高城郁実の記憶操作

陵 陵 (みささぎ りょう)

出会いは噂話から

都市伝説。

人が人へ伝えた、言葉の幻。

俺はそんな話に目が無い。

どうも、その類のものが実際にあるのか無いのか確かめるのが好きならしい。

そしてそれは、そんな簡単な話ではないということ。

俺はこの町に来てから、この町にあふれる都市伝説をあさりまくった。

中学の時から調べていた都市伝説はほとんどデマだったことが、自分で確かめてわかった。

その中にはまだ調べられていないのがいくつかある。

その中の一つに、こんな話がある。

「この町には、記憶を操作してそれを仕事としている学生がいる。」





束暮町そくぼちょう

この町は、都内の海を橋でかけた小さな町。

人口は800人程度。その殆どは中学生以上の学生で、別名「学生町」と呼ばれている。

そんでなんだかんだで、俺も高校2年生。

俺、阿佐ヶ谷湊あさがやみなとって人間は常に新しい情報を待っている。

だからこそ俺は、窓際の1番奥の席で、机の下に携帯を隠して授業という時間を過ごし…。

パン。

頭を教科書の側面で叩かれた。


「おい、阿佐ヶ谷。

俺の数学はそんな面白くないか?」


数学の郷田ごうだ先生。生徒指導の先生で体育会系の先生である。

1年生の時から数学の授業でお世話になっている。


「先生の授業が面白くないわけではなく、授業っていう名目が面白くないわけですよ」


「ほう。

じゃ、この携帯はその面白くない授業の妨げになるから放課後取りに来いよ」


俺の携帯をしっかり握りしめながら、教卓に向かい授業を再開する。

俺はシャーペンを持って、黒板ではなく窓の外を見た。

4月はじめの風を受けて、笑顔をこぼす。

この町は、俺が思っていることの面白いが溢れている。

俺は、この町の都市伝説を全て調べあげる。

今の俺の目標だ。


「ガッツポーズなんてしてどうした?阿佐ヶ谷」


自分の手を見ると椅子の上で小さく拳を握っていた。

そして、にこやかに笑っている郷田先生が見上げると見えた。

俺も笑った。


放課後、俺は生徒指導室に自分の携帯を取り返しに行った。

授業が最後でよかったと思った。


「2年2組の阿佐ヶ谷です。携帯を返してください」


取り返した。

生徒指導室から出て携帯を開くと、さっきまで見ていた画面を見た。


束暮町に存在する都市伝説集


1.存在しない道


2.箒に乗る少女


3.記憶操作の職業


4.人に見える太陽


・・・


この、存在しない道っていう項目。まだあったのか。

俺が1年生の時に実際見た。

ビルとビルの間に綺麗な光の線が出来て陰りも微妙に出来て道に見えるだけだった。

あの先に秘密組織のアジトがあるとかなんとかって言ってたな。懐かしー。

携帯を見て3のところで指を止めた。

1年の時から知ってる都市伝説のくせに、未だに尻尾すらつかめない。

これこそ、人間の生んだ幻の存在じゃないか?

そもそも、記憶を操作するなんてできないだろ。

再び指を動かした。

携帯に集中していていまだ生徒指導室の扉の前から1歩も歩いちゃいない。


「何してる?」


「うわ!?」


後ろから出てきた郷田先生にびっくりた。


「どうした?」


「いえ、何でも」


逃げるようにその場を笑って立ち去る自分。

どう見ても、なんかしでかした人。


はぁ。

疲れた。


「ねぇ、聞いた?」


ん?

たまたま通りかかった1年の教室。

新しく出来た友達と弾んだ会話をしていた途中に聞こえた。


「この学校ね幽霊がでるとかで、最近話題になってるて」


「うっわ、こわーい」


「デマじゃない?幽霊なんかでるわけないじゃない」


「まぁ、そうよねー。噂だもんねー」


幽霊ねー。

この学校にね。

携帯を見るとNEWと書かれた項目があった。


NEW 石山治いしやまじ高校に出る幽霊



詳細はこうだ。

俺が通っている石山冶高校にはここ数日、夜な夜な理科室に灯りが灯るという。その灯りというのも、青く光るらしく数分すると消えるという。

この学校に入った時、この学校に七不思議があるって言うのは知っていた。

勿論全部確かめた。


屋上にある階段は登る時と降りる時では段数が違う。

よくあるが、これは人間の数え間違い。実際に俺も数え間違いを一度起こした。


音楽室の勝手になるピアノ。

これは、誰かがピアノの曲をCDで流したってのが真相。落ちていたリモコンを足で踏みたまたま再生ボタンが押されたようだ。


窓から見える動く人体模型。

これも見間違い。すっげーごっつい警官の人が見回り巡回してただけ。


いや、まーそんなふうに調べるうちにくだらない落ちが待っていたわけだ。

その七不思議の中何は理科室のこともあった。


窓から見える青い光。

これはカーテンを締めていると、見えることが分かった。実験かなんかで太陽を見るとかで昼間にカーテンを締めて見れるようにしたとか。

夜、理科室の明かりをつけると外からは青く見えるってわけ。


ん?

ってことは夜な夜な理科室には誰かいるってことになる。

俺はその人物が知りたい。

見回りの人は懐中電灯を持ってるから部屋の明かりをつけたりなんかしない。もし、見回りの人の懐中電灯が一部当たってるなら辻褄も合うしつまらない。でも数分ってのがきになる。

見回りなんて数分もかかるか?

そもそも、見回りなら懐中電灯を自分の体に合わせて動かすからついたり消えたりが正解なんじゃ・・・。

やっぱ行くか。

俺の考えは正しいのかどうか不明なんだ。


寮に帰ってる途中そんなことを思いながら、寮についた。



俺は高校1年の時からここ、案冴寮あんざりょうに住んでいる。学校校まではここから5分少々でつく。

ここの寮長が、親父の知り合いの娘なんで入寮できた。


「あっ、湊くん」


これが寮長の西尾楓にしおかえでさん。

優しくて面倒見のいいお母さんみたいな人。

石山治高校3年生だ。つまり、先輩。


「ただいまです、楓さん」


「あっ、お風呂の順番。湊くんが最後だがら。20時15分からね」


「ういーす」


久しぶりに外出時間外に寮をでることになるな。

実行は21時ジャストってところか。

今の内に、準備でもすっか。

部屋に入って、時計を確認すると17時12分。

荷物を下ろして、机につく。

携帯を取り出して、充電器に繋いで机のうえにほかる。

鞄から教科書を取り出して、机の上に広げた。

カラになった鞄にあれやこれやと詰め込んで、出ていく準備をした。


コンコン


ノックが聞こえて声が聞こえた。


「おい、湊ー。」


ん?

この声・・・面倒だ。

無視無視。


「そんな無視すんなよ、湊くん」


俺の肩に手をあてて後ろにしゃがんでいるやつがいた。


「勝手に入ってくるなよ、久」


「気にしない気にしない。ってこの荷物なに?」


「気にしない気にしない」


そんなコントみたいな会話をしているこいつは、伊藤久いとうひさし。同じ1年生。

そして、友達?みたいなやつ。

この寮に入った時から、こいつは俺の隣の部屋に住んでいた。何かとちょっかいかけてきて、

愉快に過ごさせてもらっている。


「でっ、宿題見せて」


最終的にこれである。


「お前さ、ちょっとは自分でやらないの?1年の時にも言ったと思うけど?」


「いや〜、出来る奴がいたら頼りたくなるじゃん?」


「やべ、嬉しくね〜」


「聞こえてるぞ」


テンポがいい会話を、久が宿題を写ながら話していた。

俺は、授業中に宿題を終える人間なのだ。

といっても、あったらやるもんだ。

部屋に戻れば別のことがしたい。

宿題を家出するなんて、馬鹿らしいとは思わないか?

目の前の久を見て、思わないか、とがっかりした。

自分で言うのはなんだが、割と頭がいい。

あぁ、俺のことね。

といっても、上の中ぐらいだ。上には上がいる。


「湊くん、そろそろ」


楓さんの声がした。

時計を見ると、20時を示していた。

時間が経つのははやいもんだ。


「っていつまでここにいるんだ?」


「えっ?」


久は我が部屋にいるかのように、入り浸っていた。

わりぃわりぃ、と言いながら外に出ていく久。

あと、15分で風呂の時間か。

準備としてはあらかた済んだ。

さぁ、そろそろだ。




この案冴寮では、一階に風呂 食堂 寮長である楓さんの部屋がある。二階に、俺らが住んでいる部屋が4つ存在する。つまり、案冴寮には5人の学生が住んでいる。

そして寮では、風呂の時間や飯の時間が決まっている。

うちの寮だけかもしれないが。

現在は20時35分。

風呂からあがるとパジャマに着替えて、食堂へ集まる。


「おう、湊」


少し大きめの丸テーブルに久が座っていた。

もう既に飯は並んでいた。


「あぁ、お腹すきました」


久の隣に座っているのは、飯山直子いいやまなおこ。愛称ナオちゃん。1年生女子だ。まだ10日ほどしか顔を合わせていないが、元気があり笑顔が耐えないとってもいい子。そして、この空間にすごく馴染んでいる。


「たくさん食べてね」


俺の隣に楓さんが座る。

その隣にもう一人。


「楓ネェ、箸とって」


航縫幸来わたぬいこうこ。2年の女子。

楓さんとはどうゆう付き合いなのかわからないが、俺らと同じ年である。


「じゃ、いただきましょう」


「いただきまーす」


一斉に食い出す。

そう。飯の時間が決まってるって言うのは、全員が全員同じ飯を食べてなんぼという。楓さんが寮長になってからの考えなのだ。

飯を作るのと風呂掃除は、当番制となっており文句 逆らうことは出来ないのだ。

なんてったっても、楓さんが起こると怖いんだこれが。


「ひさくん。醤油とって」


「ん、ほぉぃ」


「ちょっと、口にもの入れて喋らないでよ」


今日のメニューは、白米 味噌汁 マグロの刺身。

ちなみに、作る人は自分で今日の献立を考える。

偏りがあろうが、不健康的だろうが出たものは食わなきゃならない。

幸いこのメンバーは、飯をまともに作れないやつはいないので、ある程度うまい飯が食えている。


「そういえば、今日学校で幽霊の話聞きましたよ。理科室にでるらしいですね」


ナオちゃんが話題を振った。


「1年の中じゃ、話題独占なんですよ」


「まぁ、そうなの?そんな話聞いたことないわ」


楓さんは、そうゆうのうといからな。


「私も、聞いたことない」


幸来は、学年の中でも意味ありげに人気のある生徒だ。そんな幸来が聞いたことない噂となると。


「おそらく、俺ら2、3年の知らない事なんだろう。一年の誰かが作った噂になるな」


そんなことを口走った俺はナオちゃんから話を聞き出そうと思ったが。


「あぁでも、その詳細をほとんど知らないんですよね。そうゆうの興味無くて」


ですよね。


「湊って、ほんとそうゆう話好きだよな」


「俺にとっては生きる糧だ」


言い過ぎではない。

そうゆう人間なのだ。


「みんな食べ終わったわね。じゃ、ごちそうさまでした」


「ごちそうさまでした」


皿を持ってったのが20時56分。

そろそろだな。


そして、部屋に戻る。

21時ジャスト。

部屋の電気を消した。

二階の部屋からロープを垂らして、準備した荷物と脱出用の靴を履いて部屋をでた。

21時は門限でもある。

これは町の門限だ。

出歩くことができない。

故に静か。故にパラダイス。

1年の時からよく破ってきたが、他の人を見たことがなかった。

そして、学校についた。

俺は校門から見える理科室を見た。灯りはついていなかった。

見回りの人が来る前にとっとと、学校に入ろう。

この町の学校すべてに当てはまるが、見回りの人が仕事できるように、職員下駄箱前の出入口を開けているのだ。ということで、ここから侵入。

手馴れたもんだろ?過去に2回ほど忍び込んだことがあったんだよね。


そして、まっすぐ理科室へと進んだ。

職員出入口からだと二回に上がって渡り廊下一本渡ってまっすぐ行くんだよね。

正門からだと、まっすぐ見れるけど反対に職員出入口があるからな。

そのルートで進んでいく。

見回りの人が、今どこで歩いているかわからないが。

この学校の渡り廊下は吹き抜けになっている。

扉やドワがついていない。

そのまま突破できる。

忍者ではないが警戒しながら進んでいく。

そして、理科室に近づくと灯りがついているのがわかった。さっき見た時はついてなかったのに。

もしかしたらこれは、本当にあるかも。

幽霊ではないと思うが、誰がいるのか。ワクワクする。

そして、理科室の前に立ち扉を開けた。


カーテンが締め切られて、奥の方の席で一人座っている女の子がいた。しかも、やたら可愛い私服で。

入った音に気づいて振り返った女子。

顔もスタイルもなかなかカワイイではないか。


「でっ、君誰?」


言葉に出していた。しかも、知らない女の子に指まで指していた。


「だっ・・・誰ですか?あなたこそ。何のようがあって・・・」


「あぁ、郁実ちゃん」


ゆうみ?


後ろから警官の服装をした、見回りの人が現れました。


「って君、もう門限は過ぎてるだろう。何をしているんだね?」


いきなり説教?


「って、待ってください。じゃ、あの子はどうなるんですか?」


俺は、あの子を指さしてそう言った。


「私は「あの子」じゃないです。

私は、高城郁実たかしろゆうみです」


「じゃ、そこの高城さんはなんだっていうんですか?」


何言ってるのか、自分でもわからないくらい混乱していた。

そして、言い疲れた俺はその場の椅子に座り机に右の腕を乗せた。


「彼女はね、僕の記憶に関することを思い出させてくれようとしてくれていたんだ」


記憶?


「ここ数日、この理科室を借りて、中学からやりきれなかった依頼をこなしていたんです。そしたら、麻生さんに見つかって。聞けば思い出せないことがあるって聞いたんで。そのお手伝いを」


へっ・・・言ってることがさっぱりわからない。

頭真っ白なんだけど。



これが、俺の高城郁実との出会い。

そして、俺の面白いはさらに加速する。




























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