"しにたい"と君が言った。

くらげ

第1話


海外転勤から一時帰国した2月。

バイトや仕事、それぞれの用を終えて、

たまたま声をかけた中学の同級生4人での

飲み会が始まった。


家を出たのは22時。久しぶりの日本のテレビに夢中になり、すこし遅刻。携帯の通知を見るともう1人遅刻してくるようだ。


自転車で走る外は耳が痛くなる寒さ。

シャッター街になりつつある地元の駅前、

見知った顔を見つける。


幼馴染である男と、中学時代ほとんど交流は無かったがSNSで卒業後に仲良くなった男。ふたり。


やあ、ひさしぶりと照れもなく適当に挨拶をして店に向かう。

チェーン店の魚介類系の居酒屋へ入る。


それぞれに飲み物を頼み、近況報告を済ませる。

同じ土地で育ったからか、学生のような会話以外をするのは2人とも初めてだがなんの滞りもなく、気持ちよく酒が進む。


たのしくなってきたな。

そう思い始めた時、もう1人が到着した。


最後に現れたのは中学時代同じ部活に励み、割と頻繁に連絡を取り合っていた女だ。


彼女は新しい職場に入ったばかりで、その日も残業帰りのスーツ姿であった。

わたしの職はスーツではないので、ああ、大人になったのだなとふと考えさせられた。


彼女が来てからは恋愛話や仕事の話、将来についてなどワイワイと討論をし、明日からも頑張ろうと言い合い、宴を閉じた。


幼馴染だけは店を出てすぐ別れ、

店から10分ほどは3人で暗い商店街を歩いた。


3時頃だっただろうか。

ほろ酔いで自転車を押しながら歩く。


駅近くに家がある彼女とにこにこと別れる。


わたしの実家の近くに住んでいる、もう1人の男とそのままのんびり歩いて帰ることにした。


冷たい夜風で酔いを冷ましつつ、心地の良い会話を続ける。


ふと彼がだまった。


そして小さな声で言った。


死にたいと思ったことある?











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

"しにたい"と君が言った。 くらげ @_kurage_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ