第2話

汗をかいたラムネの青緑の瓶の中から見る世界はいつも歪んで見えます。

けれどそれがとても、本当にとてもきれいで。


例えば夏の日の光だったり、例えば朝日だったり、例えば縁日の屋台の電球がとてもきれいで。


あたしは瓶の中からいつもそれを眺めています。目がチカチカするけれど目をとにかく細めて、細めて。

閉じないように一瞬のきらめきを逃さないように。


四季はまるで人生のようです。

春に始まり冬に終わる。

そしてまた春に産まれ変わる。


あたしが眩しいと感じる光の数々は夏に集約されています。

春も冬もあたしを手に取ってくれる人は少なくて、夏が一番あたしを人々は欲するからです。


熱気を帯びた活動的になる夏こそ、まるで人生の一番盛り上がる季節だと思いませんか。

そんな時期にあたしを手に取る人々はみんな、大人も子供も笑顔で、滴る汗もきらきらと光っていて。


そんな彼らの一部に溶け込めることがあたしは何よりうれしい。



でも。

あなたがもし夏を思い出したいのなら、もし、一瞬でも思い出したいのなら、どうかあたしを手に取ってください。


あたしは一年中、瓶の底できらきらと輝く世界をただじっと見つめているのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラムネの瓶の底~つくのきひめの言葉の欠片たち~ 竹野きひめ @tsukunokihime

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ