山笑う                 073

73 高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ

 たかさごの のさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらな


【カテゴリ】春

【タグ】男性 貴族 平安後期 後拾遺集 花


【超訳】そこのところ、ヨロシク。

遠くの山桜が咲いたみたいだから、かすみはどうか立たないで。あの桜が見えなくなっちゃうし。よろしくね。


【詠み人】権中納言匡房ごんのちゅうなごんまさふさ

大江千里おおえのちさと(23)の子孫。赤染衛門(59)のひ孫。


【決まり字】たか(2)


【雑感】百首ある中で意外と少ない春の歌四首のうちの最後の歌です。最近になって知ったのですが、春になり、大気中の水分が増え、万物がぼんやりとかすむ現象を昼は「かすみ」、夜は「おぼろ」と呼ぶそうです。どちらも綺麗な日本語ですよね。

 でもその霞も朧も立たないでほしい。遠くの桜が見えなくなるから。美しいですよね。「山笑う」という言葉があります。俳句で春の季語となっています。木々が芽吹き、花が咲き、色づく様子を人に例えて「山笑う」と表しました。

 冬の葉の落ちた寒々とした山が春色の淡い色を纏って「笑う」。中国の漢詩に由来するそうです。ちなみに夏は「山したたる」、秋は「山粧ふよそおう」、冬は「山眠る」。

 中国語も日本語も美しい。こんな感性、現代の私達にはあるのかしら?

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