。お前も奉納舞さ、観にくれば良かったのに」
「データは全部、手元にあるものー。しばらくは解析で暇潰しできそー」
「そうか、それは何よりだ」
「んー」
「で、だな。ずっと言いそびれていたんだが、お前に伝えなくちゃいけないことがある」
「どうぞー」
「母さんから手紙を預かってる。最期の直筆だ」
「えー」
「これだ。曇りガラスの下、通すぞ」
「べつにスキャンしてメール添付とかでいいのにー」
「良いわけあるか。それに俺が見ていいものでもないだろう。で、なんて書いてある」
「えー読まないよー」
「いやいやいや。それはダメだろうさ。人間として」
「じゃあ人間やめるー」
「お前な」
「分かったー。お兄ぃの顔に免じてねー、封を切るよー。この病室を出る頃には」
「……はぁ。本当だな」
「うむー」
「よし、信じてるぞ。じゃあな、ちょっと用事あるから今日はここまでだ。今度、学園祭があってさ。また来る」
「まことにー? なんだかんだでー、ここにも明確な用事ないと来ないよねー、お兄ぃってー」
「うぐ。じゃあ何かしら用事かこつけて来きてやるから、震えて待ってろ」
「がくがくぶるぶるー」
「じゃあ、また」
「…………」
「また、面白い物語を見つけてきてねー。お兄ぃ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます