いざ咲かせん
尾形
第1話
ぱちり。
浅く短い眠りから覚め、目に入ったのは自室の天井。
右腕を真上に伸ばし、動くことを確認する。
そのあとは左脚。
脇腹に触れ、傷が閉じていることも忘れずに確認。
嗚呼、今日も俺は生かされているんだ。
この、汚くくすみ、色もない世界に。
バタバタと廊下を走る足音が聞こえる。
耳も、正常だ。
足音は部屋の前を何往復かすると、一つは部屋の前で止まる。
仕事か。
後始末か?尻ぬぐいか?
コンコンと控えめに戸を叩かれる。
入れ、と短く返せば入ってきたのはすぐ下の部下。
尻ぬぐいか、と一人勝手に納得していれば声をかけられる。
「長船さん」
「なんだ。手短に話せ」
「あの着物の方が来ました」
「......鬼事をしたら負けた、と」
「はい」
「下がれ」
そう言えば一礼して出ていく、部下を目で追う。
嗚呼、会いに行かねば。
自分が寝ていたせいで彼奴は好き勝手やったんだからな。
相変わらず、だ。
もうひと眠りできると思ったんだが。
しょうがない。
いい加減に柔らかいとは言えない布団から出る。
今日はやけに心臓が痛い日だ。
いざ咲かせん 尾形 @_shiK3
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