1-3

「ひっどい頭だなそれにしても……もう少しなんとかならなかったのかよ」


ようやく追いついてきたルイのぼさぼさ頭を一瞥し、カールが再び呆れた声を出す。

彼よりも頭一つ分背の高いルイは、その猫背気味の背中をますます丸くした。

くるくるとしたくせっ毛を必死で撫でつけるが、あまり効果はみられないようだ。


「これでもくしを入れたんだよ。でもすぐに元に戻っちゃって。

もういっそのこと全部切っちゃおうかな……」


「坊主はやめとけ。絶対似合わないから」


「冗談だよ、しないって」


他愛のない話をしながら歩いていると、カールがふと何かに気づき立ち止まった。

ルイが首を傾げながら彼の視線の先を追うと、魚屋の前に警官が2人立っている。

大して体格が良いわけでもないのに、あの制服を見かけるだけでぴりっとした緊張が走るのだから、不思議なものだ。

後ろ姿しか見えず何を言っているのかはわからなかったが、魚屋の主人がぺこぺこと頭を下げているところをみると、彼が何かしでかしたのであろうことは想像がついた。


「なんか、最近リスタの時間をとってなかったことがばれたらしいぜ」


カールの説明を聞き、ルイは気の毒そうに魚屋を見やった。

リスタは最近定められた国民の義務の1つで、『1日の間に、最低一曲は決められた曲を歌う、または奏でる時間を設けること』という内容のものだ。

自分たちのように学生である分には全く苦にならない規則だが、音楽とは関係のない商売をして暮らしているような人々には煩わしいことこの上ないものであろう。


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