源氏の因縁

@sotama5

第1話

「─海の下にも都がごさいます。一緒に行きましょう。」

「そうか、海の下にも都はあるのか。そこには父上もおるのか?」

「はい。お祖父様や叔父上様も。怖がることはありません。私もお伴します。」

「うむ。では行こうか、源氏も迫ってくる。神器を。」

『ここに。』

「確かに。それでは行きましょう、帝。」

────────────────────

『一本!そこまで!』


「ああ、畜生!結局最後まで勝てなかったな!」

「はは、高校最後も俺が優勝か。公式戦になると俺に負けるのはなんでなんだ?」

「俺が知りてえよ。まあ、おめでとさん。見てろよ、大学では俺が勝つからな。」

「俺の連勝記録が伸びるだけだな。」

「言ってろ…。おっと、表彰式だ。行こうぜ、勇士。」

「ああ。─そういや真ちゃんはきてるのか?」

「うん。試合前に会ってきた。勝つって言っちまったし怒られるだろな。」

「あっちも期待してないだろ。」

「うっせ。あーあ、ちっちゃい頃なんで俺は勝負弱いのかな。」

────────────────────

『優勝、富士川勇士殿。貴殿は当初の優秀な成績をおさめられたことをここに表彰します。平成○○年6月○日、県剣道連盟会長石橋一良』

「ありがとうございます。」

『準優勝、源優護殿。貴殿は当初の優秀な成績をおさめられたことをここに表彰します。以下同文につき省略します。』

「ありがとうございます。」


俺は小さい頃から剣道をやってた。

実家が源氏と関係があるだとかなんとか言ってたからそれのせいも少しあるかもしれない、実際始めたのはじいちゃんに勧められたからだし。

まあそれだけじゃ続けられないし剣道が好きなんだと思う。

大会ではいつも幼馴染の勇士に負けるから優勝はしたことないけど。

勇士はすごいやつだ。勉強もできるけどそれ以上に頭がいいし剣道も強い、自分に自信があるから強いのかもしれない。

中学から一緒でずっと想いを寄せてる真も勇士のことが好きなんじゃないかって考える。

このネガティブ思考がダメなん

「よー優護!キッチリ負けたね!」

「真!?もう来たのかよ。」


俺の思考を突然止めて真が出てくる。


「もうってなんだよ?せっかく応援してやったのによー」

「応援してたんならキッチリ負けたってどういうことだよ…」

「だってどーせ富士川君が勝つじゃん?」

「勇士はかっこいいよな。俺なんかと違ってさ。」

「そんなこと言ってないじゃんよ。優護もかっこよかったよ。」

「ハハ、取ってつけたようだな。」

「全く、優護はなんでそんなネガティブなんだよ。素直に受け取ればいいのに。」

「あ、富士川君。優勝おめでとう!かっこ良かったよー。」

「おう、真ちゃん。ありがとう。」

「優護もこんなふうに受け取れればいいのにな。優護、富士川君、ウチで祝勝会してこうよ。」

「ああ。今から寄らせてもらうかな。」

「俺も行っていいのか?」

「いいって言ってるじゃん!早く来い!」

「お、おう。」


手をとらなくてもいいのにな。…ちっちゃいな。

────────────────────

『長かったな。』

『ああ。帝が元服するまでこっちでは9年。しかし上の時間で900年ちょっとか。多くが変わった、帝の宿敵の鎌倉も廃れ、その後も何度も支配者は変わった。我々の悲願を果たす意味は無いのかもしれんな。』

『源氏を滅ぼし帝をもう一度帝位につける。果たさなければなんの為に準備をしてきたのか?ここにきて臆病風に吹かれよったか。』

『なっ…!貴様、オレを愚弄するのか?オレはただ他にもやることがあるんじゃないかと!』


「黙れ。」


『なんだと!?誰だ!?オレにそんな口を聞く奴は!』


「朕だ。」


『み、帝…。』

「臆病風に吹かれた。そう言われても仕方ないな、その考えは。」

『い、いえ!申し訳ありません!今のはほんの冗談でして!』

「ほう、冗談か。面白い冗談を言う。礼に褒美をやろうか。」

『ほ、褒美にございますか?』

「ああ。名誉ある褒美だ。─朕の武器に試し斬られるというな。─シッ!」

『グッ!?み、帝…』

「そこの者、行くぞ。侵攻はもう始まる。朕を早く帝位に戻してくれ。」

『ハッ!』(畏ろしい、ただ怖いだけでは無い、確かなカリスマと強さを兼ね合わせた畏ろしい人だ。─だからこそ我らは惹かれたのだろうな。)

────────────────────

『ついに来たな。』

『ああ。しかし凄いもんだな。何十万いるんだ?』

『さあな、ただわかるのはとんでもない数で地の上の奴らには決して負けないってことだけだな。』

『違いねえ。』


不思議なものだ。随分前に朕はここに来た。海の底の都は真であり最初は疎まれもしたが今では朕に逆らうものはいない。目の前にいる無数の軍、全てが我が手の中だ。


「帝、長うございましたな。」

「清盛爺様。」

「今一度帝、貴方が安徳天皇として世を治める日がやってまいります。」

「うむ。─爺様、感謝する。朕が考えもつかないほどの技術力を持ったこの都に連れてきたこと、そして味方を増やしてくれたこと。帝位に就き、この恩に報いるぞ。」

「恩など。孫であり正統の天皇である貴方に対しては当然のこと。この清盛以下貴方の兵はどんな苦労も惜しみませぬ。」

「そうか、心強い。海の底の異形の兵は地の上のどんな兵にも劣ることは無い。─行くぞ!再び世をこの手に!」

『『『ヴオオオオオォォォォォ!!!!!』』』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

源氏の因縁 @sotama5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る