(16)
見知らぬ天井。
母が、泣きながら抱きついてきた。
ああ、僕は生き返ったのだ。
柚葉の、おかげで。
僕は、予定通り、一人暮らしをしながら、高校に通うことにした。
幸い、まだ五ヶ月の遅れだったから、これから休まなければ、ギリギリ単位数が足りるとのことだった。
遅れを取り戻すために、猛勉強した。
なりたい職業が、見つかったから。
それから、僕は無事、大学に進学した。心理学を専攻した。
在学中に、臨床心理士の資格をとった。
友達も、結構出来た。バイトもした。今考えると、結構理想的なキャンパスライフを送れたと思う。
僕は、柚葉の墓参りに来ていた。持ってきた、花を添えようとすると、先客がいた。
「悠花さん…………。お久しぶりです」
「あら、すっかり大きくなったわね」
悠花さんは、そう言って、にっこりと微笑んだ。
世間話も程々に、僕は柚葉の墓前に立った。線香をつけ、合掌、
柚葉、元気かい? 今、僕はとある中学校で、スクールカウンセラーの仕事をしている。大変だけど、やりがいがある仕事だ。
かつて柚葉が僕を励ましてくれたように、僕も誰かを励ますんだ。
水の滴る音が、どこからか聞こえた気がした。
水神 P.sky @P_sky
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