心に残るのは              068

68 心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな

 こころにも あらでうきよに ながらば こしかるべき よのつきかな


【カテゴリ】人生、時代

【タグ】男性 天皇 平安中期 後拾遺集


【超訳】月だけだよ。美しかったのなんて。

もうこの世に思い残すことなんてないのだが、もしまだ生きているのなら、今日の美しい月を思い出すのだろうな。


【詠み人】三条院

第67代天皇。しかし藤原道長に退位を迫られ、在位5年で道長の孫にあたる後一条天皇に譲位。翌年出家し、同年崩御された。


【決まり字】こころに(4)


【雑感】63番「いまはただ~」(どっちが幸せなのよ?)でご紹介した若い恋人たちを引き裂いた方です。彼女のお父様。

 時の権力者、藤原道長に退位を迫られ、在位5年で道長の孫に譲位。翌年出家して同年に崩御されたそうです。不遇な人生だったけれど、月だけは美しい。そうやって月だけを眺めていたのかもしれません。この世に思い残すことなんてもうないけれど、月だけは美しいものだなぁと詠まれた歌です。天皇とはいえ、外戚の貴族の力が強大になってきて思うようにはならないことばかりだったのかもしれません。

 くどいようですが、娘である内親王さまも想う恋人との仲を引き裂かれて、せつない想いで見上げていたかもしれませんよ? お月様。

 かえすがえすも、どうして引き裂いちゃったの? お月様に伺ったら事情をご存知かしら?  

 

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