ももこの憂鬱
私、ももこは就活生である。
そして、こうやって定期的に仲間と会を開き、情報交換をする、意識高い系女子である。
「やっぱあれじゃない?K社って絶対顔面接だよね。これ言っちゃ悪いけどM子ESで落とされたって言ってたし。Y美なんて一次で『あなたは最後まで頑張ってくださいねー』って言われたらしいよ。マジわらっ」
「Kは窓口業務だからねー。仕方ないよ」
「や、絶対自分らのエゴっしょ。可愛い女子社員の方がいいじゃん」
「それ言ったらどこも同じー。あー私の人生一体なんなんだろ」
めぐみ、ゆうこ、さき、そしてももこの4人は、平日のファミレスでなんやかんや愚痴を言い合っていた。黒髪をゴムで一つにくくり、前髪をがっちり固めて控えめのメイク、そしてダークスーツという4人は、いかにも就活生のそれであった。
みんなつい2、3ヶ月前までは茶髪にピアス、濃いメイクと、ひらひらのスカートにヒールを履いていたのに。
ももこははっきり言って、個性を外見以外で判断したことはなかった。
だからみんな一斉に「就活生」という地味スタイルに走るこの時期、彼女らがいかに軽薄で慎みのない中身であるかがももこにはよくわかった。
「ももこはさ、Rで内定出てんでしょ?まだ上狙ってんの?」
めぐみがももこの顔を覗き込んだ。
そしてもうほとんと氷の溶けてしまっているアイスティーをストローでちょっとだけすすった。
「うーん。第一志望は一応Fだからなぁ。Fが出るまではとりあえずいろんなとこ受けるつもり」
「そっかぁ。私なんてまだ一個も取れてないよー。やっぱ高望みしすぎたかな。ねえ、どう思う?私いける?」
ももこが喋り終わらぬうちに、ゆうこが話し始める。ゆうこはおしゃべりで、そうやっていつも自分に話をもっていく。
「いけんじゃない?ゆうこ愛想いいじゃん!」
そう言ったのはめぐみだ。
めぐみはいつもゆうこのご機嫌取りをしている。
そして、さきは何も話さない。最近彼氏と喧嘩して、別れたらしい。
さっきから不機嫌そうで、ずっとその話をしたそうに見えたが、ももこもゆうこもめぐみも、誰もさきに話題を振ろうとしなかった。
ゆうこはさきが嫌いなようだった。
めぐみにしょっちゅう悪口を言っているらしい。ももこはめぐみにその話をきいていた。
女子ってなんなんだろう。
就活ってなんなんだろう。
これは、いつ終わるのだろう。
早く、と思った。
「早く」
ももこはそう言いかけたが、誰も聞いてはいない。
いや、聞こえていないふりをする。
ももこは、憂鬱だった。
大学生も終わりに近づいたある日、 @shu-qi-ni
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