4 平安後期( 1069 ~ 1191 )

ナンパのかわし方            067

67 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ

 はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かなくたたむ なこそおしけれ


【カテゴリ】人生、時代

【タグ】女性 貴族 平安後期 千載集


【超訳】はぁぁぁ? 

何言っちゃってんの? ここで少しでもその腕枕にひっかかちゃったら、つまんないウワサになっちゃうじゃん。アタシの評判が落ちんのよ? わかってる? 


【詠み人】周防内侍すおうのないし

平仲子たいらのちゅうし。四代の天皇に仕える。


【決まり字】はるの(3)


【雑感】あるお屋敷で女房達が夜通し語り合っていたとき(女子会?)、「枕があればいいのに」と彼女がつぶやいたそうです。それを聞いた大納言藤原忠家だいなごんふじわらのただいえが「これでもどうぞ」と自分の腕を御簾みす(今でいうすだれ 視界を遮るためのもの)の下から差し出しました。立ち聞きしていたの?

 これに対して「ここで腕枕をしてもらって、つまらない噂にでもなったら嫌だわ」と上手にかわしたのが、この歌です。

 この時代、男の人と女の人は直接顔を合わせることはあまりありません。女性同士が夜中までおしゃべりして盛り上がっているのを忠家サンは立ち聞きでもしていたのかしら? この内侍さまのことを好きだったのかしら? それともほんの好奇心? それにしても、今でいうすだれのような御簾の下から腕を差し出すという光景がどうも想像ができません。御簾をくぐって部屋に乗り込むというわけでもなさそうですし、腕だけを? 御簾の下から? これを枕にって? 

 それって優雅な光景なのかしら? なんだか廊下に寝っ転がって腕だけ御簾の中に差し込んでいる姿しか思い浮かばないのですけれど。今でいう「壁ドン」のような胸キュンシーンが想像できません。

 従来の分類は「恋」ではなく「雑」だそうです。公の場で詠まれた疑似恋愛ゲームと捉えられたそうです。

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