山桜に願うこと             066

66 もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

 もろともに あれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし


【カテゴリ】人生、時代

【タグ】男性 僧侶 平安後期 金葉集


【超訳】せめてお前だけでも……

こんなところでお前(山桜)に会えるとは思っていなかったよ。懐かしいな。お前も俺のことを懐かしいと思ってくれないか? 俺のことを知る奴なんてここには誰もいないから。


【詠み人】大僧正行尊だいそうじょうぎょうそん

三条天皇(68)のひ孫。12歳で出家し、崇徳天皇(77)などの護持僧ごじそうを務めた。


【決まり字】もろ(2)


【雑感】一見山桜とあるので、春の歌かなと思ったのですが、人生の歌のようです。早くに父を亡くし、出家したこの方は諸国の霊場を巡って修行されたそうです。下界との関わりを断ち、己と向き合い続ける修行はさぞつらいものだったことでしょう。そんなときにふと見かけた山桜に呼びかけた歌だそうです。

 誰も私を知る人もいないから、せめてお前だけでも懐かしく思ってくれないか。

山桜はなんと答えるのでしょう。「私もお前を見守っている。いつまでもここで咲いている」と返してくれたでしょうか。

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