曹憲と曹節と曹華(二)

 つづいて曹節。

 侍女たちは劉協の来訪にすっかり動揺していた。

 曹節はどこにいるのかわからないと、口々に言う。

 部屋に籠もりきりかとおもえば、知らぬうちに姿を消していたり、曹節には謎めいたところが多いのだという。

 侍女たちが嘘をついているようには見えなかった。

「そなたたちの主は幻術でも使うのか」

 夜、外に一人出て蝋燭をたてて本を読むなど浮き世離れしたところがある。

 劉協がその事を話すと、侍女たちはすっかり驚いた。誰も部屋を抜け出して本を読んでいたことを知らなかったのである。

「曹節とはいったいどういう女だ」

「それを毎日話し合っているのでございます」

 侍女たちも、曹節がどういう人物なのか掴みかねている様子であった。

「蔡文姫と夏侯惇には気を許しているようだが」

「そのようでございます」

27

 侍女は答えた。

「いっそ、そのお二人に聞いたほうが早いかと」

 たかが侍女にしては出すぎた発言である。

 だが、劉協は、

「そうか」

 と笑って答えた。

 これまで宮廷で耐えがたきを耐え忍んできた劉協である。

 13,4歳の小娘の物を知らないくらいで驚くほどに無能ではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る