古都の競演 061
61 いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひけるかな
いにし
【カテゴリ】春
【タグ】女性 貴族 平安中期 後拾遺集
【超訳】花も時代も華やかじゃない?
昔栄えた奈良の都の八重桜が、今日は京の宮中でとっても綺麗に咲き誇っているわ。今上の御代が栄えているから、きっと華やかに見えるんだわ。そう思わない?
【詠み人】
一条天皇の中宮彰子に仕える。和泉式部(56)、紫式部(57)、赤染衛門(59)らとともに「梨壺の五歌仙」と称えられた。
【決まり字】いに(2)
【雑感】美しい春の歌です。こんな競い合いなら美しくていいですよね。奈良から贈られた八重桜を受け取る伊勢大輔が即興で詠んだ歌だそうです。伊勢大輔は一条天皇の中宮彰子に仕えはじめたばかりの新人だったのですが、同じく中宮さまに仕えている先輩の紫式部(57)が役を譲ったのですって。
「いにしへ」と「けふ」、「八重」と「九重(宮中のこと)」を対比させ、花が美しく咲き誇る様子と一条天皇の御代の繁栄を讃えているのだそう。春爛漫のステキな歌ですね。
花といえば桜ですが、どうしてもソメイヨシノに注目が集まってしまいます。八重桜は少し遅れて咲くのかな。種類もたくさんあります。白っぽい花もあれば、濃いピンクや薄い黄色のものまで。そしてその名前のように花びらが何重にも重なっているので(八重)、
それから八重桜といえば、大阪造幣局の「桜の通りぬけ」が有名ですよね。訪れたことがないので、一度は「通りぬけ」てみたいです。
祖父が大切に育てていた八重桜の木がありました。今はもう祖父もいなく、あの庭も取り壊されたけれど、あの濃いピンク色の可愛らしい花はいつまでも私の心に咲いています。祖父の優しくそして少しだけ自慢げな微笑みとともに。
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