2α.ちょっとした補足とストアの良し悪しについて
前回の文章を読んだ方から、色々とツッコミをいただいたので補足していきます。
Q1:「誰でも解凍できるものを売っても大丈夫なの?」
A1:ストアがなんとかしてくれます。
前回、「EPUBっていうのは小説をWebページみたいにしてzipで固めたものなんだよ」と、かなりアバウトな説明をさせていただきました。
ですが、ネットを使った商売に、いわゆる無断転載や海賊版といったマイナスな話はやはり憑き物で、「解凍すれば中身の文章をまるまるコピーできてしまうのではないか」というご指摘をいただきました。大変よい質問です。
実のところ、作者側が用意してストアにアップロードするファイルと、ストア側が読者に見せているファイルは、内容こそ同じでもデータ形式は異なる場合がほとんどです。
作者がストアに提供したEPUBという素材から、解凍はできないけど閲覧はできるという安全な形式のファイルにして配信しているかたちになります。
例えば「AmazonKindle」ならmobiとかazwといった独自のファイル形式を採用していますし、カドカワの「BOOK☆WALKER」ではKADOKAWA-EPUBという、リーダーに対応した形式に変換して配信しているようです。
また、僕も人に聞かれるまで知らなかったのですが、「BookLive」のようなストアでは、拡張子こそEPUBだけどデータフォーマットは全く別物、というファイルで配信を行っているみたいです。
EPUBのファイル形式はきっちり使用を定義された国際規格なので、その規格外のファイルに同じ拡張子を与えるのは、とてもちょっとモヤッとしたものを禁じ得ません。
とりあえず、作家側はこの辺りの問題をあまり気にすることなく、〝EPUBを作ってストアに登録する〟という意識でいて良いと思います。
むしろ、そういう環境で作品を出せるような環境を作るために、技術者たちが頑張ってくれているわけなので、僕たちは気にしないでいるのが本来は理想的だと思います。
ただ、このあとの章でも軽く触れる予定の話ですが、自分の責任で作品を販売する以上、著作権や出版権の問題について意識しておく必要自体はあると思います。
また、ストアによっては「解凍可能なEPUBファイルを直販できる」というサービスを行っている場合もあるそうです。
僕は販売登録していませんが、している人から小耳に挟んだ話によると「全然売れないしリスクが増えるだけだからやめた方がいい」っていう身も蓋もない結論でした。
Q2:用意するEPUBは一つで大丈夫なの?
A2:大丈夫なようにするべき
これ、答えになっているようでなっていないのですが、とりあえず〝一つの作品に対して販売ファイルを二つも三つも作る〟という状況はできる限り避けるべきですし、避けていいようなやり方にするべきです。
大まかに制作から販売までの流れは
テキストで作品を書く → 電子書籍ファイルにする → 販売ストアに登録する
という形になると思います。
いわゆるマルチストア展開(複数のサイトで同じ作品を販売する)ことを考える場合、避けては通れない問題なのですが、例えば「他のストアでは問題ないのにあるストアだけは表示がぶれる」といった問題にぶち当たる可能性が往々にしてあります。
Webサイトでも「Chromeでは問題ないのにIEでは表示がおかしくなる」とか、「同じIEでもIE8とIE9で表示が異なる」といった問題がよく起きますね。
そしてその対策のためにCSSにブラウザごとの処理を書き加えたりとか、IE8ではそもそもアクセスできないように締め出すとか、色んな対処の仕方があるわけですが、「ブラウザごとにHTMLを幾つも作る」という対処はとてもナンセンスです。
これなぜかというと、単純に修正に対するコストが馬鹿みたいに跳ね上がるからです。
たとえばリリースしたあとでちょっとした誤字を見つけてテキストを修正した場合、共通のEPUBが使えるなら変換は修正に対して一回だけで済みます。
対して、ストアごとに規格が異なるとすると、「Aのサイト用に一回、Bのサイトのためにもう一回」と、修正一回に対して×N回というたいへん面倒な作業が発生します。
また、どれだけ気を付けていても
「C用に作るの忘れててAとBとCでバージョンがバラバラ」とか「スタイルを修正したらAとBは問題ないのにCだけ問題が出た」とか、なんかもうひどいことが確実に起こります。
EPUBという共通規格が策定されているのも、元々はこうした問題が起きるのを防ぐためでもあります。
なので、用意するソースファイルは1つだけで、色んなストアに使い回せるという楽をするのが最善で、手間をかけるのは悪手です。
逆に「独自規格を用意しないといけない」とか「他では問題ないのにここだけ問題が出る」というようなストアは、やっぱり色んな問題を抱えていて置いても売れない、すぐに潰れるなんてこともザラなので、できるだけ楽を目指しましょう。
Q3:『でんでんコンバーター』と『AozoraEpub3』以外の制作ソフトって何かないの?
A3:ないとはいってない
Google先生に「EPUB 作成」で検索してもらうと、けっこう色んなソフトが見つかりますし、僕が始めた頃にはなかった新しいサービスもなんだか色々増えてます。
ただ「
僕が主に条件として考えているのは以下の3つです。
・無料であること
・縦書き対応であること
・スタイルをカスタマイズできること
なのでこの条件を外せば選択肢の幅は広まりますし、特にスタイルにこだわらないのであれば『Romancer』や『BCCKS』といった代行サービスの利用はオススメできると思います。
特に『BCCKS』は、面倒なマルチストア展開も一挙に引き受けてもらえるので、できるだけ手間をかけずに電子書籍に挑戦してみたい人は、コンバーターによる自作を考えるよりオススメできます。
また、拡張性の高い『Sigil』とか『Calibre』は、自由度が高すぎて初心者だと途方に暮れますし、英語圏発祥なので縦書きに対してのサポートはあまり万全とは言い難いです。
自分も使ってみたことはあるのですが、一瞬で投げ出しました(笑)
もっとも、使用率の少ないソフトもそれはそれで使って見る価値はありますし、使う人が増えることによってソフトの品質が今後上がることも充分考えられます。
特に現状の電書界隈は『AozoraEpub3』を使ってる人の話をまるで聞かないので、今後カクヨムやなろうユーザーの参入に従って使用レポが増えるといいかなと個人的には思ってます。
Q4:EPUBはHTMLじゃなくてXHTMLじゃないの?
A4:そのレベルの質問をしてくるやつに俺が言うことは何もねえ。
今回の話も含めて言えることなんですが、電子書籍という文化はWebと出版の中間に存在しているものだと僕は個人的に思ってます。
僕自身も「紙出版と同じ事を電子でやるだけ」というスタンスで望んでたのですが、その認識だけでは通用しない場面が多く、「Web技術の1つである」という視点も持つべきだと思ってます。
なので紙出版のやり方をそのまま持ち込んで失敗したという例も数多くありますし、また逆に出版の素人でありながらWebに通じている人が早めに種を蒔いて一発当てたという話も数多く聞きます。
KDPが始まったばかりの最初期だと、アクセス数の多いブロガーが自分のブログを書籍にまとめて出版して一儲けなんて話も多かったみたいですが、このあたりもWEBの延長であるという証左だと思います。
なのでどうしても、技術レベルの話をどの程度掘り込むべきか、結構悩みながら書いてます。
本来、技術というものは、それがどんな仕組みで動いているか知らなくても、誰もが利用できるっていう状況が望ましいものなんですけどね。
なので現状の〝EPUBとは何か〟を利用者が事細かに意識する必要がある状況は、あまりよろしくなくて、〝中身はよくわかんないけど文章を書いたら電子書籍が売れる〟ぐらいのものが本来はよろしいものだと思います。
そういった誰でも簡単な状況になったときこそ、電子書籍が本格的に盛り上がる時期じゃないかなと思ってますし、逆にそうなってくるとライバルが無数に増えてしまうので、難易度の高い今のうちにちょっと早く乗り込んで場所取りをしておこう、というのが僕のスタンスでもあります。
話はだいぶ逸れましたが、とりあえず「EPUB内の本文ファイルはXHTMLである」という点については事実ですが、「XHTMLとHTMLの違い」みたいな技術レベルの話をしたくないので、あえて誤魔化して書いてたというのが本当のところでした。
僕自身があまり詳しくないので、ボロが出ないように言及を避けてただけ、というのもまあ多分にしてあります()
以上、前回の補足でした。
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