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「ちっ! こちとら毎日の仕入れや仕込みで寝る暇もねえってんだ、優雅に音楽なんてやってられっか! あいつらどうせ今日だっておれが仕入れた魚を昼飯に食うんだぜ!? 誰のおかげでうめぇ魚が食えてると思ってんだ、畜生!」
警官の姿が見えなくなったことを確認し、そう毒づいた魚屋の主人に、果物屋の女性がまあまあと宥めるように肩を叩いた。
「最近どうも様子が変だよねえ。前はリスタを強制されることなんてなかったのに……」
そう溜息をついた女主人に、魚屋が吐き捨てるように言う。
「無償でリュール作りの人手を増やそうって魂胆なんだろ。
本当ならヴィルトーやリューリスの仕事のはずなのに、なんでおれらがとばっちり食わなきゃならねえのかね」
魚屋は盛大に鼻を鳴らし、と同時にカールとルイの存在に気づいたようで、これまた大仰に顔を顰めた。
怒りが飛び火してきては困ると、彼らは急いでその場から離れる。
本当は気のいい人物なのだが、ここ最近はずっと機嫌が悪い。
「リスタをサボっただけで警官が出てくるのか、厳しくなったな。
ルイ、お前もいい加減に……」
そこまで言いかけ、ルイが自分の顔を見ていないことに気づいたカールはむっと口をつぐんだ。
自分がどれだけ危険な秘密を抱えているのか、わかっているんだろうか。こいつは。
花屋の女性の歌声に嬉しそうな顔をみせるルイを見ながら、カールは人知れず深い溜息をついた。
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