怪異(二)
「朕を?」
「はい」
劉協には曹節の言わんとするところがわからなかった。
「この宝玉は三つございます」
「うむ」
「そして私たちも三姉妹でございます」
「それがどうと言うのだ?」
「父は、陛下の手からこの宝玉を私たち三姉妹に与えさせようとしているのです」
「おかしな事だ」
劉協は首をひねった。
「娘に与えるならどうして同じ宝玉を与えぬのだ。一つだけ極上の青い宝玉を混ぜてあるのだ?」
「ですから、その青い宝玉を三姉妹のうち誰に与えるかを見たいのでございます。陛下が誰を愛しているのか確かめたいのでございます」
劉協は、あっ、と低い声で叫んだ。
「しかし、朕は宝玉をずっと手元に置いておくかもしれぬぞ」
「この宮廷では噂はいつも羽をつけて飛んでいきます。晴玉が聞きつけて青い宝玉をねだるかもしれませぬ」
事実その通りだった。劉協は苦い顔をした。
「その青い宝玉は姉に与えてください」
「なんだと?」
「姉が姉妹のなかで一番の年上です。孝悌は仁を為すの本、といいますから」
劉協はまじまじと曹節を見た。
たしかにそれが筋であった。
しかし、釈然としない思いが劉協にはあった。
あまりに曹節は物わかりが良すぎる。
まだ17歳。いや、若いからこそ心が清廉であるともいえるが。
真面目なのはいい。しかし、劉協は曹節との心の距離を感じたのである。
男という生き物は、女はつねに自分に小動物のように甘えてほしいという願望が心のどこかにある。
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