ラノベ新人賞長編初挑戦作。2008年10月1日、第14回スニーカー大賞〆切当日に応募『新・異国文化体験記』(投稿以来修正一切無し)。こんな酷い作品からでも一次通過を二桁回数経験する所までは成長出来ます

応募要項の下限枚数、400字詰め原稿用紙換算200枚以上を、スニーカー大賞の当時のワープロ原稿基準40×30字なら67枚以上書けば満たすと当時は思っていて、改行や空白行をたくさん使ってページ数を稼いでいました。


【以下本文】


皆さんは海外旅行をしたことはありますか?


そう聞かれると数カ国程度なら『ある』と答える人は多いと思います。

しかし、世界中のありとあらゆる全ての地域を余すところなく旅したことがあるという人は、ほとんどいないと思います。


世界中を旅するって莫大な時間とお金がかかるし、なかなか手が出ません。

もし日本国内で手軽に世界中を旅している気分が味わえる場所があるとしたら……

その場所が実在するんです。日本にいながらにして世界中の暮らしや文化を体験できる夢のような場所が……


異文化交流を目的とした超巨大テーマパーク、その名は

『翡翠塚市ワールド・エスニック・ランド』


行った人の感想によると、とにかく今まで誰も味わったことの無いすごいインパクトのあるテーマパークだそうです。私、朝霧雲雀14歳は受験勉強の息抜きに夏休みを利用してその場所へ4泊5日の一人旅することになりました。


「まもなく発車します。ご乗車の方はお急ぎ下さい」


7月29日 午後9時、私はそのテーマパークへ向かう寝台列車に乗って出発します。

私の住んでいる街から所要時間は約10時間です。

「あれっ、窓から外の景色が見れないようになってるよ」

不思議に思った私は車掌さんに質問してみました。

「それは到着してからのお楽しみにしているからですよ」

「そうなんだぁ、それほどすごいテーマパークなんですね?」

「それはもう、今まで誰も体験したことが無いような気分になれる不思議なテーマパークですよ。駅のホームに降りた瞬間、まず驚くでしょう。さらに外へ出ると、さらなる驚きが待っています」

「とても楽しみですーっ、では車掌さん、おやすみなさい」


 7月30日 朝6時半


私は目が覚めました。おトイレと顔洗いと歯磨きを済ませ、旅の準備を整えました。

カメラに思い出をいっぱい収めたいです。


「まもなく到着いたします。車内お忘れ物なさらないようにお気をつけ願います。今までに無い体験をお楽しみ下さい」


7時、寝台列車はこのテーマパークの陸の玄関口にある『翡翠塚中央駅』に到着しました。


扉が開き、駅に降り立ちます。大冒険の始まりです。



「すごい、すごい、すごーい、見たことも無い形の列車がたくさんあるーっ。それに外国人もいっぱい。さっそく写真撮らなきゃ」


ホームにカラフルな電車がたくさん停まっていました。


耳を傾けるといろんな国々の言葉が聞こえてきます。

本当に異国の地に降り立ったみたいです。

とても日本国内とは思えません。


この駅は超巨大な駅ビルになっています。京都駅ですら比べ物にならないほど広いです。


まず私は観光案内所でテーマパーク内の案内図をもらいました。

案内所の人も外国人が多いです。


私は無理して英語で話してみました。

「エクスキューズ ミー……、えっと……」

「日本人の方ですね。こちらが日本語版の案内図となっています」

イギリス人っぽい人でしたが日本語が通じて良かったです。

「なんか他にも見たことも無いような文字で書かれているのもあるのですが、全部でどれくらいの種類があるんですか?」

「全部で数千種類あります」

ここのテーマパークでは世界中の誰でも利用できるように使用人口が少ない原語でも大切に取り扱っているそうです。記念に珍しい外国語版もいくつか貰っておきました。

「ヤップ語にドンガン語にウォロフ語……聞いたことも無い言語ばかりだな」


次に朝ごはんを食べるため、駅の地下にある食堂街に来てみました。

「いろんな国のお店あるーっ、フランス料理店や中華料理店やメキシコ料理店や……」


いろいろ迷った挙句、無難に値段が安そうなファーストフード店にしました。

「あそこにハンバーガーショップがある。あそこにしよう」


カウンターで注文します。


「Good morning!」

「Good morning. What would you like?」

「Three fish burger and fried potato and chicken and cola please」

「What size?」

「Large size, please」

「For here or to go?」

「To go」

「All right」

「That’s 2 dollars and 10 cents please」

「Here you are」

「Thank you, See you」

「See you」


前にいた大柄のアメリカ人っぽいお客さんが英語で注文していました。「

「どうしよう、私、英語苦手なのに……それにドルとかセントとか言ってるよ。お金これで大丈夫なのかな?」


「お待たせしました。日本人のかたですね。ご注文はいかがなさいますか?」

私の番になると店員さんは日本語で話してくれました。とりあえず一安心です。


「チーズバーガーとポテトとメロンソーダ、それぞれMサイズを下さい」

「チーズバーガーM、フライドポテトM、メロンソーダMですね。お持ち帰りですか? それともここで召し上がりますか?」

「ここで召し上がります」

「では59番の番号札でお待ち下さい」


 しばし席に座って待ちます。


「29番の番号札をお持ちの方、お待たせしました」

注文したものが出てきて私は驚きました。


「私、Mを注文したんですけど」

「これがMサイズよ」

「なんかとても大きいですよ」

「驚いたでしょう。本場アメリカと同じ形式で売っているのよ。値段も安いでしょう。日本の通貨で50円よ」

「このお店では日本の通貨でもアメリカの通貨でも使えるんですか?」

「ここだけではなくてこのテーマパークではどのお店でも世界中どこの通貨でも使えるわよ。物価も低くて最高でしょう」

「はい、ここは夢の国です」


注文を受け取って席に戻ります。


「どうしよう、困ったよ。大きすぎて全部食べ切れないよ」


私には量が多すぎました。でもっ、捨てるのはもったいないです。


「どうしよう、どうしよう……そうだ、誰かに手伝ってもらおう。でもどうやって話しかけよう。回りは外国人ばかりだし」


 辺りをきょろきょろ見渡しました。

「あっ、日本人の男の子がいた。良かったぁ、あの子に頼もう」

 私は男の子のもとへ駆け寄りました。


「こんにちは」

「こんにちは。あのっ、お姉さん何かごようですか?」

「じつは、Mサイズが大きすぎて食べきれないの。手伝ってくれない?」

「このテーマパークへ来たのは初めてなんだね。よくある失敗だよ」

「そうなんですよ。本当に外国に来たみたいで戸惑っています」

「僕はこの街に10年以上暮らしてるんだ」

「へぇー、あれっ? でもここってテーマパークの中だよね? ディ○ニ―ラン

ドとかU○Jとかもそうだけど普通、人は住んでないよね?」

「ここは一つの街のようになっているんだよ。このテーマパークは昔、温泉街で古き良き日本の町並みが広がる小さな村だったんだけど海外の人にこの村の魅力をどんどん伝えたいとアピールして、外国から日本文化を学びたいという人々を数多く受け入れるようになったんだ。そしていろんな国の文化が入ってきて、こんなに異国情緒あふれる賑やかな街になったんだよ、もちろん昔の町並みはそのままにね。外国人にとっては日本文化が体験できる場所、日本人にとっては異国の文化が体験できるようになっているんだよ。ここに住んでいる外国人は日本が大好きな人ばかりで日本語も話せる人がほとんどだよ。日本語が通じる外国みたいな場所かな。これだけの異文化が一つの街に集まったっていうのは世界中でこの場所くらいなもので珍しいですから、この街ごとテーマパーク化されることになったんだよ。つまり翡翠塚市の面積=ここのテーマパークなんだ」

「日本語が通じる外国なんて不思議だね。でもなんかほっとしたような、積極的に話しかけてみよう」

「逆に言えばこの駅前の雰囲気はイタリアをイメージしているんですが、イタリア人観光客がここに来た場合、住民のかたは日本語を使いますからイタリア語が通じないイタリアに来たような感覚になるんです」

「新しいタイプの海外旅行みたいだね」

「ここには他の日本の街では見られない野生動植物もたくさん見れますよ。地球環境保護もこの街のスローガンになってるんだ」

「本当に素晴らしい街だね」

「日本にいながらにして世界中を旅した気分にもなれるし、外国の文化がいっぱい学べるし、物価も低くてこんな夢のような街、最高だよ」

「私もいつか住んでみたいな。ところで、キミのお名前は?」

「妙法寺翼だよ」

「キミ小学生?」

「ボクはよく小学生に間違えられるけど中学3年生、14歳だよ。」

「私は朝霧雲雀だよ。私と同い年なんだ。年下かと思ったよ。私、翼君みたいな小さくてかわいい男の子大好きだよ。お顔も女の子みたいな顔立ちだし、お肌もすべすべで触り心地が良いなぁ」

「はっ恥ずかしいです」

「照れちゃってかわいいなぁ。ポテト食べさせてあげる。ハイ、あーんして」

「……」

「やだぁ、ますます顔が赤くなってるよ」

「……とっとにかくこのテーマパーク、というより街は魅力的なスポットが山のようにありますから楽しんでくださいね」

「ありがとう」


かわいい男の子とお別れして、駅の外へ向かいます。

以下、ここのテーマパークのことは街と呼びます。


「わぁ~、なんかとても日本国内とは思えないよ」

駅の外観もとても立派です。他の日本の街では見られないようなヨーロッパのお城のようです。

駅前の風景を見ると本当にイタリアへ来たような錯覚に陥ります。


巨大な有翼のライオンの銅像がありました。

「ライオンさん、おはようーっ、あっ、あっちはダビデ像さんだ。あの格好は恥ずかしくないのかなぁ? お洋服着せてあげたいなぁー」


私、興味を持ったものに何でも構わず話しかけてしまう癖があるんです。


噴水広場で見慣れないお菓子を食べているかわいい外国人の女の子を見かけました。どどこの国の子なんだろう? 見た目ではイタリア人っぽいなぁ? 

日本語が話せる人が多いって聞いたけど大丈夫かな? 観光客だったら話せないかもしれないし、イタリア語分からないから一応英語で話しかけてみよう。

そう思った私は、ほとんど話せないのですが勇気を出して英語でその子に話しかけてみました。


「Hello!」

「コンニチハ、お姉ちゃん日本の人だよね? アタシ日本語話せるのーっ」

「日本語話せるんだぁー、すごーい。あなたのお名前と年齢と出身地はどこかな?」

「アタシの名前はクラーラ、イタリアから来た11歳なのーっ、この街に住んで6年になるのーっ」

「クラーラちゃんかぁ~、私は朝霧雲雀14歳だよ」

「ひばりお姉ちゃん、この噴水にコインを入れると願い事が何でも叶うんだよ」

「へぇ~、トレヴィの泉みたいだね」


もちろんやってみました。大成功です。

「クラーラちゃん、このお菓子は何かな?」

「これは、『カンノーリ』って言うイタリアのお菓子なのーっ」

クラーラちゃんは、私にそのお菓子を分けてくれました。


「んーっ、イタリアのお菓子も美味しいね」

「そうでしょう? アタシは日本のお菓子、和菓子も大好きなのーっ、形もきれいで素敵なのーっ」

「外国の人に和菓子を気に入ってもらえて嬉しいな。クラーラちゃん、また会おうね」

「Ci vediamo, ひばりお姉ちゃん、この街を楽しんでね」


11歳とは思えないほど幼くてかわいい女の子でした。


路面電車の乗場の近くで面白いものを見つけました


「ああっ、あれ真実の口のおじさんだぁ。おはよう」

ついつい彫刻に話しかけてしまいました。

「おじさん、私の手を噛まないでね」


よかったぁ、噛まれませんでした。私に偽りの心は無いみたいです。

ここの街は至る所に彫刻や銅像などが建っています。


路面電車に乗るため、切符を購入します。

「あれっ、サイフがないよ……」

私はサイフをどこかに落としてしまったようです。トラブル発生です。

「もしかして、スリ?」

しばらく探し回っていると私の目の前に身長2メートは軽く超えている大きな男の人が私に日本語で話しかけてきました。恐怖心が先回りし、私は思わず逃げ出してしまいました。


「きゃぁ、誰か助けてくださいーっ、大きな男の人が追いかけてくるんです」

「お嬢さん、財布を落としたよーっ」


私は我に帰りました。


「ハァ、ハァ、サッサイフ拾ってくれたんですか? あっ、ありがとうございます。ごめんさい、私、怖くてつい逃げてしまって」

「ボク、とても大きいからね。気持ちは分かるよ。ハッハッハ」

「あのぅ、お兄さんはどこの国のかたですか?」

「オランダだよ」

「風車とチューリップの国ですね」

「その通り、チーズも有名だよ。オランダ風の街もあるから楽しんで行ってねー」


とても親切な人でよかったです。失礼ながらお金を盗られていないかサイフの中身を確かめてしまいました。


地図を見ると道が放射状に広がって迷路みたいな構造になっています。油断すると迷子になってしまいそうです。そのため、街の至る所にガイドさんがいます。様々な施設の案内もやっています」



 電車に乗り込み、出発進行です。


「次の停車駅は、聖パウロ大聖堂です」

「Next stop is……」

 

日本語に続き観光客用に英語をはじめとする様々な国の言葉でアナウンスされます。日本ではあまり見られない大聖堂がありました。

窓から景色を眺めるとその他にも神殿、修道院、宮殿などが建ち並んでいます。


 この街の路面電車は1日乗車券50円で乗り放題です。


「まもなくゴールデンタワー、ゴールデンタワーです」

 

この街一番の高さを誇り、名前の通り金色に輝いています。

タワーの高さは300メートル、展望台は250メートルにあります。ここから街全体を一望できます。

北に山、南に海があり、地形も最高です。


「いい眺めーっ、あっ、なんかすごく古びたヨーロッパ風のお城がある。なんか怖い。お化けが出てきそう。遠方の砂漠みたいな場所にはピラミッドも見えるよ。海の方は島もたくさんあるし……」


 全方角から写真に収めました。タワーから降ります。


「日本のお客様、お帰りはこちらのご利用はいかかですか?」


このタワーには絶叫マシーンでお馴染みのフリーフォールもついています。展望台から一気に下まで降りることが出来ます。私は怖いので乗りませんでしたが……


再び路面電車に乗り次の目的地まで移動します。


「次はシスティーナ礼拝堂、次はシスティーナ礼拝堂」


 本物はヴァチカン市国にあるのでずが、見事に再現されています。

「すごーい、天井にいっぱい絵が描いてある」


 


「次は斜塔前、斜塔前です」

ここでは有名なピサの斜塔が再現されています。


「本物そっくり。斜めに傾いてる。さっそく写真に撮ろう……私も写りたいから誰かに撮ってもらおう」


 周りは外国人観光客ばかりです。

私は片言の英語しか話せないので困りました。

 

「あそこのアメリカ人っぽい人に頼もう」


勇気を出して英語を使います。

「エクスキューズミー、あれっ写真を撮って下さいってどう言うんだろ?……フォト、えーと、プリーズ……」


分からなかったので、カメラを差し出して身振り手振りで表現しました。

「OK,OK, HAHAHA」

「サンキュー」

何とか通じたようです。



ここからは路線バスに乗ります。


「次は地中海庭園、地中海庭園です」


大きなお庭の中にたくさんの木々や花が植えられていました。

庭園の中にある喫茶店でランチタイムです。

「涼しくて気持ちいい」

蒸し暑い屋外から入ると一安心です。

「Hola,こんにちは、日本のお客様。ご注文は何になさいますか?」

「メニューが多すぎて迷います。どれにしようかなぁ」

「それでは、おすすめのお料理を作ってきますね」


どんなお料理が出てくるのか楽しみです。


「お待たせ、『ガスパチョ』とデザートは『フラッペ』と『アロス・コン・レチェ』よ。暑い今の季節にぴったりよ」

「良い香りーっ、いただきます……んーっ、とても美味しいです」

「喜んでもらえて嬉しいわ。これはラベンダーで作った髪飾りとシャンプー、あなたにプレゼントよ」

「わ~い、ありがとうございます。髪飾り、かわいいな」


 私は早速飾ってみました。

「まぁ、よくお似合いですよ、お姫様みたい」

「お姫様だなんて、恥ずかしいですよ。おばさんも美しいですよ」

「まぁ、嬉しいわ。お礼にフラメンコ踊ってあげる」


さすがはスペインです。踊りが始まりました。

他のお客さんも『オレ!』などと掛け声を出しながら楽しんでいます。


「Hasta luego! また来てね」

「はい」


庭園を出て、スペイン通りを歩いてみるとお土産屋さんとかは今の時間帯は閉まっているお店が多いです。お昼寝(シエスタ)の習慣が見られます。日本の夏も暑いですからね。

この間に東中北欧の街並みを拝見します。


ブルガリアのお土産屋さんに入ってみました。


「ドーバル・デン、こんにちは日本のお嬢さん」

「こんにちは、バラの香りがいっぱい。ブルガリアってヨーグルトのイメージしかなかったんですけど、バラも有名なんですね」

「そうだよ、土産屋に来るとその国の文化がよく分かるだろう?」

「はい、わぁ~、このローズオイル人形かわいい。それとこの『カバル』っていう楽器を下さい」

「ブラゴダリャ、ありがとうお嬢さん。ブルガリアは長寿の国でもあるんだよ。元気なお年寄りが多いんだよ」


「おーっ、若いお嬢さんじゃないか」

とても若々しいお爺さんが出てきました。


「こちらはボクの曽祖父で105歳だよ。今でも現役でバラの栽培を続けてるよ」

「とても元気そうなお爺さんですね」

「わしゃ、まだあと100年は生きるつもりじゃ」

「これからも元気に長生きしてくださいね」



続いてウクライナのお土産屋さんです。


「ドブリー デニ、こんにちは、日本人のお嬢さん」

「こんにちは、わぁ~、すごい、卵に絵が描かれてる。細かいところまで装飾がとてもきれいです。これ、全部お爺さんの手作りですか?」

「そうじゃよ。これは、イースターエッグと呼ばれて数千年の歴史があるウクライナなどの伝統工芸なんじゃ」

「とっても器用ですね」

「フォッフォッ、かわいいお嬢さんに褒められて嬉しいわい、これもプレゼントじゃ。これは小麦などの栽培に適したチェルノーゼムの黒土じゃよ」

「ありがとうございます。お爺さん」

「わし、日本の工芸品も大好きじゃよ」

 お爺さんは奥の部屋からいろんななどを持ってきました。


「招き猫さんの置物だ。こっちは有田焼のお茶碗、信楽焼きのタヌキさんの置物……」

「これらも全てわしの手作りなんじゃ」

「素晴らしいです。お爺さんは日本料理も好きですか?」

「もちろんじゃ、特にみたらし団子とか大福とか甘い和菓子が大好きじゃよ。他にもお正月に孫が遊びに来た時はお年玉をあげたり、福笑いや凧揚げ、百人一首などをしたり……」

「とても日本風な過ごし方ですね」

「百人一首は全て暗記してるんじゃ」

「日本人でも難しいのに、とてもすごいです」

「そうそう、わしは日本の歌も歌えるんじゃよ」

「すごいです。何か歌ってください」

「それでは富士の歌を歌ってあげよう。頭を雲の上に出し、四方の山を見下ろして、雷様を下に聞く、富士は日本一の山……」

「すごいです。2番目まで完璧です」

「お嬢さんのお名前は何かの?」

「朝霧雲雀です」

「その名前を漢字で書いてあげよう」

「漢字も書けるんですか?」


 お爺さんは見事に正解しました。


「お爺さん、日本文化にも日本人以上に精通してて立派です」

「これからもどんどん日本文化を学んでいくよ」


続いてハンガリー街にやって来ました。

 この国もヨーロッパなのですがアジア系マジャル人が多い所です。


それにしても昼間に外を歩くと暑いです。そんな時にプールを見つけました。


「わぁ~、屋外プールだぁーっ。外歩いて汗いっぱいかいたから入ろう」


「ヨー ナポット、こんにちは、日本人のお客様、ハンガリーの温泉へようこそ」

「ここ温泉だったんですか? 外国にも温泉があって驚きました」

「ハンガリーは温泉大国よ。ただ、日本の温泉とは違ってここでは水着などを着用して入ります。わたしも日本の温泉も利用したことがあるのですけど人前で素っ裸になって入るのはちょっと恥ずかしかったよ」


水着に着替えて泳いで楽しみます。


泳いで遊んでいると眼鏡をかけ、とても賢そうに見える女の子を見かけました。水に浸かりながらルービックキューブを回していました。興味を持ったので話しかけてみます。


「日本語で大丈夫かな? こんにちは」

「こんにちはめです」

日本語ですが語尾が特徴的な女の子でした。

「私、朝霧雲雀です」

「日本人のお方めですね。ワタクシはイタリアのシチリア島、シラクーサから来たリアーナめです。この街には3年ほど暮らしているめですよ」

「あなたもこの街の住民なんですね。あのぅ、失礼かもしれませんが、どうして水につかりながらルービックキューブをしているんですか?」

「その方が脳が活性化されるからでめですよ、ひばり様。もうすぐ開催される大会に向けて日々精進しているでめです」

「リアーナさん、技を見せていただけませんか?」

「もちろん、喜んで」


 リアーナさんは僅か数秒で6面全てを完成させました。

「すごいです。リアーナさん。私もやったことがあるけど全然出来ませんでした。優勝は間違いなしですね」

「ワタクシも去年そう思って出場したらやはり世界は広かったでめです。私の技をはるかに上回る強敵がいっぱい存在したでめです」

「えーっ、もっとすごい人がいたの?」

「彼らの出身地のほとんどがハンガリーでめでした。その国は科学者の国とも言われ、優秀な頭脳の持ち主がたくさんいるめでした。ルービックキューブの発明者の出身地でもあるでめです。いつも5位くらいで終わっているので、今年こそは絶対に優勝を目指すでめです。いつもハンガリーの人が優勝してしまって悔しいでめですよ」

「頑張ってくださいね」


 隣接してお土産屋さんがあります。


「ヨー ナポット、こんにちは」

「こんにちは、おばさん、わぁ~、きれいな刺繍がいっぱいある。民族衣装も素敵」

「あなたも着てみてね」

 試着させてもらいました。


「まぁーっ、とても美しいわ」

「おばさんの衣装もよく似合ってますよ」

「嬉しいわ。お礼にプスタの土をプレゼントするわ。ヒマワリ栽培に最適よ」 

「ありがとう」

「食べ物も美味しいものがいっぱいあるわよ」

「パプリカとフォアグラだ。安い」

「ハンガリーの名産品だからね」


他にも寄りたいお店が一杯ありました。


中欧の街にはフランスのモネの庭をモチーフにした庭園やストーンヘンジのような場所もありました。

 

公園で宝探しをしているような光景を目撃しました。


「あのう、これは何をしているのですか?」

ガイドの方に尋ねてみました。

「これはトリュフ探しよ。あなたもやってみる?」

「もちろんやってみます」


トリュフ犬をお借りして、宝(トリュフ)探しです。

「ワンちゃん、いっしょに頑張ろうね」

「ワ、ワン」


 トリュフ犬も楽しそうに捜し歩いています。


「なんか、『はなさかじじい』を思い出したよ。裏の畑でポチが鳴く、正直爺さん掘ったれば、大判、小判がザクザクザクザク……あっ、この場合ポチがこのワンちゃんで、お爺さんが私で、大判小判がトリュフだね」

「ワン、ワン、ワン、ワン」


突然、ワンちゃんが吠えました。ついにトリュフ発見でしょうか? 早速地面を掘ってみます。

「ここだね、ワンちゃん?」

「ワン」


 数十センチ掘ると見事に見つかりました。ワンちゃんのお手柄です。

「ワンちゃん、ありがとう」

「ワワン」

 「わぁ~、大鐘楼だぁーっ」


ここはイギリスのウェストミンスター教会にある時計塔『ビックベン』をモデルにして作られています。


午後3時になりました。

大鐘楼の鐘が鳴り響きます。






パリのエトワール凱旋門をモデルにした門を抜け、北に進んでいくとネス湖をモデルにした大きな湖に出ます。

 冬は白鳥たちの宝庫になるそうです。


 湖畔で楽器の演奏もしたり歌を歌ったりしている人を見ると心が和みます。


写真を撮ったり、小鳥さんたちに話しかけたりしていると、突然、湖の中からあの恐竜のような物体が現れました。


「ああーっ、ネッシーさんがいるーっ」


私は追いかけていきました。

「きゃあ、こっちへ来て、ネッシーさん」


私の呼びかけに答えるようにお顔を近づけてきました。

すると突然口の中から人が出てきました。


「ハッハッハ、驚いたかい? これは潜水艦だよ。でも本物みたいだろう?」

「はい、よく出来ています。びっくりしました」

「これは、交通手段にもなってるんだ。北欧街へ繋がってるよ」

「もちろん乗ります。楽しい乗り物です。お口の中から入るんですね」


潜水艦に乗って移動します。

船内はとても広く豪華客船みたいです。

 潜水艦の窓から水中を観察します。


「湖の中にいろんな生き物が泳いでいますね」

「多いのはブラックバスやブルーギルとかだな。だがそれだけではなく、この湖の中にはこれはレプリカだけど本物の未確認動物もいるらしいんだ。観光客や近くの住民の人からいろんな情報が寄せられているよ。周辺の森にもいろいろ棲息しているらしい」

「ロマンがありますね」

「あっちの部屋にある資料館には皆から寄せられた写真がいっぱい展示されてるよ。見に行ってごらん」


興味津々の私は早速見に行って見ました。


「Hello,こんにちは、UMA資料館へようこそ」


解説者の人に案内してもらいます。

「あっ、首長竜の写真だ。長い首しか写ってないけど」

「この恐竜はプレシオサウルスです。三畳紀後期からジュラ紀前期にかけて棲息していた首長竜の一種です。他にも絶命したはずの恐竜の目撃情報が写真と共に寄せられています。その他この湖にはリーン・モンスター、モーゴウル、森の中にはモラーグ、バードマンと呼ばれるUMAの目撃情報が多数ございます。この周辺を観察しているとあなたもUMAを目撃できるかもしませんよ」

「確かにこの湖の周り、不思議な雰囲気が漂っていましたからね」


潜水艦が上昇しました。私はカメラを手に取りシャッターチャンスを窺います。


 しばらく辺りを見回してみましたが、全く見つかりません。

「雨の日や霧が出た時に見れる可能性が高いですよ」

「あーん、残念です」


 またいつか来てみたいです。


「まもなく青の洞窟、青の洞窟です」

潜水艦はゆっくりと洞窟内に入っていきました。有名なイタリアのカプリ島にあるものを再現しています。

午前中に見に行くともっと美しく見えるそうです。


日本では出来ないフィヨルドも精密に再現されていました。


1時間ほどで到着しました。ここの湖畔には人魚姫の像もありました。



街にはカラフルなおウチがたくさん建ち並んでいます。


デンマーク街のアンデルセン博物館に入ってみました。


「アンデルセンの童話、ちっちゃい頃によく読んでたよ。懐かしい」


アニメ映画も上映していました。外国語だったので言葉は分かりませんでしたが。


売店には言語版の絵本も売っていたので記念に買いました。


次にノルウェー出身の画家、ムンクの美術館に入ってみました。


「これ、有名な『叫び』の絵だ」

私は絵の真似をしてみました。

「睨めっこしましょ、アップップ~……あんっ、やっぱ勝てないよ」


 後ろを振り返ると大勢の人が私を見て微笑んでいました。

「はっ恥ずかしい……」


 私は顔を真っ赤にしながらすぐにその場を立ち去りました。


「この絵は『マドンナ』かぁ。ムンクさんの絵って『叫び』しか知らなかったよ。『幻影』とか怖い絵もいっぱい」


美術館を出た後は市場にやって来ました。ここには新鮮な魚介類などがたくさん売られています。


「お嬢さん、面白い缶詰があるよ」

「あっ、この缶詰、世界一臭い缶詰と噂の……」

「その通り、シュールストレミングだよ。ニシンを塩漬けにして、缶の中で発酵させたものだよ。開けてみようか?」

「いっ、いえいえ結構です」

「ハッハッハ、冗談だよ。ここで開けたら大変なことになるからな。サーミの民族衣装もあるよ。今着ると暑いけどな」

「これ欲しいですーっ」

「まいどう、お嬢さん、また遊びに来てくれよー」


次に北欧野生動物パークに入ってみました。



「こんにちは、日本のお嬢ちゃん、館内を案内するね」


薄暗い森の中へ入っていきました。


「この森の中にはたくさんの動物たちが棲息しています」

「この雰囲気、森の妖精さんたちも現れそうだね。それに涼しい」


「あそこの木をご覧下さい」

「フクロウさんだぁーっ、こんにちは、ホー、ホー……」


ついつい鳴き声を真似してしまいました。

「このフクロウは『オナガフクロウ』です。他にもたくさんの種類がいますよ」

「名前の通り尻尾が長いですね」

「フクロウは『森の賢者』と呼ばれていて、『知恵の神』とか、『英知の象徴』とも呼ばれています。漢字では『梟』以外にも苦労をしない『不苦労』とか服が来る『福来郎』と書かれることもあって縁起がいい鳥とされています」

「そうなんですか、フクロウさんに会えて幸せです。私にも福が巡って来ますね」

「ところが、死を運んでくる不吉な動物だと考えられている地域もあります」

「お顔は人間みたいでユーモアがあるのに、不吉とされるのってなんだかフクロウさん可哀想です」

「グリム童話では『かわいそうなフクロウ』というお話があります。このお話はフクロウを初めて目にした町の人々が悪魔だと思い込み、焼き払われるというものです」


 ガイドさんはその物語の内容を詳しく説明してくれました。私も悲しくて涙が出そうになりました。


「ここにいるのは一見するとフクロウのようですが、ミミズクよ」

「耳が生えてるからミミズクさんなんだね」

「もちろん例外もいるけれど、多くはそれで見分けられるよ。この子はコノハズクという種類で日本のこの街以外でも見られます」


どんどん奥へ進んでいきます。


「ここの木陰をご覧下さい」

「あーっ、フェレットちゃんだぁーっ、かわいいーっ、こんにちはーっ」

仕草がとてもかわいいです。

「この子たちは日本の夏の暑さにはとても弱いですから今の時期は昼間は木陰にいることが多いですよ」

「こっちのはオコジョさんだ。こっちもかわいいな」

「ただ、見た目にはよらず気性の荒くてノウサギや雷鳥を食べることこともあります。空にもいろんな動物達がいますよ」


森を抜けると屋外プールが出てきました。

「シロクマちゃんだ、なんか暑そうだねーっ」

「夏になるとあんな感じだよ。氷をプレゼントすると大喜び」


 次はアザラシさんの所です。


「きゃぁーん、かわいいですぅー。こんにちは、アザラシさん、睨めっこしましょう、アップップ」

 アザラシさんと勝負です。

「……」

「キュィ」

「……」

「キューン」

「アハハハ……ダメでした。私の負けです」

「アザラシさんと睨めっこする人は多いですよ。ほとんどがアザラシさんの仕草に微笑んでしまって負けます」

次はアシカさんです。

「ここではアシカのショーも見れるよ」

「楽しみです」


 もちろん最前列で見ました。


 次はオットセイです。

「こんにちは、オットセイさん、オゥオゥ」

「オゥォ」

 私が鳴き声を真似するとオットセイさんも答えてくれました。

トドとセイウチはとても迫力がありました。


もう一つの交通手段、地下鉄で再びスペイン街に戻ります。夕方になるとお店も再開します。

スペイン街の美術館に入ります。


「ゴヤの『裸のマハ』さん、見てる私の方が恥ずかしいよ。着衣の方が好きだな。ベラスケスさんの『鏡の前のヴィーナス』も結構恥ずかしい絵だな」


ピカソの作品の部屋に入りました。

「ピカノの絵画っていつ見ても不思議。この『アヴィニョンの娘たち』の絵も体のバランスが独特だけど結構恥ずかしいな」

ゆっくり見ると一日あっても足りないのでかなり急ぎ足です。

 ここでのお土産は絵画のパズルやポスターなどを買いました。


スペイン街にはおなじみの闘牛場もあります。

通りにジャンポ野菜果物博物館という変わった建物があったので、入ってみました。


館内に入るといきなり巨大なカブが目の前に現れました。


「うわー、すごい」

「いらっしゃいませ、お嬢さま、これはロシアの民話をモチーフにしているんだよ」

「『おおきなかぶ』ですね。絵本で読んだことがあります。わーっ、こっちは巨大なサツマイモだーっ」

「こちらは日本の絵本がモデルになっています」

「何百人分も食べれそうですね」

「ここまで大きくなると食べても美味しくないですよ。これは毎年10月にジャンボ野菜果物コンテストが開催されて、大きさや重さを競うコンテスト用に作っているんだよ。こいつが今年優勝したジャンボ・カボチャだよ」

「私の背丈よりも大きいです。中に入れそう」

「コンテストの後は中身をくりぬいて馬車や船として利用されるんだよ」

「そういえば、何台か見かけました。メルヘンチックで素敵です」

「この街のタクシーみたいなものだよ。お嬢さまも乗せてあげますよ」

「きゃぁ、嬉しいよーっ」


乗り場にはスイカやカボチャなどで作られた馬車がたくさん停まっています。

「どれにしようかなぁ、やっぱりシンデレラに出てくるカボチャかな」

「それでは、出発いたします」

「乗り心地最高です」

「お嬢さま、ガラスの靴もサービスしますよ」

「私、本当にシンデレラさんになった気分だよ」


カボチャの馬車に乗せてもらい、今夜のホテルに到着です。


「うわぁ~、すごい豪華、ベルサイユ宮殿みたい」

あまりの立派な建物に驚愕しました。

「308号室ですね。階数の数え方に気をつけて下さいね。日本でいう1階はここではグランド・フロア、その上の階が1階となります」

階数の数え方がイギリス式になっていました。

お部屋の中に洋室はもちろんのこと外の概観からは想像できなかったのですが和室もあって、ふすまや障子がありました。和洋折衷です。大変豪華なお部屋なのですが一泊がわずか千円と大変お得でした」


 レストランで晩ごはんを食べます

「ここのレストランでは、様々な宗教の方々にもお楽しみいただけるようににバイキング形式となっております。日本通貨500円で食べ放題となっております」

「えーっ、あの高そうなフランス料理とかいくらでも食べてそのお値段なんですか? 夢みたいです」


私は、フランス料理の『ヴィシソワーズ』とギリシャ料理の『ムサカ』とスペイン料理の『パエリヤ』デザートはポルトガルの『フィオス・デ・オヴォシュ』、日本でいうと鶏卵ソーメンみたいなものです。お飲み物は『ミルクティー』です。太りそうです。


 お食事をしていると前方にある舞台の幕が上がり演奏会が始まりました。 

 シューベルト、ヴェートーベン、バッハ、スメタナなどの有名音楽家の曲を演奏してくれました。


続いて入浴です。このホテルにはお部屋の中だけでなく日本の旅館のように大浴場があります。和風の露天風呂です。外国人のお客様もたくさんいますが、皆さん湯船につかっていました。


大浴場に隣接してお土産屋さんがあります。

「わぁ~、かわいい。ケットシーのぬいぐみだ。これ下さい」

「日本の通貨で300円です」


大きなネコさんのぬいぐるみです。持ち運びが少し大変です。


お部屋に戻ってテレビを見ます。この街では映るチャンネル数がとても多いです。日本のテレビ番組に加え、世界各地のテレビ番組を視聴することが出来ます。特殊な衛星通信を使って海外の電波を取り入れているそうです。


「あっ、これ日本のアニメだ。吹き替えされて面白い。言葉が全然分からないけど、世界中のテレビ番組がリアルタイムで見れるなんて世界中でこのテーマパークだけだよ。本当に夢の国だよ」

 眠くなってきました。

1人だとちょっと寂しいのでぬいぐるみを抱いて眠ります。

いつも畳にお布団を敷いていたので、ベッドで寝るのは今回が初めてです。

旅の1日目が終了です。


7月31日


私の朝食はイギリス風にトーストとベーコン、スクランブルエッグ、それと紅茶です。もちろん和食もあります。外国人のお客様はそちらを食べているかたが多いようです。


「お客様、今朝はオランダ街でチーズ市が開催されているのでよろしければぜひご覧になって下さいね」

「楽しそうです。行ってみます」

チェックアウトを済まし、歩いてオランダ街のチーズ市まで移動します。昨日お土産をたくさん買ったので荷物が重いです。


しばらく歩くと荷物預かり所がありました。便利なことに今夜宿泊するホテルや自宅まで届けてくれます。ここのテーマパーク内では物価がとても安いのでついつい買いすぎてしまう人が多いようです。


チーズ市に到着しました。

見慣れない美味しそうなチーズがたくさん売られています。

私は、まず世界三大ブルーチーズを集めます。


まずはフランスからです。

「ボン・ジュール、おはよう、お嬢さん」

「ボンジュール、美味しいなチーズばっかり、ロックフォールとそれからカマンベールチーズ、この振りーチーズも欲しいなぁ」

「メルシー、ありがとう」


予定外の物まで買ってしまいました。次は気をつけないと。


次はイタリアです。

「チャオ、おはよう、美味しいチーズがいっぱいあるよ~」

「チャオ、おじさん、ゴルゴンゾーラを下さい」

「いいものを選んだね。お嬢さん。モッツァレッラも美味しいよ」

「それも欲しいです」


また予定外の物を買ってしまいました。


次はイギリスです。

「グッモーニン、おはようございます。お嬢さま」

「スティルトンを下さい」

「サンキュー」

「それからチェダーチーズも下さい」

「サンキュー、ベリーマッチ、スィーユー」

「スィーユー」


これで世界三大ブルーチーズをコンプリートしました。

それ以外にもたくさん買いましたけどね。


他の国々のチーズも見てみます。

スイス

「グーデン モルゲン、スイスのチーズ屋さんへようこそ」

「これ、絵本で見たことがある。このエメンタールチーズ下さい」

「ダンケ・シェーン、ありがとう」


 穴がたくさん開いたチーズです。

ギリシャ

「カリメーラ、嬢ちゃん」

「フェタチーズ下さい」

「エフハリスト、ありがとう」


最後に本場オランダのチーズ売り場に来てみると、昨日出会ったとても大きな男の人がいました。


「ああっ、私に財布を届けてくれた大きな人だ」

「やぁ、フーテ モルヘン、日本語では、おはよう、だねーっ」

「おはようございます。あっ、昨日私に財布を届けてくれた大きな人だ。チーズ屋さんだったんですね」

「そうだよ、ちなみにボクの名前はディックだよ」

「私の名前は朝霧雲雀です」

「ひばりちゃんかぁ、いい名前だね」

「ディックさん、身長は何センチですか?」

「2メートル25センチだよ。この街一番の巨人さ。ここまで大きくなれたのはチーズのおかげだよ、ハッハッハッハ。これがボクの故郷を代表するゴーダチーズとエダムチーズ、とっても美味しいよ。試食してみてね」

「わぁーい、いだだきます。んーっ、美味しいです」

「ダンク ウ ヴェル、ありがとう」

「ディックさんは日本語も話せるのでここの住民なんですね?」

「その通りだよ、この街に住んで7年くらいかな。ボク日本が大好きなんだ。でも夏がとても蒸し暑いのが嫌だな。まるで東南アジアだよ」

「日本の夏は赤道直下と変わらないですからね」

「赤道直下といえば、ここから水上バスに乗ってどんどん南へ下っていくと、アマゾン川みたいになってくるよ。そこで体験クルージングが出来るんだ。とても楽しいよ。避暑地もあるよ。ルーマニア街にあるお城……いや、あそこはシャレにならない。絶対やめた方がいいな。中央駅の南側に世界気象科学体験館っていうのがあるんだ。そこで南極とか世界の自然現象を疑似体験することが出来るよーっ」

「今夜泊まるホテルも近いですし、そこへ行ってみますね」


「日本の暑い夏を乗り切るにはこいつで扇ぐのが一番さ」

「うちわだ。日本の夏の風物詩ですね」

「うん、ボクの家は畳敷きにもなってるよ。日本文化大好きさ」

「それではまたね、ディックさん」

「また会おうね、ひばりちゃん。ここから少し北側にあるオランダの庭も見て行ってね」


ディックさんに言われたとおり、オランダの庭を見ることにしました。

ここは一面のお花畑と風車が見られます。


お庭の横を流れる川から水上バスに乗り、南に向かっていきます。


「次は、リアルト橋、リアルト橋です」


水の都、ヴェネチアのような街並みが見えてきました。

船から降りて、もっとゆっくり見たいのですが、時間の関係上残念ながら今回は高速移動する水上バスから眺めるだけにします。



どんどん南に下っていくと突如、たくさんの木々に覆われた場所が現れました。

「まもなくアマゾンの森、アマゾンの森です」


ここから7つの支流に分かれています。

 アマゾン川体験クルージングをする人は船を乗り換えます。


受付の人にとても蒸し暑いのですが安全のため、軍手、長袖、長ズボンを着用するようにすすめられました。


探検用の筏で出来たボートに乗り換えるとポパイのような風貌の大柄の男の人が乗っていました。

「やぁ、ボクは案内人のアントニオだ。今から楽しい大冒険の始まりだぜ」

流暢な日本語を使う愉快なおじさんでした。

「それでは出発だ。レッツゴー」


本物のアマゾン川を思わせる壮大な景色がどんどん広がっていました。


「川の中をのぞいてごらん、この中には、デンキウナギやピラニアなどが潜んでいるんだぜ。うっかり落っこちたら餌食にされちゃうよ。うおおおっととと……」


 身を乗り出していたアントニオさん本当に落ちてしまいました。


沈んでから数分経ちました。なかなか浮いてきません。お客さんたちが心配そうにしています。


次の瞬間、アントニオさんが浮いてきました。

なんと素手で鷲掴みにしてピラニアさんをたくさん捕まえてしまったのです。


「ブラボー、ブラボー」 

お客さんから大きな拍手が送られます。

パフォーマンスの一つだそうです。


次は陸地の熱帯雨林探索です。

「陸地にも危険な動植物たちがいっぱい棲息しているから十分気をつけて歩いてくれよ」



私も恐る恐る歩いてみると茂みからから変な気配を感じました。

「きゃぁぁぁっ、アントニオさん、あっあそこに、だだだっ大蛇が……」

「大丈夫かい? 日本人のお嬢ちゃん、こいつはジャイアントアナコンダだ。毒は無いが巻きつかれたらひとたまりもないぜーっ」

「怖かったです。あんな間近で迫力満点ですね」


「夜になるとワニやジャガーも出てくるぜ。ナイトクルージングは、よりスリル満点だ」

「アントニオさんには怖いものなしですね」

「いやいや、ピラニアなんか大人しいものさ。ウチの女房の方が怖いぜ。カンディルや小さな毒を持った昆虫とかはボクも敵わないよ。一寸の虫にも五分の魂っていう日本のことわざがあるだろ? 地面をよく見てみな。ファイヤーアントっていう危険なアリがうようよ歩いているぜ」

「噛まれたら痛そうですね。あっ、カラフルなカエルさんもいる」

「そいつはヤドクガエルだぜ。きれいでついつい触ってしまいそうになるけど自然界ではカラフルな色の物ほど危ないぜ」

「危うく触るところでした」

「もちろん危険な生き物だけでなく、面白いものをいるぜ。この木を見てごらん」

「カブトムシさんだ」

「世界最大のカブトムシ、『ヘラクレスオオカブト』だ」

「図鑑以外で初めて目にしました。感激です」

「今度はあそこの木の上を見てごらん」

「ナマケモノさんだ。お顔がかわいい。見ていると癒されます」

「ほとんど動かないだろ? でも水中では速いんだぜ」

「おサルさんもいますね」

「あいつはフンボルトウーリーモンキーだよ。ここには美味しい果実もいっぱいあるぜ」

 

 さらに奥へ入ってフルーツ狩りを楽しみます。


「それにしても木がたくさん生い茂って歩きにくいです」

「ここは背が高いと大変だな。この前ボクの友人のディック君が来てたよ。2メートルは軽く超える巨人のやつさ」

「チーズ屋さんの人だ」

「おーっ、知り合いかぁ、よろしく言っといてくれよ。おーっ、見えて来たな」


「木の実がいっぱいだぁ」

「こいつは『グアバ』、あいつは『アセロラ』だ。この他にも数え切れないほどの種類のフルーツがあるぜ」

「フルーツの楽園ですね」

「耳を傾けてごらん」

「あっ、野鳥の声が聞こえてきます」

「アマゾン川って素晴らしいだろう? 本物のアマゾン川は熱帯雨林がどんどん消滅しているんだ。環境破壊は悲しいことだよ。ボクたちでこの地球を守っていかなくちゃならないね」


 アントニオさんは大自然を愛する人です。


怖かったけど楽しいクルージングを終えて、お昼ご飯です。

アントニオさんが捕まえてくれたピラニアやフルーツなどをコックさんに調理していただききました。


「川の中は濁っている所もあって見えにくかっただろう? 川の中の生き物をもっと詳しく観察したかったら、あそこのアマゾン川水族館をご覧になってくれよ。豊富な種類にあっと驚くぜ」

 アントニオさんは10ヶ国語以上を話せるそうです。この文を見ると私がアントニオさん独り占めしてるように思われますが、もちろん他のお客様ともその国の言葉でたくさんお話していました。

 


早速、水族館へ行ってみました。ピラニア以外にもたくさんの生き物たちがいます。デンキウナギの電圧測定もやっていました。


「こっちはナマズさんだぁ、こんにちは、この子のお名前は『タイガーショベルノーズキャット』って言うんだ。なんかお髭がかわいい」

 

 売店にお魚さんたちのぬいぐるみやキーホルダーが売っていたので、また買いすぎてしまいました。ここのすぐ近くに世界気象科学館があります。


「こんにちは」

「こんにちは、ここでは日本国内では体験できないような苛酷な自然環境を味わうことが出来ます。今は真夏ですから南極体験館がおすすめですよ」


久しぶりに日本人の従業員さんを見ました。

南極体験館のすぐ隣には砂漠の体験館がありました。まったく逆の環境です。

私は涼みに来たので南極体験館の方へ入ります。気温マイナス50度、ブリザードも体験できます。ペンギンさんもいます。


「さっ、寒い、というより痛いよーっ、ペンギンさん、こんにちは。寒くないのかなぁ?」

ペンギンさんは悠然と歩いています。


この寒い部屋の中で、南国系の人を見かけました。

 私に話しかけてくれました。


「チャオ・アウム、こんにちは。あなた日本の人だね?」

「はい、そうです。こんにちは」

「わたしベトナム出身のニュンって言います」

「私の名前は朝霧雲雀です。ニュンさんもここの街に住んでいるんですね」

「はい、6年ほどこの街で暮らしています。わたしの出身地のホーチミンでは、冬がないからこういう体験をしたくてここへ何度も訪れているんです。日本の冬の寒さもこれで克服できます」

「日本の冬はここまで寒くは無いから、これが耐えれたら日本の冬は楽勝ですね」

「でも、さすがにここにいるのは1分が限界よ。ブリザートが吹く前に出ないと」

「私ももう限界です」


「こっちは台風も体験できるよ」


風速50メートル、雨も降っています。

「さっきの南極体験館よりも過酷だよ。しっかり捕まってないと飛ばされそう」

「私の国では毎年このクラスのが来るよ」

ニュンさんは慣れているせいか平気そうでした。


大気現象や蜃気楼が観察出来るお部屋もありました。

「太陽柱の映像、きれいだねぇ」

「この街ではブロッケン現象と蜃気楼はごく稀に自然に見れることもあるのよ。ダイヤモンドダストと太陽柱はさすがに無理だと思うけどね」

「神秘的な街ですね。いつか見てみたいです」

「あっ、そろそろ開店する時間だ。わたし、ベトナム街でお店を出しているからぜひ遊びに来てね。これが地図よ」

「道が複雑過ぎます。迷わなければ行ってみますね」


一旦ニュンさんに別れを告げて再び水上バスに乗り換えます。

さらに南に下ると東南アジア風の街並みが見えてきました。


「次は水上マーケット、水上マーケットです」

小舟に乗り換えてショッピングを楽しみます。

果物屋さんから強烈なにおいがします。噂のドリアンです。

「においは強烈だけど、果物の王様、とても美味しいよ」

「すみません、私には無理です」

「確かにそのままだと、日本人にはきついかな。ドリアンキャンディはどうだい?」

「キャンディかぁ。それなら大丈夫そうです。1袋下さい」

「コープ クン、ありがとう」

「おじさん、日本の夏も東南アジアと同じくらい暑いでしょう?」

「そうだね。今の季節は最高だよ。冬は寒すぎてね、たまに雪化粧した東南アジアの街並みが見れて不思議な感覚が味わえるよ。子供たちが雪だるまとかを作ったりして風情があるよ」

「冬にも来てみたいなぁ」


「お嬢さん、美味しい揚げ物があるよ。ゲンゴロウにコオロギにタイワンタガメ、その他いろいろ」


 昆虫さんたちが揚げ物になって売られていました。

「ごめんなさい、私には無理ですーっ」

「日本の人が最初にこれを見たらやはりね……」


民芸品を売っているお店もありました。


「このポーチ、かわいい」

「これは、リス族のポーチだよ」

「刺繍がきれいです。欲しいです」

「コープ クン、ありがとう」

「こっちのアカ族の帽子も欲しいです。飾りが多くて重いですね」

「これは悪霊から身を守る役割があるんだよ。他にもカレン族やモン族など、それぞれの風習を持ってるよ」

「いろんな少数民族がいて面白いです」

「その方達が売り子をしているお店もあるよ」

「会ってみたいです」


舟から降りて街中を歩きます。

本当にタイに来たみたいです。


 カレン族の方が経営しているお土産さんに入ってみると首に輪を巻いて首を長く見せている女性の方たちがいました。

年をとるにつれて輪の数を増やしていくそうです。


「街中にはネコさんたちがいっぱい、あの模様のは確かシャム猫だね、こんにちは」

「ミャッ」

「写真撮っていいですか?」

「ミャー」

「嬉しい。ありがとう」


他になんとこの街にはゾウも練り歩いてます。

午前中は托鉢僧の姿も見れるそうです。


「日本の他の街では絶対見られない光景ですね」

「そうだろ? お嬢ちゃん、乗ってみるかい?」

「ええっ、いいんですか!?」


 ゾウに乗って街中を歩きました。乗り心地も最高です。


「ゾウに乗るなんて日本のこの街以外ではなかなか体験出来ません。貴重な体験が出来て嬉しかったです。また乗りたいよーっ」

「またいつでも来てくれよ。お嬢さん」


続いてゾウのショーを見せてくれました。


「今からこのダニエル君が半紙に筆で文字を書いてくれます。まずは『ひまわり』という文字からだよ」


インドゾウのダニエル君は鼻を器用に使い、とても上手に書いてくれました。


「ダニエル君、ひらがな上手だね。今度は漢字も書いてみよう。次は『花火』だよ」


今度も上手に書いてくれました。

「わぁ~、ダニエル君すごいです」

「ダニエル君、よく出来たね。今度はもっと難しい漢字に挑戦してみよう。そこの日本のお嬢さん、あなたのお名前は?」

「朝霧雲雀です」

「朝霧雲雀ちゃんかぁ、この紙に漢字で書いてね」


「出来ました」

「お~、難しい漢字の名前だね。ダニエル君に出来るかな?」


ダニエル君の挑戦スタートです。

「ダニエル君、頑張ってー」

 私も懸命に応援します。ダニエル君も頑張ります。

 

10分くらい経って漸く完成しました。大成功です。

「ダニエル君、やったね」

「漢字まで書けるなんて、すご過ぎです」


みんなから拍手が送られました。ダニエル君も大喜びです。


今は行書体の特訓をしているそうです。

今後の活躍に期待です。


水田も見かけました。

「田んぼだ、これが浮稲かぁ、水の中すごく深そう」


暑いのでアイスクリーム屋さんに入りました。

「サワッディ カ、こんにちは」

「こんにちは、お姉さん。見たことが無い種類がいっぱい、サントール味にタマリンド味にマンゴー味、どれにしようかな?」


無難にマンゴー味にしました。


さすがは仏教の国『タイ』、仏教寺院がたくさん建ち並んでいます。

その中に入ってみました。


「ガルルルルゥゥゥ、ガゥ」

「きゃあああーっ」


トラさんがいて驚きました。

「サワディー クラップ、こんにちは、日本のお客様、ここではトラと触れ合うことも出来るよ」


 タイガーテンプルをモデルにした所でした。


「このトラをなでてごらん」

「なんか怖いなぁ、トラさん、噛み付かないでね」


私、ちょっと怯えながら触ってみました。

「ほら、大丈夫だろ?」

「はい、トラさんの毛、サラサラして気持ちいいです」

「記念撮影も出来るよ」


 トラさんとツーショット、良い思い出が出来ました。

「おじさんはトラさんとお友達ですね」

「ああ、こいつらとは長年の付き合いだからな。オレはトラが大好きなんだ。日本にトラの絵が描かれた屏風があるだろう? オレの家に飾ってあるよ」

「あの屏風絵って格好いいですよね。迫力もあって」

「一休の話ではトラが出てくるみたいだからな」


タイ街をあとにしてニュンさんのお店があるベトナム街にやって来ました。

バイクが山のように走っていました。


ガイドさんに案内してもらいニュンさんのお店に辿り着きました。

 ここで午後のティータイムです。

「こんばんは、ニュンさん、遊びに来ましたよ。わぁ~、民族衣装が素敵です」

「チャオ・アウム、ひばりちゃん、これはアオザイという民族衣装よ。良かったら着てみる?」

「着てみたいです」

民族衣装を着させてもらいました。衣装を着るとその国の住人になった気分がします。

「よく似合ってるよ。ひばりちゃん」

「ありがとう」

「ご注文は何にする?」

「おすすめのベトナム料理をおまかせします」


 しばらく待っていると美味しそうなお料理が出てきました。


「お待たせーっ、ベトナム料理のフォーと生春巻き、こっちは日本でもよく見かけるエビフライよ」

「エビフライだ。日本ではタルタルソースをつけることが多いけど見慣れないソースが使われていますね」

「これはヌックマムっていうベトナムを代表する調味料でアンチョビなどを原料にして作った醤油よ」

「初めて見ました」

「そしてお飲み物がベトナムのお茶、ハス茶よ」

「こちらも初めて見ました。いい香りです」


「エビフライ、美味しいーっ、このソースも合いますね」

「東南アジアではエビの養殖が盛んよ。でもそのためにマングローブ林が破壊されるのはとても残念なことだと思うの」

「地球環境は大事ですね」

「実はあともう一つあるんだけど、初めて見たら引いちゃうかな……」


そう言ってニュンさんはもう一つの料理を出しました。

「これはホビロンと言って孵化直前のアヒルの卵をゆでたものよ」


「ちょっとびっくりしました。昆虫さんたちもですけど、世界にはいろんな食文化があって面白いです」

「ラオスの市場に行くともっとすごいものが見れるわよ」

「この後行ってみますね」


「民族音楽も面白いわよ。今から民族楽器のダン・バウの演奏を聞かせてあげるね」


ダン・バウは琴のような楽器です。弦が1つしかなく演奏がとても難しいのですが、ニュンさんは手馴れた手つきで弦を弾いてとてもきれいな音色で演奏してくれました。


「とても良かったです。聞いていると癒されました」

「ありがとう。わたし今、日本の和楽器の練習もしてるの。尺八とか三味線とか……日本の文化をもっと学びたくて」

「立派です。頑張って下さい」


ティータイムと言いながら、ディナー並みに食べ過ぎてしまいました。

美味しかったので、まあいいや。


ラオス街にやって来ました。

目の前に立派な門が建っていました。


「わぁ~、すごーい、フランス街で見た凱旋門みたい」


 この門はラオスの首都ヴィエンチャンにある凱旋門の一つ、アヌサーワリー・パトゥーサイをモデルにして作られたものらしいです。


「サバーイ ディ、こんにちは」

「こんにちは。なにかおすすめのお土産はありませんか?」

「ビア・ラオっていうビールがおすすめだよ」

「私は未成年だから飲めないけど、お土産に買って帰ろう」

「コープ ジャイ、ありがとう」

「仏像さんの置物もいっぱいありますね」

「ラオスも仏教国だからね。あそこの公園にとても面白いものがあるよ」

「行ってみますね」


その公園には奇妙な仏像さんがたくさん展示されていました。

通称ブッダパークと呼ばれる観光地『ワット・シェンクアン』をモデルにしているそうです。

「こんにちは、暑くないですか?」

仏像さんに声をかけ、写真に収めました。

 寝そべっている仏像さんとかもいて、気持ち良さそうです」


市場にやって来ました。ここでは虫やネズミやカエル、得体の知れない獣などが食材として売られています。


「あのぅ、おばさん、これは何ですか?」

「これはモモンガだよ」

「こちらは?」

「こっちはムササビだよ」

「……」


日本人から見ると奇妙な光景に思われるかもしれませんが、様々な食文化を知ることが出来ました。


インドネシア街にやってきました。

ここはイスラム世界です。

女性の方は『チャドル』と呼ばれる黒い布で全身を覆ったものを着ている方が多いです。

私はノースリーブだったので、気まずいです。服屋さんに入ってもう少し長い袖のを買って着替えました。


バリ島街ではやや異なった雰囲気です。

ここはヒンドゥー教徒が多いです。

シヴァの銅像がたくさんあります。


寺院にはおサルさんもたくさんいました。

手荷物を取られそうになったり、胸を触れたりしましたが、いい思い出です。

ここはウルワトゥ寺院をモデルにして作られています。

時間の関係で見れませんでしたが、バリ島の伝統舞踊ケシャ・ダンスの公演も行われています。


動植物園へ入ってみました。

中はジャングルのようになっています。

ガイドのお姉さんに案内してもらい、インドネシア・ニューギニアの森を探検します」


「ようこそ、今からこの中を案内します。木々が生い茂って歩きにくいので足元に十分注意してくださいね」

 

 本日のジャングル体験第2弾スタートです。


「こちらの木の上の方をご覧下さい」

「ああっ、オランウータンだ。表情が人間みたい」

「マレー語で森の人を意味しますからね。テナガザルも人間に近いですよ」

「あっ、お姉さん、あそこにいるのがテナガザルですね?」

「その通り、テナガザルにもいろいろな種類がいてあの子はシロテナガザルよ」

「全部の種類を見分けられるんですか?」

「ここの動植物はみんなワタシのお友達だから、簡単よ」


あるテナガザルさんが私に木の実を持ってきました。


「この子、あなたのことが気に入ったみたいね。これをあなたにプレゼントしたいみたいよ。この子はワウワウテナガザルね」

「ありがとう、ワウワウテナガザルさんって言うんだね。面白い名前」

「この子と握手してあげてね。お友達の証よ」

「わぁ~い、ワウワウテナガザルさんと握手だ。これで私ともお友達だね」


「この辺りは危険な動物もいるから気をつけてね」

「あっ、トラさんだ。タイ街でも見ましたが種類が違いますね」

「あのトラはスマトラトラよ」

「このトラさんも面白いお名前ですね」

「がるるるるるぅー」

「あっ、私と目があってしましました。あわわわ、ごめんなさい、スマトラトラさん、あなたのお名前をバカにしてしまって……お姉さん、早く逃げないと……」

「ワタシがついてるから大丈夫よ」


 スマトラトラさんはガイドのお姉さん(と私)の方へ寄ってきました。


「よしよし、スマトラトラさん、お腹が空いたのね? 今、エサをあげるね」

「ミャーン」

 スマトラトラさんはガイドさんのことをお母さんのように甘えていました。

 

「トラさんって怒らなければかわいいですね」

「ネコ科の動物だからね」

「あっ、あっちにヒョウがいます」

「あの子はウンピョウよ」

「また、こっちに向かって来ましたよ」

「ミャ~オ」

「見た目によらず鳴き声がとてもかわいいです。この子もネコ科の動物さんですね」

「そうよ、いっぱい撫でてあげてね」


 この動物さんたちはガイドさんのおかげで大人しくなっているんです。普通は人間の姿を見ると襲ってきて大変危険なので絶対に真似はしないで下さいね。


しばらく歩いていると目の前に巨大なトガケさんたちが現れました。

「うわー、恐竜みたい」

「世界最大級のハナブオオトカゲとコモドオオトカゲよ。近づくと危ないから遠くから観察してね」


 遠くからそっと写真に収めました。


「昆虫達もいっぱいいるわよ。この辺りの木々を見てね」

「黄金色のカブトムシさんだーっ」

「これはアジア最大のカブトムシ『スマトラコーカサス』よ」

「これはクワガタさんだね。大きいーっ」

「こちらは世界最大のクワガタムシ『ギラファノコギリクワガタ』よ」

「角が格好いいですね。こんなすごいのを見てしまうと日本のカブトムシさんやクワガタムシさんが霞んで見えてしまいます」


アマゾンでは世界最大のカブトムシ、こっちでは世界最大のクワガタムシに出会うことが出来てとても感激しました。


「次は世界一大きなお花の所へ案内するね」


ジャングルの中は不思議な植物もたくさんありました。


「こちらがスマトラオオコンニャクとラフレシアよ」

「とても臭いです。長い間お掃除してないおトイレみたい。それに襲って来そう。スマトラオオコンニャク、ラフレシアさん、こんにちは、私と仲良くしてね」


「ジャングルって危険なところも多いですけど探検とても楽しかったです」

「またいらしてね。冬のジャングル探検もおすすめよ。雪が積もったジャングルと勝って他の場所では絶対見れないでしょう」

 

動植物園をあとにして、次はシンガポール街です。


「マーライオンさんだ。こんにちは」

 もちろんレプリカですが、よく出来ています。

 街中を歩いていると空が曇ってきました。夕立です。

「あっ、雨が降ってきたよーっ」


 お土産屋さんで雨宿りをします。


「スラマト ペダン、こんばんは」

「こんばんは、雨に降られて散々でした」

「それ大変だったね。でも夕立が来ると故郷のスコールを思い出すよ。ゆっくり見ていってね」

「マーライオンさんのグッズがいっぱいだーっ、ぬいぐるみさんやキーホルダーやマグカップや……欲しい物がいっぱい」


 入るつもりは無かったんですが、ついつい買いすぎてしまいました。


「あっ、雨があがってる、さっきよりも涼しい」

「スコールとそっくりだね。まぁ本場のは、もっと雨風がすごいけどな」


通りをどんどん歩いていくと、やがてインド風の街になってきました。川の中で沐浴している人の姿が見られます。神聖とされる牛もたくさんいました。


何か人だかりがあったので見に行ってみました


「あーっ、あれテレビでたまに見るヘビ使いだ」

 

ターバンを巻いたお爺さんがヘビを見せていました。


「ナマステ、日本のお嬢さん」

「コブラを笛で操る人ですね」

「フォッ、フォッ、フォッ、そうじゃ、そうじゃ。コブラにもいろんな種類があってのぅ、こいつはキングコブラ、一番でかい。噛まれたら死ぬ」

「お爺さん、大丈夫なんですか?」

「フォッ、フォッ、フォッ、大丈夫じゃ、大丈夫じゃ。こいつは毒を抜いてある。でもっ、噛まれたら……痛い。それでは今からこの道80年の技を見せてあげよう」


コブラ使いのお爺さんが笛を吹くとコブラが踊ります。

「おーっ、今日は機嫌がいいな。フォッフォッフォツ」


お爺さんもとても楽しそうです。

ショーが終わるとヘビと記念撮影ができます。


「お嬢さんもこいつを首に巻いて記念撮影はいかがかな? フォッフォッフォ、2ルピー、日本の通貨でいうと5円じゃよ」

「怖いですぅ、遠慮しておきます」


トラさんは出来ましたが、さすがにそれは私には無理でした。


市場ではスパイスの専門店がたくさんありました。


遊んでいるうちに外が暗くなってしまいました。夜に女の子だけで出歩くと危ないと聞いていたのでとても心配です。お店の人に頼んでホテルまでついて来てもらおうと思い、相談しました。

「あのぅ、暗くて怖いのでどなたか一緒についてきてもらえませんか?」

「この街は悪い人なんて全くいない世界一安全な街よ。でもっ、野生動物には気をつけて」

「そういえば、財布を落としたらすぐに届けてくれました」

「この街にはね、とても不思議な力があって、どんな人でもこの街に来ると穏やかな気持ちになれる、そんな癒しの空気に満ち溢れているのよ」


確かに危険な雰囲気は全然ありません。2日目のホテルはタージマハルのような外観の建物です。

「それではお部屋まで案内します」


超高級ホテルのような豪華なお部屋です。これでも一泊2千円です。


ディナータイムです。

「お待たせしました。タンドリーチキンとラッサム、お飲み物の『トルコ・コーヒー』でございます」

 

 さすがヒンドゥー教の国です。メニューに牛肉はありません。

 食後のデザートにバルフィと呼ばれるインドのお菓子を食べました。

 体重が心配です。

食堂の大ホールでインド舞踊を披露していました。

民族衣装のサリーの試着も出来ます。


ここもお風呂は和風になっていました。建物の外観は異国のものでも、中に入ると日本文化が浸透しているものも多いです。


「あ~、やっぱり湯船につかるのが一番気持ちいいなぁー」


お部屋に戻って今日買ったドリアンキャンディーを食べることにしました。

「どんな味か楽しみだな」

 袋を開けます。

「……」

 

その後のことはご想像下さい。


「良かったぁ、ここのおトイレは紙があるよ」

インド街でおトイレを使ったのですが、紙がありませんでした。桶が置かれていて左手で洗い流すようになっているみたいです。そういう所も一部に残っています。


今夜もぬいぐるみさんと一緒にお休みです。


8月1日 


朝食メニューに変わったハンバーガーがあったので注文してみました。


「マハラジャ・マックでございます」

「羊の肉だ。そうか牛肉とかは食べないからね」

「インドでは菜食主義の方も多く、肉を使っていないハンバーガーもございますよ」

「へぇ~」


食事の後はお庭を散歩してみました。


「あっ、サリーが干されてる」


隣を流れる川で洗濯をしていました。

水遊びをしている子供達の姿など、見ていて和みます。


インド街をあとにし、路面電車で死海体験館まで移動します。


「すごい、みんな浮いてるーっ、楽しそう」

私も水着に着替えて湖に入ります。


「プカプカして気持ちいい」


和んでいるとお爺さんが話しかけてきました。


「そうだろう? 日本人のお嬢さん、ワシはこの街に暮らし始めてから6年、毎日ここに浮かびながら読書をするのを日課にしてるよ」

「ここって沈もうと思っても沈めませんから本が濡れないように出来ますね」

「すごい塩の量だろう? ワシはここの塩を漬物やお味噌汁に使ってるよ」

「日本料理ですね」

「ワシ、日本料理が大好物じゃ。特に鯛の塩釜焼きじゃな」


お土産屋さんに入りました。


「ボケルトフ、おはよう、お嬢ちゃん」

「おはよう」

「死海の塩でできた商品がいっぱいあるよ」

「石鹸と泥パックを下さい」

「ト ダ、ありがとう」


 ここからしばらく歩いているとペルシャ風の街並みが見えてきました。

早速お土産屋さんでお買い物です。


「サラーム、こんにちは、日本のお客様」

「この絨毯とこのランプを下さい。これ、本当に空を飛べたり、魔人が出てきたりしそうな雰囲気です」

「お嬢さんアラビアンアイト気分だね。ナッツの女王、ピスタチオも美味しいよ」

「それも下さい」


街中にはペルシャ猫がたくさんいました。

「ペルシャ猫さん、こんにちはーっ」

「ミャオーン」

「かわいい、お写真撮ってもいい?」

「ミャーン」


許可が取れた(と思う)ので写真に収めました。


再び路面電車に乗ってエジプト街まで移動します。

砂漠のようになっている所に日干しレンガの家やスフィンクス、ビラミッドのレプリカなどが立ち並んでいます。


ラクダ乗り場は、行列待ちです。しばらく待ってから乗ります。

「サバーフ・アルハイル。おはようございます。日本のお客様」

「あつ~い、本当に砂漠に来てるみたいですね」

「今の気温30度くらいだね。本物の砂漠では50度越えるからもっと厳しいですよ」

「苛酷な環境ですね。やはり日本は暮らしやすいですか?」

「日本は雨が多くて水が豊富っていうのがいいね。でも雨が降ったら建造物の維持が困難だよ。雨が多い砂漠って不思議な感じがするよ。冬は雪も積もるし……」

「鳥取砂丘みたいな感じですね」

「でも、ここは本物みたいにサソリもいるから気をつけてね」

「本当だ。ここだけ見ると本物の砂漠みたいですね」


「お嬢さん、ラクダのコブの中には何が入ってるか知ってるかい」

「お水!」

「残念、正解は脂肪だよ」

「ずっとお水かと思ってました」



「地面を見ると本当にサソリさん多いですね。おじさんは」

「おーっ、こいつは大変危険なやつだな。デスストーカーっていうやつだ。指されたら人間でも一殺だ。でもサソリのほとんどは毒なんか持ってないんだぜ」

「そうだったんですか? イメージと違います」


砂漠を歩いていくとオアシスが現れました。

「水がきれい、泳ぎたいな」

「ここには獰猛なワニが棲息しているよ」


 突然、水の中からワニが飛び出てきました。

「きゃあああああああっ」

「こいつはナイルワニだな。だがこいつよりも強いやつがいるぜ。あそこにいるのはナイルオオトカゲ。ナイルワニの卵を食うんだ」

「昨日見たコモドオオトカゲさんよりは小さいですけどすごい迫力です」


遺跡巡りもしました。

本物のミイラなどは置いてないので写真だけですが、なかなか良かったです。


お土産はラクダさんのジグソーパズルやヒエログリフが書かれたタオルなどです。

文字が格好いいです。


砂漠の旅を終えて、お昼ご飯です。

エチオピア料理『インジェラ』と『ワット』です。

独特な味です。


続いてサバンナの草原の見物です。バスに乗って移動します。

 

ガイドのお姉さんの案内つきです


「まずは草食動物ゾーンから案内します」


「わぁー、キリンさんにシマウマさんだ」

「ここは降りることも出来るよ」


バスから降りて間近で観察しました。

「あのキリンさん、お水を飲んでる。こういう格好で飲むんだ」

「これは敵に襲われた時に急いで逃げるためよ」


従業員の方がエサを持ってきました。

「このエサをあげてね」

「自分でエサをあげれるんですか? 嬉しい。キリンさん、こんにちは、エサだよ」


 キリンさんは長い首をゆっくりと私の方へ向け、エサを食べてくれました。

「キリンさん、美味しい?」

「モー」


 なんと、キリンさんが声を出しました。


「私、キリンの鳴き声初めて聞きました。牛みたいな鳴き声ですね」

「ワタシも久しぶりに聞いたよ。キリンさんは鳴くことって滅多に無いのよ。よっぽど嬉しかったのね」


貴重な体験が出来て私も嬉しかったです。



「シマウマさん、こんにちは、なんか他にもシマウマさんがたくさんいるけど模様が微妙に違うような……」

「この子はグラントシマウマよ。そしてあそこにいるのがグレビーシマウマね」 

「シマウマさんもいろんな種類がいるんだね」


再びバスに乗り込みます。


「みなさま、前方をご覧下さい」

「わぁ~、ヌーさんの群れだ」


バスの前を横切っています。しばし待って出発します。


「このエリアはおサルさんたちがたくさんいますよ」

「チンパンジーさんだ」


手を振るとチンパンジーさんも手を振ってくれました。嬉しかったです。


「あっ、あれはマントヒヒさんだ。面白いお顔」


「あのおサルさんは何っていうなまえなんだろう?」

「あの子はパタスモンキーよ」

「パタスモンキーさん、元気でねーっ」


「続いてサイさんのエリアです」

「角が格好いいです」

「サイの角の成分は何か知ってる?」

「ラクダさんのコブは脂肪だったからサイさんも脂肪かな?」

「正解はケラチンよ。人間の爪みたいなものね。折れてもまた生えてくるよ」

「へぇー、サイさんすごい能力です」


「あーっ、なんか変な鳥さんがいるよーっ」

「あれはハシビロコウよ。動かない鳥として有名なの」

「近くで観察できるよ」


バスから降りて、観察します。

「ハシビロコウさん、こんにちはーっ」

「……」

「ハシビロウさぁーん」

「……」

まるで仙人のようでした。


「あの動物はジャンプの達人、インパラさんだよ」

「シカみたいですね。飛ばないかな……あっ、飛んだーっ」


 ひとっ飛びで10メートルくらいは飛びました。人間なら世界記録です。


辺りがだんだん怖い雰囲気になってきました。


「この辺りは毒蛇がたくさん棲息して危険地帯になっています」


 バスの窓からのぞくと緑色のヘビさんの姿が見えました。

「このヘビはヒガシグリーンマンバです。さらに危険なヘビもいます。あちらの木をご覧下さい」


 今度は黒いヘビさんです。

「こちらのグリーンマンバは気性がとても荒く、動きもすばやいので大変危険です」

「日本でもハブさんとかマムシさんとかがいるけどそれとは比べ物にならないくらい危険なんだね」


「続いて肉食動物ゾーンを案内します」


ライオン、ヒョウなどの獰猛な動物さんたちが現れました。


「ライオンさんにもエサをあげてね」

「ライオンさんにもエサをあげれるんですか? ちょっと怖いです」

 もちろん今度は網越しです。


「ライオンさん、網越しなのに大迫力ですね」

「ここには珍しいライオンさんもいますよ」

「あっ、真っ白だ」

「あれはホワイトライオンといって世界中で数百頭しかいないよ」


「次は陸上で最も走りが速いチーターさんの登場ですよ」

「チーターさん、こんにちはーっ、駆けっこ1等賞だね」


ハイエナの群れも現れました。


サバンナの旅を終えて今夜泊まるホテルがあるオーストラリア街に移動します。

 

最初にオーストラリア野生動植物パークへ行きました。

連続して野生動物の観察です。

ガイドのお姉さんに案内してもらいます。


「本日は、オーストラリア野生動植物パークにお越しいただき、誠にありがとうございます。まず始めに羊さんの所から案内するね」

  

「わぁ~、羊さんの群れだーっ」


「次はカンガルーさんの所よ」

「ピョンピョン跳ねる姿かわいい。袋の中に入ってみたいな」


 私もつられて跳ねていました。


「あっ、あっちにもカンガルーさんみたいなのがいるよ。ちっちゃくてかわいい」

「あれはワラビーよ。小型のものはそう呼ばれているの。他にワラルーいっていう中型のものもいるわよ。ほら、あそこを見て」

「あの子がワラルーさんかぁ。写真撮ろう」


ユーカリの木が生い茂る森に入りました。

「ここはコアラの宝庫よ」

「わぁーい、コアラさんとこんなに近くで会えるの楽しみだよ」


目の前にいました。葉っぱを食べています。

「動物園で何度か見たことがあるけどいつも眠っているから、動いてるのを見たのははじめてかも」

「1日に20時間くらい眠ってますから。ここにはたくさんいますから、どれかは起きている可能性が高いわよ」

「動いている姿を写真に撮っておこう」

「コアラを抱いて記念撮影も出来るよ」


私の胸に抱いて記念撮影をしました。


「お姉さん、このコアラさん、肌触りもとても良くて、それに赤ちゃんを抱いているみたいで私、幸せな気分です」

「コアラさんの方もきっと喜んでいるわね」


撮影を終えるとコアラさんのお休みタイムです。

ぐっすり眠ってね。


「次は鳥さんの所よ」


鳥さん達の姿が見えてきました。


「エミューだ。あっちにも似たような鳥さんがいるよ」

「あちら側はヒクリドリよ。どちらも飛べない鳥だけどね」


危険エリアに突入です。


「ここからは大変危険だから、長袖、長ズボンに軍手を着用してね」

「オーストラリアも危険な生き物がいっぱいなんですね。ドキドキします」


「小さい虫にも注意してね。ほら、あなたのすぐ下」


 私の足元にクモがいました。

「きゃっ、なんか赤い模様があります」

「これはセアカゴケグモよ。他に毒蜘蛛がたくさん棲息しているから十分気をつけてね」


危険エリアをどんどん奥へ進んでいきます。


「あーっ、ワンちゃんだ。かわいい」

「あれは、ディンゴね。見た目によらず獰猛な犬よ」


「お姉さん、今度はヘビさんがいました」

「あそこにいるのはオーストラリアで最も恐れられている毒蛇、コモンデスアダーよ」

「怖いです。怖いです」

「私の後ろについてれば大丈夫よ」


「また別の種類が出てきました」

「あれは、世界最強の毒蛇ナイリクタイパンだね」


他にもタイガースネイクやブラウンスネイクと言った危険な毒ヘビさんたちがたくさん棲息していました。


最初に癒し系の動物さんたちを見たので、よりスリル満点な旅でした。


この街には野生動物達の危険エリアがたくさんありましたが、これらのガイドさんは特殊な訓練を受けている方なので一緒にいれば安全に危険エリアを楽しめます。


危険エリアを抜けると売店がありました。

ここでの購入品は動物さんたちの形をしたクッキーです。


ここから船に乗ってタスマニアの森へ移動します。

「危険エリアは抜けたけど水中には危険な生き物がたくさん棲息しているわよ。例えばあのクロガシラウミヘビ、あれは最強の毒液も持つヘビよ」

「シマウマさんみたいな模様ですね」

「それからあのアカエイも大変危険よ。尾に毒があるの」

「確か刺されて亡くなった人がいるんだよね。怖いです」


タスマニアの森へ到着しました。


「この島にはここでしか見れないたくさんの固有種がいるわよ」

「とても楽しみです」

「あそこにいるのがタスマニアデビルよ」

「お口開けると顔が怖いです」


「あそこにいるのがウォンバットよ」

「とてもかわいいです。抱っこしたい」


ウォンバットさんを抱っこしてガイドさんに写真を撮ってもらいました。

この島には川も流れていました。


「この川の中を見てごらん」

「カモノハシさんだ」

「この子は哺乳類だけど卵を産むのよ」

「大変珍しいですね」

「ここにはもう一種類卵を産む哺乳類がいるわよ」


 しばらく歩いて探しに行きます。


「ここの茂みの中を探してみて」

「ハリネズミさんだ」

「見間違えやすいけどこの子はハリモグラよ」

「ハリモグラさん、こんにちは」


珍しい生き物がたくさん見れて楽しい思い出が出来ました。

さて、ホテルへと向かいます。

ホテルの外観はシドニーのオペラハウスをモデルにしています。


ホテルの中にもユーカリの木が植えてあり、いろんな種類のコアラさんのぬいぐるみがたくさん飾っていました。

「このぬいぐるみ、欲しいなぁ」

「こちらのぬいぐるみはオーストラリア雑学ゲームの景品となっております。問題はコンピュータゲーム機で出題されます。点数によって取得出来るぬいぐるみの種類が変わります。もし全問正解されますとゴールドメダルが出て、一番大きなぬいぐるみと交換できます。もちろん挑戦はお1人様1回限りです」


早速チャレンジです。

コンピュータ音声に従ってゲームスタート


「ハロー、ボク、コアラだよ、ボクのお名前はキミたちが自由につけてね。これからボクの住んでいる国、オーストラリアについて雑学問題が出題されるよ。頑張って満点目指してオーストラリア博士になろう」

「このゲームのキャラクターのコアラさん、かわいい~、あの巨大ぬいぐるみ目指して頑張るぞ~」


「第1問、オーストラリアの面積はブラジルより広い。○か×かどっちかな?」

「う~ん、どっちだろ? たぶん×かな」


×のボタンを選びました。


「正解、おめでとう」

「やったぁ~」


「第2問、オーストラリアの首都は、どこかな? 1、メルボルン 2、パース 3、シドニー 4、キャンベラ 5、アデレード」

「3と選びそうだけど、確かキャンベラだったと思うよ」


4番を選びました。


「正解、おめでとう」

「やったぁ、2問目も正解、この調子で頑張ろう」


「第3問、オーストラリアの先住民の名前は? 1、アボリジニー 2、マオリ 3、イヌイット 4、インディアン 5、インディオ」

「1番だね」

 

 1番を選びました。

「正解、おめでとう」

「3問目も正解だ、やったぁ」


「第4問、北東部にある世界最大の珊瑚礁の名前は? キーボードで文字を打ってね」

「ここは選択肢じゃないんだぁ、でも簡単、『グレートバリアリーフ』だね」

「正解、おめでとう。次が最後の問題だよ」

「次で最後か、あと一息」


「いよいよ最後の問題だよ。ちょっと難しいけど頑張ってね。オーストラリアの最高峰の名前は? キーボードで文字を打ってね」

「……あーん、分からないよぉ~」

「残念、時間切れだよ。正解はコジオスコだよ」


シルバーメダルが出てきました。


「おめでとうございます。2等賞です」

「あーん、残念だったよ。あと一問だったのにーっ」

「最後の問題で間違える人は割と多いですよ」


ちょっぴり残念だけど2番目に大きなコアラさんのぬいぐるみを手にすることが出来たので嬉しいです。


ホテルの食堂は外にあります。

「エアーズロックだ。本物と大きさ変わらないんじゃないかな」


エアーズロック(のレプリカ)を背景にディナーを食べます。

私は食べれませんでしたが蛾の幼虫を油で揚げたアボリジニーの伝統料理、ウィッチティ・グラブという食べ物もありました。


「お嬢様、この周辺をバスに乗って周回するツアーがございますよ」

「行きます、行きます」


お食事を済ませて出発します。


「本日もオーストラリア世界遺産レプリカ周回ツアーバスをご利用いただき誠にありがとうございます。名前の通り全てレプリカですが本物のような造形になっております」

「ライトアップされていて、幻想的です。まるで本物みたいです」

「エアーズロックは別名『ウルル』とも呼ばれております」

「それでは次に世界最大の一枚岩『マウント・オーガスタス』のレプリカまでご案内いたします」

「えーっ!? エアーズロックが世界一ではなかったんですか?」

「あまり知られていませんがこちらはエアーズロック『ウルル』の約2.5倍の大きさを誇ります」

「初めて知りました」

「まもなく到着いたします」


 エアーズロックも山のように大きかったのですが、こちらはさらに度肝抜く大きさです。

 本物そっくりに再現されていました

「これからブルーマウンテンズの方へ向かいます」


 さすがにここは本物そっくりには行きませんでしたが、そこそこ満足出来ました。


「本日もオーストラリア世界遺産レプリカ周回ツアーをご利用いただき誠にありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」

 


お土産屋さんで先住民アボリジニーの方がブーメランを売っていました。

 記念に購入です。

「笛も売ってる」

「これはディジュリドゥという大昔からある楽器じゃよ。ユーカリの木で出来ているんじゃよ」

「吹いてみたいな」

「ダメじゃ。この楽器は女性に吹かせることは出来んよ」


この楽器は女性が吹くと妊娠したり、流産するとか云われていて、タブー視されているみたいです。


汗をいっぱいかいたのでお風呂へ直行します。

 ここも和風の露天風呂でした。


「体重計が置いてある。この3日間ずっといっぱい食べてたからな。なんか心配だよ」


 恐る恐る体重計に乗ります。

「……うわぁーん、やっぱり増えてるよーっ」


 当然といえば当然の結果でした。

 

 お部屋に戻って明日の準備です。

「今日も刺激が多かったよ。明日でこの旅も終わりか。寂しいな」

 今回の旅の中でたくさんぬいぐるみが増えました。いっしょに眠ります。


8月2日 今日で最終日です。


朝食を食べた後はニュージーランド街へ向かいます。

「キア・オーラ、日本のお客様」

街に入るとマオリの皆さんが迎えてくれました。

鼻と鼻を引っ付けるのがここでの挨拶です。

 少し恥ずかしかったです。


 この国も温泉大国です。


ニュージーランド野生動物公園に来ました。

 ここのガイドさんもマオリの人です。


「オーストラリアの羊さんとは種類が違うね」

「オーストラリアではメリノ種、ニュージーランドではロムニー種が多くなっているよ」

「あっ、あの鳥キーウィさんだ。果物の名前みたいだね」

「こいつの名前は鳴き声からつけているんだよ。もっと面白い名前のもいるよ。あいつは『オイスターキャッチャー』だ」

「牡蠣を食べるんですね。色もオイスターソースみたいです」

「空を見上げてごらん」

「わぁー、とても大きな鳥ですねーっ」

「あいつは『ロイヤルアルバロス』と言って翼を広げると3メートルは越す世界最大の鳥だ。海岸にいくといっぱいいるよ」


 海岸へ向かいました。

「ロイヤルアルバロスさんの群れがいっぱいます。壮観です」

「ここはペンギンもたくさんいるよ。あいつは『リトル・ブルー・ペンギン』だ。オレたちの言葉では『コロラ』だよ」

「ちっちゃくてかわいいーっ」

「こいつは世界最小のペンギンだからな」


資料館もありました。

「ここにはかつてニュージーランドに棲息していて残念ながら今は絶滅してしまった動物達の剥製が展示されているよ」


「こいつは『モア』だ。我々のご先祖様が大量に狩猟してしまったため絶滅してしまっあんだ。そのためこいつのてんてきだった『パルパゴルニスワシ』まで餌がなくなってしまいこいつも同時に絶滅した。生きていくために狩猟も仕方なかったとは思うが生態系を破壊するまでやってはいけないな」


記念品として、マオリのアクセサリー『グリーンストーン』をいただきました。



これから今回の旅の締めくくり、船に乗って島の方へ向かいます。

南国のようなエメラルドグリーンの美しい海です。

港から船に乗り、たくさん島がありますが、まずその中の一つパラオ島へ向かいます。

船のエンジンはここの海に棲息するジュゴンなどに配慮して音がほとんどしないように特別に作られています。


水中翼船に乗り、30分ほどの短い船旅を満喫します。


「運が良ければジュゴンの姿を見ることが出来ますよ」

「私、ジュゴンって生で見たことが無いから楽しみだなぁ。本当に会えるのかな」


 しばらくするとジュゴンさんが現れてくれました。


「きゃぁ~ん、ジュゴンだぁ、生まれて初めて目にしたよ。ジュゴンさん、元気?」


ジュゴンさんは私の方をじっと見つめてくれました。嬉しいです。


ウミガメの群れが現れました。

「ウミガメさん、こんにちは」

「このウミガメはタイマイと呼ばれています。あちらのはヒメウミガメですね」


今度はクラゲの大群が現れました。クラゲさんは刺されると怖いですが見ていると心が和みます。


「ジンベイサメだーっ、」

「こちらが世界最大の魚です」

「クジラさんとかは哺乳類だもんね」

「この海ではシロナガスクジラもご覧になることが出来ますよ」


 全長30メートルを超えるシロナガスクジラさんが姿を現しました。 


「うわぁ~、間近で見ると迫力満点です」


 写真を撮ったのですが当然全体は写りませんでした。


船上に出るとイルカさんの群れがたくさん飛び跳ねているのを目撃しました。

浅瀬のさんご礁もとても美しかったです。


1時間ほどでパラオ島に到着しました。

「南国ムード満載だ。ヤシの木がたくさん」

「パラオ島へようこそ。冬になると雪化粧したヤシの木が見れるよ。本来熱帯の木だから栽培がとても大変なんだけどね」

「四季がある南国の島って変な感じがしますね」


ガイドさんに案内してもらい、郷土料理が食べられるレストランへ行きました。ここでお昼ご飯を食べます。

「Ungil chodechosong,こんにちは、日本のお客様。ご注文は?」

「おすすめの物をお願いします」


「当店自慢のマングローブガニとロブスターです」

「大きいカニさん、美味しそう」


食べていると、私の席の隣に、奇怪なお料理を運んできた女の子がいました。

なんとスープにコウモリさんが入っていたのです。

「あっ、じろじろ眺めてごめんなさい、あまりにも馴染みのない食べ物でして……」

「珍しいでしょう? これは『フルーツバットのスープ』といってここの郷土料理よ」

「はい、初めて見ました」

「あなたは日本人だね? お名前は?」

「私は朝霧雲雀です」

「わたしの名前はサユリよ」

マッシュルームカットの髪型に水色の大きな目、褐色の肌のとてもきれいな方です。

「サユリさんって日本人みたいな名前ですね」

「パラオでは日本式の名前をつけている人も多いのよ」

「へぇー、そういえば日本にもレナとかエミリとかレオとかっていう外国人風のお名前の方もいますね」


私もスープをいただいてみました。見た目が恐ろしいのですが美味しかったです


お土産屋さんに入ると屈強な女性が売り子をしていました。


「Ungil chodechosong,こんにちは、良いものいっぱいだよ」

「こんにちは、わぁ~、いろんな形の彫刻がありますね」

「これはパラオの工芸品『ストーリーボード』よ。発祥は日本なんだけどね。パラオの神話などが彫り込まれているんだよ」

「エイの形のを下さい。あっ、この首飾りもかわいい」

「こちらの『ウドウド』っていう首飾りは昔はお金として使われていたんだよ。女性だけが身につけることが出来るわよ」

「欲しいです」

「とてもお似合いよ、あなた」

「ありがとう、それにしてもおばさん、とても強そうですね」

「パラオとかその周辺の国々では母系社会が多いからね。そうだ、いいものを見せてあげるわよ。エイヤッ」


売り子のおばさんは、固いヤシの実を素手で軽々と剥いてしまいました。

「凄いです。おばさん」

「あなたもこれくらい強い女になるのよ」


 私にはとても無理です。


いよいよこの街とお別れです。最初に降り立った翡翠塚中央駅に戻り、帰りの列車に乗ります。とても寂しいです。


「それでは、発車いたします」

「あ~、ついにこの街とお別れだよーっ」


名残惜しいです。とても寂しい気分です。

今回の旅で巡った場所は全体の1パーセントにも満たない極々一部分だけでした。

この街はどんどん大きくなっているので一生かかっても全ての施設をまわることは出来ないような気がします。

とりあえず楽しい世界? 旅行は終了して日本に帰国? します。

「今回いろんな所回ったけど全部急ぎ足だったよ。でも世界中のいろんな国々の人々とたくさん出会えていろんなお話が出来て嬉しかったなぁ。これ、全て日本国内での出来事だったんだよね。信じられないよ」


 

この街には、国境がありません。紛争や飢餓といった世界の負の部分は存在しません。

どの方も日本文化をこよなく愛し、自然を愛するとても親切な人たちばかりでした。

地球の理想の姿がここにありました。


また何度でも何度でも遊びに行きたいです。

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