力学 その2
【遠心力は実在しない】
遠心力を利用した打撃、遠心力を利用した分銅の投擲、遠心力を利用した加速など――遠心力をこのように利用している人はいないでしょうか? ついでに遠心力が車にはたらいた結果として車が曲がっている人はいませんか?
一部を読んでくださった人はわかるでしょう。この後の流れ。作者ちょろいので評価されたら筆が進みます。有難うございます。
すごく長いので遠心力に興味ない人は読み飛ばしましょう。二本立てです。今回はもう一個あります。
ではいきますよ。
実はこれらはとっても酷い間違いなんです。
とはいえ、専門ではないですがテレビ局の人でも間違えますし、(申し訳ないが間違った物理学を全国ネットで広めるのはNG)物理学者の集会(確か飲み会)でも指摘した先生以外は気づいていなかったそうです。仕方ないね。(飲み会で
さて遠心力についての解説ですが。
遠心力とは、円運動をしている物体から見た、円の中心方向とは逆、つまり外側にはたらく力のことです。車でカーブを曲がるときとかに感じます。
では遠心力を解説するために円運動の話をしましょう。
試しにけん玉の紐を持って赤い玉を振り回してみます。無理ならお子さんか……あなたのベッドにある抱き枕をジャイアントスイングしてみてください。かわいい子とのお戯れですね。
さて回転が一定になったとき、球にはどんな力が加わっているでしょうか?
力は触っていないと伝わりません。球に触っているものは糸だけ。
他に球に触っている物はあるでしょうか?空気抵抗と重力は無視しましょう。あなたは糸には触っていますが球には触っていません。よって他には何もないですね。
すなわち球に力を与えているのは糸だけということになります。
ここで疑問が生じます。
糸が球に伝えている力の「向き」はどの向きか?
それを考えるために、糸を一本用意して、引っ張ってみてください。
ピンと張ったら、自分がどの向きに糸を引っ張っているか考えましょう。
近くに糸がないなら髪の毛、近くに髪の毛がないなら陰毛でも引っ張っておいてください。
あなたが糸か陰毛に力を加えている向きは糸と同じ向き、一直線上のはずです。
もしそうでなければ、糸をつまんでいるその手は移動するでしょう。
さて糸が張って静止しているとき、あなたは糸を引っ張っていますが、糸もあなたを引っ張っています。作用反作用の法則です。押したら押される。引っ張ったら引っ張られる。
このとき糸はピンと張っています。
さてここでけん玉に戻ると、糸はピンと張っていますね?
つまり、糸はけん玉球を系の方向に引っ張っています。糸の伸びる先はあなたの手。
すなわち、けん玉球は糸によって回転の中心、あなたの手に向かって引っ張られているのです。その円の中心を向く力により、けん玉球は円運動します。
詳しい話は文字だけでは無理です。頭が爆発します。
なので知りたい人は図付きのウェブページでも見てもらうということでそこは納得してもらって、円運動の解説終わりです。
……あれ?
ちょっと待って! 遠心力が入ってないやん! 遠心力の解説して欲しかったからこのエッセイ見たの! と思ったと思います。
そうです。遠心力は存在しないので出てきませんでした。円運動は今のように、「回転の中心に向かってはたらく力」によって成立するのですから。
……このままでは遠心力の解説にならないので遠心力を作り出しましょう。(予定調和)
今度はあなたがコーヒーカップに乗り込みます。
回ります。
遠心力を感じます。
何故か?それはあなたの立場が変わったからです。けん玉を回したとき、あなたは回っているけん玉を外から見ていました。
今度は、あなたは回っているあなたを回っているあなたと同じ視点から見ています。
けん玉球はあなたから見て動いていましたが、今度はどうでしょう、あなたはあなたから見て動いているでしょうか?
動いていませんね?
もし動いているという人は恐らく幽体離脱しているので即刻体に帰りましょう。
さて、自分から見て自分は動かないという話です。「力学その1」で「物体は力を加えない限りずっと静止する」って言いましたよね? これって実はと言うほどではないですが逆も言えるんです。
つまり。
「静止している物体には力がはたらいていない」
この事も言えるんです。ですがこれは正しくなくて、
「静止している物体にはたらいている力をすべて合計すると0になる」
というのが正しいです。
ラノベの主人公がヒロイン二人に腕を引っ張られている図を想像しましょう。主人公は動いているでしょうか? 両方から引っ張られていますが静止していますね。これが「合計が0」だということです。
ここで、コーヒーカップに乗っているあなたは
あなたはあなたから見て静止している、すなわち同様の状況下にあるけん玉はけん玉から見て静止しているのでけん玉から見るとけん玉にかかる力の合計は0です。
ややこしいですがラノベの主人公と同じだということです。
けん玉の気分で考えると、先述の通り、糸に引っ張られる力と遠心力がはたらいています。
ですがけん玉はけん玉から見て静止しているので(しつこい)力の合計は0。
つまりけん玉球にはたらいている2つの力、「糸の力」と「遠心力」は逆向きで同じ大きさのはずです。
ですが遠心力は先述の通り実際には存在しません。
つまり遠心力とは、「回転している物体の視点に立ったときの辻褄合わせのための見かけ上の力」のだということです。
したがってそれを利用して打撃の威力を上げたり、物を投げたり、加速することや、それによって車をコーナリングさせることは不可能です。別の言葉を使うか、コーナリングした結果として遠心力を発生させましょう。
【帰ってくるブーメラン】
―作者の脳内小説より―
『ブーメランは一直線にグレイウルフに向かい直撃。その胴からドスッという低い打撲音を響かせ、グレイウルフは衝撃で動けなくなった。ブーメランは主人を求めるかのように一直線に戻ってきた。
「この武器すごいな……戻ってくる投擲武器なんて――』
ありえない!!
ナンセンスにも程があります!!
この文章にはナンセンスな部分が3つもあります。
一つ、標的に当たった後帰ってくる(打撃系の)ブーメランは存在しません。
一つ、当たっていなくてもブーメランは標的まで直線的に運動して、直線的に帰ってくることをセットにはできません。
最後の一つ、作者の文章力――
ブーメランが帰ってくる原理を説明しましょう。
ブーメランは回転させて投げるのはご存知の通りですが、まず帰ってくるブーメランの投げ方。
ブーメランは縦にして投げなければいけません。地面と垂直、重力と並行の向きです。理由はブーメランが翼だから。ブーメランは回転方向と垂直に揚力を発生させ、それを円運動に必要な向心力として円運動をします。それがなければブーメランは帰ってきません。
さて。ブーメランが帰ってくるためには円運動することが必要なのですが、まず激突した衝撃によりダメージを与えるブーメランは、ダメージに運動エネルギーが使われるので、当たった場所で落ちます。
次に道行く作品のように標的に向かって直進するブーメランは円運動をしないので帰ってきません。帰ってきたとして、とても半径の大きい円を描いて帰ってくる事になるでしょう。おそらく半径25メートル以上のでっかい円です。時間がかかりすぎて戦闘では使えないと思います。一撃だけで済む状況下、すなわち狩猟では有用ですが……
なので真っ直ぐ飛ぶブーメランは硬いフリスビーみたいなもので、ただの持ちやすい投擲武器です。
しかし、切断系のブーメランなら運動エネルギーの消耗が最低限なので手元に帰ってくることは一応出来ます。神懸かりレベルの計算能力は必要ですが、それなら話は変わる――
と言いたいところですが、自分なら刃物が自分に向かって飛んでくるような武器は危ないので絶対に使いません。それなら数を多く持てる手裏剣や、槍投げの方がよっぽど有用だと思います。
ここまで散々ブーメランをdisりましたが、実際ブーメランはロマン武器です。
物理法則など知った事か系や、魔法で戻ってくる系ならとても強い武器だと思います。何しろロボアニメでは止めの武器だったりしますので。
結局は、リアリティを売りにした小説でブーメランを使うのは難しいという話ですね。
力学編は第3部まで続きます。今回は難しい話だったと思います。最後まで読んでくださった方有難うございました。
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