三十路からの恋愛幸福論 ~人並みに生きるって難しい~

@kuroshima

はじめに

 昔はもっと単純明快に考えられていた人生のいろんなことが、年を重ねるにつれてどれもが難問に思えてくるようになったのは一体いつからだろう。仕事のこと、恋愛のこと、結婚のこと、家族のこと。互いの他愛もない近況報告をしていた女子会は、30代も目前に迫ってくると誰々が結婚した話だとか、一向に現れる気配のない理想の相手についてだとか、先日行った合コンで出会ったありえない男の話だとか、話がどう転んでも恋愛や結婚の話に行き着いてしまう。「これから私たちはどう生きていったら幸せになれるの?」という漠然とした不安を吐露し合っている。


 私は地方で情報媒体の記者という仕事をしている。そこで一度、婚活に関するリポート記事を書いたところ大変反響があった。「私も婚活中なので頑張ります」「どこに出会いがあるのか知りたい」「結婚願望はあるけれど全然良い人がいない」などなど、都会と違って田舎は出会いの間口も狭いためか、深刻に悩んでいる男女が実に多いことを知った。その証拠に、自治体などが開催する街コンイベントは毎年大盛況である。年中男も女も出会いを求め、悩んでいる。


 他でもない私自身も、恋愛、結婚、ひいては幸せについて悩む人間の一人だ。20代半ばで一度結婚し、およそ三年間の結婚生活を経て離婚した私は、現在悠々自適な実家暮らしを満喫している。薄給ながら食うにも困らず、家に帰れば温かいお風呂と食事が待っている。平日は職場と自宅の往復をしていたらあっという間に一日が過ぎ、土日は友人と遊んでいたらいつの間にか夜が更けている。まさにパラサイトシングルライフを謳歌している。田舎は都会と異なり日々の刺激は少ないが、決して不幸ではない。健康な家族に囲まれ、仕事のストレスもそこそこ。むしろ幸せなはずなのだ。なのにもっと幸せになりたいと思ってしまう。再び結婚したいと思ってしまう。一度は失敗したはずなのに、懲りずに誰かとまた愛し合いたいと思ってしまう。これはもはや動物的な本能なのかもしれない。結婚という姿も形も見えない箱の中には、今の幸せを超える幸せが必ずある、と根拠なく思わせる魔力のようなものが潜んでいるのかもしれない。


 このエッセイは、「三十路の私」というフィルターを通して考えた、恋愛と人生についての私なりの考えを綴るものである。なかなかうまくいかない恋愛問題、人々が求める理想の結婚、他人と比べてしまう人生の幸せについて……などなど、年々考え方が複雑化していく自分の頭の中を整理して、改めて見つめ直してみたいと思う。

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