再び出会うことで

ベットの上で目を覚ました。

辺りを見渡すと、いつもと変わらない部屋の風景が見えた。

時計をみると、7時2分。

そろそろ、朝食か。

パジャマを脱ぎ、制服に着替える。脱いだものはまとめて、下の洗濯カゴに入れなければならない。

パジャマと、鞄を手に部屋をでた。


あくびをかきながら部屋をでると、同時に隣の久も出てきた。


「ぅぃ、みにゃと。」


「ねむそうだな」


「おまぇもな」


お互いにあくびしながらの挨拶は良くする。

階段に向かって歩き出す。


「そういえば、湊。昨日はどうだった?」


「どうもねーよ」


「そうか」


「あっ、あんたらおはよう」


下から洗い場に向かって足を向けている、幸来が見上げていた。


「おはよう」


「顔でも洗ってきたら?」


「そうする」


そう言い返すと、洗い場に向かって歩き出した。

俺達もその後ろをついていくかのように歩いていく。

洗い場につくと、手に持っていた洗濯物を下ろした。3人分積み重なった洗濯物は、山になっていた。


「おはょぅごじゃいます」


後ろからナオちゃんが、あくびをしながら挨拶。


「おはよう」


かけるように声がかかった。


「みんなーご飯だよー」


楓さんの声がした。


「洗濯物の処理だけしていくわ」


洗濯の当番である幸来が残り、全員食堂へ向かった。

食堂へ入ると、楓さんが朝食を並べていた。

席につき、隣に座った久と話をした。

幸来が少し慌てて席に着くと、いつもの朝食風景だ。


「じゃ、みんな。いただきます」


「いただきます」


今日の朝食は、食パン イチゴジャム+マーガリン レタス ウインナー 目玉半熟焼き


「そういえぱ、湊くん。

昨日、外に出た?」


「いえ、出てませんけど」


「えっ、じゃー昨日準備してた荷物は?」


久がそう言うと、俺は首をかしげた。


「何の話だ?」


俺がそう言うと、久は驚いた顔をした。


「昨日俺は、飯を食い終わったあと寝たが?」


「そう、言いがかりしてごめんね」


「いえ」


「にしても、前科があるやつは大変よね」


幸来が煽るように言う。


「前科ってなんです?」


ナオちゃんも興味を持ってしまった。


「その話はいいだろ」


「ええー、聞きたいです」


「そんなにはしゃがないの」


楓さんの一言でその場がおさまった。

そして食べ終わると食器を片付ける。


部屋にもどって、学校に向かう準備をする。

鞄の中を確認すると、昨日のうちに用意した今日の準備ができていた。

服を脱ぎ、制服へと着替える。

いつもと変わらない、朝だ。

だが、久の言っていた準備ってなんだったのかわからない。

さぁ、学校にいかなきゃ。

8時20分



校門。

ここにたった時、ここから見える理科室を見た。

なんで、見たのかはわからない。

俺は、1歩歩き出す。

風が、吹く。

一人の女が、俺の横を横切った。

そして思った。

どっかで見たことあるような。

・・・。


昼休み。

携帯を眺める。

食堂か購買に行かなければ、飯はない。

腹が減ってるわけじゃない。

あの子が気になって。しょうがない。

どこかで会ったこと、ある気がしてならない。

そして、あの記事を目にした。


石山治高校に出る幽霊


俺は、何かを忘れている気がする。

昨日俺は、飯を食い終わったあと部屋に戻って明日の準備をして、そのまま寝たはずなんだ。

この行動の中に何か食い違いが起きている。

久の言う昨日。今朝にすれ違ったあの女生徒。

そして、俺の記憶。


記憶?


俺が知っていて、解明できてない都市伝説。

この中に記憶について関連を持つ内容は、「記憶を操作してそれを仕事としている学生がいる」というもの。

まさかとは思うけど、俺操作された?

そんな、わけ。

都市伝説と遭遇なんて、そんなあることじゃない。

ってことは、あの女性徒も・・・。

いや、会って確かめるべき。

てか、どのクラスだ。さっぱり分からん。


キーンコーンカーンコーン


チャイムがなる。

勝負は放課後か。


放課後、とっとと荷物をまとめて校門へ向かった。

校門で待っていると、多くの生徒が出てきた。

この中から、例の女生徒を探す。

特徴みたいのがあればいいけど、髪が長くて結んでないくらいしか。

そういえば、左頬あたりにほくろがあったような。

そう思いながら生徒を見ていると、歩いてる生徒の中から目が合った奴がいた。幸来だ。


「あんた、何してんの?」


近寄ってきた。


「面倒とか思ったでしょ」


幸来にそういわれると、苦笑いで顔をそらした。 単純に図星。


「で、何してんの?」


「人探し」


「誰?」


「わかんない」


「わからないのに探してるの?」


「あぁ」


「変なの」


そう言い残して帰っていった。

俺も人探しをしよう。

生徒の中を見ていると、気づけば生徒はいなくなっていた。

俺も帰るか。


って、収穫なしかよ。

誰かわからない以上、収穫もしようがないか。

くっそ。

昨日に関する情報が何一つないのが、全ての敗因につながってる気がしてならない。

俺は何を忘れている。

携帯を眺める。

そして、あの項目。

俺は、これについて何らかの事柄を忘れている。

そして、あの女子生徒。

寝転んで携帯を眺めていると21時になっていた。

飯を食い終わったあと、無気力が体を包む感覚。俺の好奇心が、何かに止められている。

頭を書きながら携帯をスクロールした。

俺は、携帯を見た。

あのサイトの更新はない。

何かないのか。

そして、今朝理科室を見たことを思い出した。

なんで見たんだ?

俺は、寮を脱出した。





学校についた。

今朝と同じように理科室を見た。

青い灯りがついていた。

誰かいる。

走った。

職員下駄箱の出入口から侵入し、階段を急いで駆け上がる。

そして、理科室についた時。

俺の息は上がっていた。

明かりがついている理科室の戸を開ける。

そこには、今朝すれ違った女生徒がいた。


「誰ですか?」


びっくりした女の子が椅子から立ち戦闘態勢のようなポーズをとっている。


「って、昨日の」


昨日?


「あっ、言っちゃった」


頭の底から記憶が蘇ってくる。

俺は昨日、21時に部屋を出た。

石山治高校の理科室の幽霊が何者なのかを知るために。学校についた時、理科室を覗いた。灯りはついていなかった。見回りがないことを確認した上で、職員下駄箱前の出入口から侵入して理科室へ向かった。理科室についた時、明かりはついていた。そして、この女生徒と遭遇した。その後見回りに見つかって事情を聞いた。ここまでは覚えているが、あとの記憶が完全に欠落している。どうやって部屋に戻った?


「はぁ、ドジりました。」


「誰だ?」


後ろから、見回りの人が現れた。

この人も昨日見たことがある。確か麻生とか言ったけ?


「あぁ、昨日の。早く帰りなさい」


昨日と同じ内容の話をされた気がする。

そして、女生徒の方を見て話を始めた。


「今日の仕事はもう終わりかい?」


「はい、明日の1人で依頼完遂です。その後でもいいですか?」


「あぁ」


何の会話をしているのかわからなかった。

見回りの麻生さんは理科室を立ち去っていった。


「私も、帰りますか」


いやいや。


「待て待て待て待て」


「はい?」


「俺への説明が全く出来てないだろ」


「あっ、そうでした」


椅子を立とうとしていたが、席に座り直してこちらを向いた。

俺も、近くの椅子を出して座った。


「私は、高城郁実です。この学校の1年です。江曽えぞ中学出身です」


「そこはどうでもいい。この欠落している俺の記憶について知りたい」


「そうですね、なんて説明したらいいんでしょうか?」





私は、高城郁実。

現在、石山治高校1年です。

小学生の頃です。

私は、人の記憶の一部を消去及び復旧することが出来ることに気づきました。それに関することで、そういう仕事に就きました。きっかけは、私の友達。忘れたことがあると言われて、それがどうしても思い出せないという。私はこっそりとその記憶を戻してあげました。友達は、気づかないままそのことを思い出しました。思い出せたと、話すその笑顔は私にとってはとても嬉しいものでした。私はその味を覚えてしまいました。自己満足という味を。

中学の時に掲示板を作りました。依頼掲示板だ。そこに集った人たちは、大人から子供まで様々。忘れたい過去や忘れてしまった過去。人の思いは様々でその理由も様々。

私が最初に受けた依頼主は、中学で見回りをしていた警官さんだった。その人の依頼は、忘れたい事があるとのこと。その内容は、人を殺してしまった事を忘れたいということだった。この町に来た理由だと言っていた。詳しいことは聞かなかったが、記憶を覗いた時にわかった。

この人は都会の警察官をやっている時、ある事件に巻き込まれその犯人を射殺してしまっていた。私はその記憶を消しました。その人から、自分からも。数多の人の記憶を覗いては消したり戻したりして私は、自己満足というものを味わいました。

私は依頼人から、私にあった記憶も消してきました。私の素性がバレると色んな意味で困るから。そうやっていくうちに、噂が立ちました。「この町には、記憶を操作してそれを仕事にしているやつがいる」、と 。



なるほど。


「でも俺、一部は思い出したぞ」


「忘れる方には、私がそれに関するワードを対象の人に言ってしまうと思い出してしまうんです。でも、本当に思い出したくないことは思い出されないみたいです。人って勝手に忘れたりするから」


じゃ俺は、あの後起きたことを思い出したくないと思っているのか。


「私は、これからもこうしていくつもりです。

じゃ、私帰りますね」


「待て待て待て待て、俺はお前の素性知ってるんだぞ?俺の記憶そのままか?」


「いやー、同じ人にやっても効果が薄いっぽいんですよ。でも、そう言われればそうですね。どうしましょう?」


めっちゃ笑顔。困ってる様子0。この子は一体俺をどうしよと。


「そうですね。私の助手になってくれませんか?」


「はぁ?」


「確か、あ・・・あさ・・・・・・」


「阿佐ヶ谷だ」


「すみません。漢字はすごく苦手で」


「でも俺、お前に名乗ってないよな」


「はい、記憶を消去する際覗きました。あと、私はお前じゃないです。高城郁実です」


「助手って何するんだ?」


「んー?とりあえず、私の秘密をまもることですかね」


「破った場合は?」


「あなたの存在を消します」


「ま・・・?!」


「正確にはあなたの、記憶全てを消します。生まれてきたことすらも忘れれば、存在自体が消えたのと同じですよね」


めっちゃ笑顔だ。本気でやりかねねー。


「わっ・・・わかった」


「あと、寮ってどこです?」



部屋にもどった。

かなり疲れた。

俺は明日の準備をして、ベットへ自分の体を沈めた。

携帯のアドレスも番号も知られてしまった。

はぁ。

俺は、ゆっくり目を閉じて眠に落ちる。



起床。

7時1分

部屋を出た。

あと、2日も学校がある。

1階へ降りていくとなんか騒がしい。


「あー、湊くん。おはよう」


楓さんが荷物を運んでいた。


「それ、何の荷物です?」


「これ?新しく入居者が増えたの」


入居者?


「あっ、おはようございます」


あぁーー?


「新しい入居者の」


「高城郁実です」


面白くなんかない。

面倒なことになりそうな。














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