美しく、儚く、そして寂しく       070

70 寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ

 さびしさに やどをたちいでて ながむれば いこもおなじ あきのゆぐれ


【カテゴリ】秋

【タグ】男性 僧侶 平安後期 後拾遺集


【超訳】どこも同じだよね。

あんまりにもね、寂しいから外はそんなこともないかと思って家を出たんだけれどね、秋の夕暮れの寂しさはどこも同じなんだね。


【詠み人】良暹法師りょうぜんほうし

詳しい経歴は不明。延暦寺の僧。


【決まり字】さ(1)


【雑感】比叡山延暦寺の修業を終え、京都洛北の大原に隠棲して詠んだ歌だそうです。今なら大原といえば三千院があり、観光客でにぎわっていますが、この頃は隠棲の地だったようです。

 69番の「あらしふく~」などの美しい秋の歌とは対照的な寂しい秋の歌。確かに物悲しくもありますよね。どうしてだろう? 具体的に何かあるわけでもないのに。やっぱり葉が落ち、散りゆくところに儚い命を重ねてしまうからでしょうか。

 清少納言(62)は「枕草子」で「春はあけぼの」、「秋は夕暮れ」と綴りました。もっとも情緒があるのは夕暮れだと感じたのです。その秋の夕暮れにもの寂しさを含ませたのはこの歌がきっかけだそうです。

 紅く染まる夕暮れに紅葉して散りゆく落葉樹。美しくもあり、儚くもあり、寂しくもある。日本の秋は奥深いです。

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