『急がば回れ』って言葉は異世界ダンジョンでは違うらしい。

黒猫と三日月

第零章プロローグ

第零話 プロローグ

カタカタ、カチ、カタカタカタ。

チュンチュン、チュンチュン。


いつの間に朝になっていたのだろう。

鳥のさえずる声が聞こえ、パソコンを操作する手を止め窓の方を見ると、締め切ったカーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。


「もう朝か……今日も学校休も……」


ゲーム機やソフト、何故か分解されている無数のエアガンや普通のエアガンが散乱した自室に俺の独り言若干の虚しさを残し溶けていく。


俺、緋奈々伊ヒナナイ アザミは無駄に記憶力の良いだけのある程度低い学力の高校ではクラスに一人は居る不登校気味な奴だ。


別にイジメを受けている訳では無い、ただただやる気が出ないのだ。

普段仕事仕事で滅多に会わない両親に言われて地域で一番近い高校を受験し合格はしたが、ギリギリ授業日数が足りる位にしか行っていない。


カタカタカタ、カチ、カチ。


再び、パソコンに向かうと表示されていた掲示板サイトを閲覧し始める。


───カチ。


「あっミスった」


徹夜明けだったからか手元が狂って何か分からなかったが広告サイトを開いてしまった。

ページを読み込み終わり表示され始めるが、しかし──





ザザッザッザザザッ!!



「な、何だ!?」




────404 Not Found.



急に画面にノイズが走り新たにそう表示される。


「なんだコ…レ……?」


バタン。


急に眠気に襲われ、全身から力が抜け、机に突っ伏す。

それから、机に衝突した頬に若干の痛みを感じながら、眠気に逆らわず、眠りについた。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲


目覚めと出口の無い、真っ黒な部屋に立って居た。


「あれ?何処だ此処?」


多少の恐怖に駆られ辺りを見回し部屋の中央、ある一点に視線が止まる。


「……パソコン?」


そこには黒い木の板に脚を着けただけの机と椅子、そして机にはこの部屋にあまり似合わないシルバーのノートパソコンが置かれていた。


「使えるのか?」


恐る恐る、電源を入れる。


─転生を望みますか? Yes / No


「え?」


電源の入った画面にそう表示される。


「どういう事?何なんだよ、コレは……」


急な展開に頭の回転がついていけない。

すると


──今の人生は楽しいですか? Yes/No


ウィンドウに表示された質問が変わる。

そして、その質問の見た時頭がスッと冷えた。


「ハハハッ」


気づけば無意識の内に疲れたような乾いた笑い声を零していた。


楽しいか?、か……

学校にも行かず、部屋に引き篭り、意味も無くエアガンをバラして組み立てるを繰り返したり、ただただ無気力に掲示板サイトを閲覧する。

意味も無く生き、無色透明な毎日が過ぎていくだけの人生。


「最後に楽しいって思ったの、何時だったかな……」


自虐的にそう呟き、無意識の内にYesにポインタを合わせ、クリックしていた。


───やり直したくは無いですか?

友と話し、競い合い、笑い、泣き、たまに喧嘩したり、そしていつか誰かと恋をする。

そんな人生は欲しくないですか? Yes/No


Yesをクリック。


─転生を望みますか? Yes/No


Yesをクリック。


─もう二度と元の世界に戻る事は出来ません。それでも転生を望みますか? Yes/No


Yesをクリックする手が止まり、脳裏に殆ど会うことが無かった両親や弟の顔が浮かぶ。


「……さよなら、父さん、母さん、ヒジリ


そう、呟きYesをクリックした。


─転生する意思を認めました。

転生プログラムを起動。

プロセスを開始します。


──転生する種族を選択してください。


該当する場合はチェック。

□ハーフを希望

□クォーターを希望

注.該当者は後ほど受け継ぐ血の割合を指定してください。


人、亜人系

人属,獣人系,ドワーフ,エルフ,ダークエルフ,鬼属,

巨人属,魚人属,天翼属……


魔族系

スライム系,ゴブリン系,オーク系,ウルフ系,

不死系,悪魔系,ヴァンパイア系,竜系,龍系……


続いてそう、表示された。


「へぇ、こんなに選べるんだ……

お、種族の詳細も見れる」


それぞれの種族の詳細が見れたので試しに幾つか表示する。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


<人属> 種族評価 unknown

バランスの良いステータスであるが全能な種族と言うより全体的に若干低い種族。

しかし、あらゆるスキルに対する適正が断トツで高く、種族スキルや固有スキル以外であれば個体差により取れない場合はあるが殆ど取得が可能。無限の成長を秘める。


種族スキル:無し



<クリア・スライム> 種族評価 unknown

世界最弱の魔物。

平均ステータスは人間の子供よりも若干低い。

しかし、全てのスキルを種族、固有関係無く取得可能な種族。

無限に進化し成長する種族。

その可能性は神をも凌ぐ。がステータスが低過ぎるのでほぼ自然に進化する事は無い。

無限の可能性の種族。


種族スキル:液化



<オリジン・ヴァンパイア> 種族評価 A

高過ぎる不死性とステータスを併せ持つ種族。

ヴァンパイア系特有の日光によるダメージを完全に克服しているが、光魔法は克服出来ていない。

しかし、一ヶ月間血液を摂取して居ないと半永続的にステータスが低下、それでも摂取しない場合死に至る。

銀や聖別された武器や道具に極端に弱い。

成長性が低い。


種族スキル:吸血,吸魂,不死,始祖の血,血の覚醒



<ハイ・エンシェント・ドラゴン> 種族評価 S

極端に高い物理的、魔術的攻撃力と防御力を併せ持ち、更に様々な種族スキルを持つ種族。

<人化>のスキルを使い人になる事が出来る。

コレと言った弱点は無いが、成長性や進化の可能性は絶望的と言うより、もはや不可能の領域に達している。


種族スキル:竜魔法,竜の咆哮,竜の威圧,魔障壁


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


と、こんな感じだった。


「思った事、スライム・・・・なのに何かカッコイイ。何で?」


しかし、かなりの数で決めるのには時間が掛かりそうだな、なんて言ったってスライム系ならスライム系の〇〇って感じで沢山あるし。

それにハーフやクォーターまでOKだ。


「自分の人生に関わる事だし適当に決めたくないな……少し粘るか………」


それから数時間、嫌数日たったかもしれない。

この部屋ではどうやら疲れも眠気も無いらしい。


結構、良いのが出来たと思う。

結局決まった種族はこんな感じだ。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


<不死者イルティニス> 種族評価SSS+

人属、不死鳥フェニックス不死なる王ノー・ライフ・キングのクォーター。

血の割合が 人:不死鳥:不死なる王=2:1:1

の為、亜人系である。


ほぼ完全な不老不死性を持ち毒物や呪詛が効かず、無尽蔵のスタミナと眠りが余り必要無い体を持つ。

あらゆる魔法やスキルに適正を持ち、更に高い成長性を誇る。

周囲に魔素が存在しない状態で灰も残さず消されると死に至るが、同時に極端に高い魔法耐性、魔障壁を持つので死ぬ事はまず無い。

ステータスは完全な魔法職よりで、物理的なステータスは獣人以上鬼属以下。


種族スキル:王魔眼,聖眼,不老不死,魔障壁


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


とまぁ、こんな感じだ。

なかなかの出来だと思っている。


「種族評価は<ハイ・エンシェント・ドラゴン>超えたしな」


──種族選択を確定しますか? Yes/No


迷わずyesをクリックする。


───エクストラ・スキル特典を四つ選択してください。


全言語理解,空間完全把握,知覚加速,叛逆の狼煙,

完全錬成,固有召喚獣召喚,スキル合成,聖剣召喚,

思考把握……



「おぉ、まだこんな事してくれんのかよ。

大盤振る舞いだな」


〜三分後〜


「よし、コレで良いかな」


選んだ物は、全言語理解,完全錬成,固有召喚獣召喚,スキル合成だ。


──エクストラ・スキル特典を確定しますか?

Yes/No


Yesをクリック。


──最終プロセス。異世界転生を開始します。

以後ステータスを確認する場合、『ステータス』と念じてください。

では、貴方の人生に幸多からん事を。



そして、また急に眠くなって来て、その眠気に逆らわず眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『急がば回れ』って言葉は異世界ダンジョンでは違うらしい。 黒猫と三日月 @fail1397

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ