正真正銘の読書好き、そして佳作入選など取られただけあって、さすがの文章力の高さにはため息が出ました。意外にもユーモラスに描かれる筆致は、それでいて丁寧かつ綺麗なんです。
私の基準では、普段聞かないような難しい文章が書ける、種類豊富に熟語を知っているというのには、語彙力や文章力が高いという判断をしません。いかに気持ちよく読める文章が書けるか、いかに多くの言い回しを知っていて、それを適切に使いこなせているかに魅力を感じます。その点、この作者様はとてもお上手(たまにふと昔の文豪っぽくなります)。文章の書き方を教えてくれる、そんな作品だとさえ思えたほどです。
さて内容ですが、「へえー・・・。」と思わず笑みがこぼれる作者様の個性的な生い立ちが明かされていたり、きっと正しい日本語も身に付くだろう、面白そうな児童書の紹介も幾つかされてありました。もちろん愛犬ミミちゃんとのエピソードも随所にあって、自然と語られる愛情に胸が温かく、そして切なくなりました。
個人的に共感が絶えなくて、特に三十代以上の方にお勧めだと思いましたが、ものの見方や考え方、感じ方の勉強にもなる、国語力が高まるような内容なので、ぜひ若い方にも読んで欲しい。