怪異(八)

 曹憲はどこか印象が変わっていた。青い宝玉をもらったせいだろうか。

 それまでの曹憲はどこか心を閉ざしていたような気がするが……。

「見つかりましたわ!」

 侍女の一人が叫びながら戻ってきた。曹華の侍女だった。ぜいぜい、と息を切らしていた。

「どこにいるの?」

「それが……」

「ひょっとして、漢豊が豆を育てている畑かしら?」

 曹憲が口を挟んだ。

「その通りでございます! どうしておわかりに……」

「皇后のことですから、必ずやよからぬ事を企んでいると思いました」

 劉協は曹節の畑へと向かった。曹華も向かった。

 曹憲まで同行した。

 曹華と曹憲の侍女たちも付いていった。

 曹節の畑には伏皇后と侍女、それに警備の兵士たちがいた。

 たしかに伏皇后は背に鍬をかついでいた。

 しかも、粗末な農婦の格好をしている。

 考えられないことであった。いったいどういう風の吹き回しなのか……。

「おや、陛下」

 伏皇后は劉協に気づいた。

「皇后、その格好は……」

「陛下は畑をいじる女が好きだと聞いたものですから」

 伏皇后の口調には毒が含まれていた。

 その妖怪じみた雰囲気に、劉協は後ずさりしそうになった。

「その畑は曹節が豆を植えているはずだ。今さら耕す必要など……」

 劉協は地面を見た。

 目をこすった。

 見間違いではなかった。

 地面には二つの人間の首が植えられている。

 しかも、それは劉協を警備している兵士であった。

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