自然の摂理               096

96 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり

 はなさそ あらしのにの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり 


【カテゴリ】人生、時代

【タグ】男性 貴族 鎌倉 新勅撰集 花


【超訳】満開のままではいられない。

満開の桜も花嵐で雪のように花びらが散っていく。しかし、本当に散りゆくのは歳をとって衰えていくわが身なんだよ。いくら権力があっても、咲いたままではいられないもんだな。


【詠み人】入道前太政大臣にゅうどうさきのだじょうだいじん

藤原(西園寺)公経。藤原定家(97)の義弟。


【決まり字】はなさ(3)


【雑感】小野小町(9)の「はなのいろは~」を題材とした歌です。本歌取りという手法で元の歌を派生させたオマージュ作品といったところでしょうか。どちらも散っていく花に自分の歳の衰えを重ねて嘆いています。

 花嵐が吹いて、雪のように花びらが散り、庭には薄紅色の雪花が積もりました。とても美しい光景だけれど、散っているのは桜ではなくて、自分なんだなぁとわが身に喩えました。

 この方、権勢をほしいままにし、まさに満開の桜のような栄華を極めたそうです。だからこそ、やはり自分も満開のままではいられない、散っていくのが自然の摂理なのだとしみじみ思われたのかもしれません。満開(栄耀栄華)を知っているだけに春の終わりは寂しいもの。花の命も人生も限りがあるから儚く美しい。日本らしい「あはれ(しみじみと感慨深い)」な感覚ですね。

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